チェック柄のシートが、紛うことなくGTIの一員であることを主張する。コンパクトなボディが身上の『ポロ GTI』のマニュアル車。2ペダルのDSG車が十分にスポーティだから、まあ操作部分が文字どおり“手足”に置き換わっただけのクルマだろう…そんな予測をたてて試乗した。ところが実際には“キャラ”の違いの大きさに驚かされた。MT車はDSG車とはまったく別モノの、想像以上にダイナミックな走りっぷりだったからである。もちろん違いの要因のひとつはミッション。DSGが7速なのに対しMT車は6速。ギヤ比も当然ながら異なり、勢い、より積極的にエンジン回転を使って走らせることになる。が、それだけではなく、MT車の最大トルクは320Nm(DSG車は250Nm)と格段に増強されているため、出足の力強さもDSG車とは別次元といっていいほどだ。言葉で書くと“力ずくで一気呵成に加速する”印象だ。シフトフィールは『ゴルフ』系のMTに較べ、僅かにメカ的な硬質感がある。クラッチはごくスムースな断続操作が行なえる。足回り、締め上げられた乗り味は、トルク増大分に対処した上で、車重が共通のDSG車と同等の設定になっているように感じた。■5つ星評価パッケージング:★★★★★インテリア/居住性:★★★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★★オススメ度:★★★★★島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。