【スマート フォーツー/フォーフォー 試乗】MINIのお株をうばう「ゴーカート感覚」…桂伸一

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インドアカートコースが走行可能なクルマって、どれだけ取り回し性に優れているのでしょ!? である。BMWミニから「ゴーカート」と言うフレーズを奪う、これぞ正真正銘のゴーカート感覚!! 新生『スマート』の話だ。

◆小さなクルマ、しかし以前のような圧迫感はない

スマートのようなマイクロコンパクトカーにとって、小さいが故の利便性は当然求められる要素だが、小さいが故に最も重要な事は、衝突に対する安全性だ。

スマートがメルセデス『Sクラス』とオフセット衝突している画像を見ると、ボディというか構造の基礎、骨太なトリディオンセルのキャビンは乗員の空間をしっかり保っている。こういうシーンを目撃すると、マイクロコンパクトカー選びは自ずと見えて来る。

ドアを開け、足を上げながら乗り込むと、その空間の広さは旧型とは別物。横に広く、もはや男ふたりで肩触れ合いながら移動するシーンはなくなる。さらに上部、頭部のすぼまり感があった旧型に対して新型は、Aピラーが真っ直ぐ上に伸びて圧迫感がなく頭回りがスッキリ広い。前方視界の広がりはアップライトで見下ろす姿勢。床下が二重構造時代のメルセデス『Aクラス』や『Bクラス』 の印象に似ている。

ところが乗員から後ろ、後方を振り返ると、すぐそこ、手の届きそうな位置にあるリアウィンドウの近さが、3mにも満たない超短い全長である事を再認識する。本当に小さなクルマなのである、と。

◆走行性能が向上、取り回しも良い

変化したのは空間の広がりだけではない。おそらく世界中から“ボロカス”に言われて来たであろう、加速~減速~シフト変速のたびに、ギクシャク、シーソーのように前後に大きく揺れたシフトチェンジが劇的改善!!

下手なドライバーがクラッチ操作をするマニュアルミッション車に乗せられた感から、ハイヤーのドライバーのようにスムーズ丁寧な、クラッチ操作がジャストミートの変速を実現。特にアップシフトは制御に気を使ったようで、シームレスな変速を実現。

シングルクラッチからデュアルクラッチ式へと現在のATの主流に変わった効果である。アクセルを“踏み込んだまま”でも変速作業はスムーズに終える。

動力性能はリアに搭載された999cc自然吸気エンジンが放つ71ps/9.3kgmを6速デュアルクラッチが減速して路面に伝える。E=エコとS=スポーツの走行モードが選べ、Eは燃費走法で、スタートするとどんどんアップシフトして行く。もちろんそれで通常の流れにのって走行して行ける。

例えば、高速道路の左側の走行車線を淡々と進む方はこのモードでOK。中央車線から右の追い越し車線に躍り出て遅いクルマを抜き、また戻る、ムキにはSモードか、Sモードでシフトレバーをマニュアル操作して、必要なギヤポジション選びをお薦めする。

新生スマートはごく普通の乗用車になった。変っているのは乗員から後ろが極端に短い事。その意味では前方のオーバーハングも短く、しかもワイドボディの恩恵から前輪の舵角が大きいため、わずか3.3mで転回可能に。

実際、狭い路地などでの取り回しの良さは、目を見開く利便性!! 切り返す必要なく、その場でUターンしてどこへでも行けるのだ。

◆気になる存在となったスマート

個人的にマイクロコンパクトカーにはまったく、と言って興味がなかったのだが、新生スマートは俄然、気になる存在になった。

スマートは期間限定商品として年に数回、仕様違いを用意する予定。興味津々ではあるが、やはり動力性能に拘る派からすると、同じエンジンユニットであれば、ステアリングにパドルが欲しい。で、もっと言えば、ターボを待つほうが拘り派にはいいだろう。

高速走行、路面の目地の通過でもいまやヒョコヒョコしたピッチングも乗り心地も改善されて、まさに小さなメルセデスベンツとして立派に成長したスマート『フォーツー』が上陸したのであります。

4ドアのスマート『フォーフォー』も、走りの基本は同様で、RRリアエンジン・リアドライブによるフロントの軽さから、ゴーカート感覚を持ち、それでいて後席に住人を迎え入れる事ができる。世界で言うダウンサイジングとは、まさにこの事ではなかろうか…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマーティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年の今年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。

《桂伸一》

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