【日産 リーフ 新型】「公道で無敵」の加速力!? アリアにも負けない上質な走りを実現した「純国産の力」

日産 リーフ 新型
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3代目となる新型日産『リーフ』が8日に発表された。先行試乗会をかねた製品発表会を取材した。大きい改善ポイントと実車の仕上りについてまとめたい。

【詳細画像】日産 リーフ 新型

◆アリアと同じPFだが全長が先代リーフよりコンパクトに

日産 リーフ 新型日産 リーフ 新型

新型リーフは、プラットフォームが「CMF-EV」に変更され、ボディサイズやEVとしての基本性能が大きく向上した。初代と2代目リーフはICE(内燃機関)車のプラットフォームを流用していたためフロアの形状、パワートレイン・アクスルのメンバー構造などがEV最適とはいえなかった。CMF-EVはEV専用に設計された『アリア』と同じものだが、ホイールベースは2690mm(アリアは2775mm)と少し短くなっている。

全長は4360mmと2代目リーフ(日本仕様)より120mmも短くなっている。プラットフォームが同じ場合、通常ホイールベースまで変更しないが、CMF-EVは2パターンが用意されている。じつは、リーフのプラットフォームはルノー『メガーヌ E-Tech』のものと同じだ。

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全長でいえば、リアオーバーハングは少し伸びているが、フロントオーバーハングが短くなり全体としてコンパクトになっている。腰高のSUVデザインだが全高は1550mmと日本の立体駐車場サイズに収められた(プロパイロット2.0装着の場合、アンテナフィンが大きくなるので15mmほど高くなる)。これは2代目リーフと変わっていない。

全長を短くできたのは、充電ポートがフロントからアリアと同じ左右(右:AC、左:DC)に移動されたことと、新開発の3in1のeアクスルとマルチバルブによる熱交換型空調システムの一体統合化の効果が大きい。統合型のHVAC(空調)システムは、エアコン、バッテリー、モーター、ECU他、その他車両全体の熱源を統合的に管理することで、エアコン利用による電費の悪化を抑え、充電効率を最適化できる。

◆待望のプレコンディショニング機能を搭載

バッテリーのプレコンディショニング機能も搭載バッテリーのプレコンディショニング機能も搭載

初代リーフはバッテリーの温度管理がなされておらず、急速充電の熱ダレ、冷間時のバッテリー性能の低下が問題になった。2代目リーフで若干改善され、アリアや『サクラ』ではバッテリークーラーなどが搭載されたが、3代目リーフでは、さらに充放電の温度制御が改善された他、バッテリーのプレコンディショニング機能も追加された。

プレコンディショニング機能は、ナビとも連動し、走行距離、ルートの勾配による発熱量を考慮したバッテリー状態の制御を可能としている。これにより、充電前後にバッテリーの温度を効率のよい最適な温度にすることができる。

78kWhのバッテリーを搭載したB7モデルの航続距離は702km(WLTC)に達する。急速充電は150kW充電器にも対応しており、SOC 10%から80%まで35分(バッテリー温度25度)という。バッテリーの性能としては2C(0%から100%満充電まで1時間が1C)に近い。

◆遮光・遮熱パノラマルーフに広々車室空間

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EVにつきものな装備にパノラマルーフがある。新型リーフにもパノラマルーフが装着された。液晶シャッターによる遮光タイプのガラスルーフのため、シェードを省略している。シェードなしで日本夏を越せるのか、と気になるが、日産の実験・テストでは一般的なシェードと同等な遮熱効果があるそうだ。UVタイプのハッチバックでCd値0.26を実現しながら後席のヘッドクリアランスが十分に確保された。試乗した範囲では、身長180cmある記者が座っても頭が使えることはなかった。なお、膝前スペースも確保されていた。

試乗当日は曇りで薄日が差す程度だったので、特殊な赤外線反射コーティングと遮光シャッター効果のほどは体感できなかった。なお、遮光シャッターは液晶パネルなので、「LEAF」という文字を影で車内に投影できるギミックがある。

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熱交換システムの統合化とコンパクトeアクスルによって運転席のインパネ下のスペースも大きくなった。とくに助手席との間にでっぱりがちなエアコンユニットが完全にフロントフードに移設できたので、フロントベンチシートのように、運転席、助手席移動が、いちおうできるようになっている。他のEVではこのスペースに2段式の物入やスマートフォンの充電器などを配置することが多いが、新型リーフはフラットである。

◆V2Lアダプターと車内アウトレットで3kWの電力

特筆したいのは、車内ACコンセント(1500W)が装備されたことと、標準でV2Lのアダプター(1500W)が搭載されたことだ。うれしいことに、1500Wの容量は車内、V2Lと別系統なので、最大3kWの電力を賄える。会場では、テストコースのゲストラウンジに設置されていた冷蔵庫(ドリンククーラー)をデモカーで動かしていた。

コネクターはJ1772タイプで、通信規格などもSEAに準拠している。ヒョンデやBYDの車両にも使えるかはメーカーとして確認していないとのことだが、発売されたらV2L対応している(OBCが双方向になっている)他社EVで使えるかどうかぜひ試してみたい。なお、V2Lに対応していないリーフ、サクラには使えない。

◆NissanConnectとGoogleがシームレスに使える

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NissanConnectも改善された。ナビがGoogle Map/Google Assistantと統合され、目的地検索が音声認識で可能だ。もちろん、最近の車載ナビはほぼボイスコマンド対応しているが、UIとしてははっきり言って使い物にならないものばかりだ。Google Mapは、常に道路が最新状態であり、目的地情報も店名などではなく、「どこそこの有名な中華料理店」のような指示でちゃんと候補をだしてくれる。Googleアカウントと連携させることもできるので、スマートフォンやPCで登録した地点、検索履歴などもリーフのナビと同期することになる。

NissanConnectアプリには、ドアtoドア ナビという機能があり、スマートフォンで検索、設定したルートを車に送ることができる。この機能ももちろんGoogle Mapに統合される。ドアtoドアナビは車載ナビの機能なので、車内でスマートフォンを接続してAndroid Autoのマップを表示させてもルート情報などは同期されない。

進化したNissanConnect:Google統合によりナビが大幅に便利に進化したNissanConnect:Google統合によりナビが大幅に便利に

アプリから充電上限の設定が変更できる機能も追加された。通常80%の急速充電の上限を100%にしたり、ゲスト料金を最適化するため60%までにする、70%までにする、といった設定がアプリからできるということだ。

IVIがGoogleと統合されたことで、動画、音楽、その他利用できるアプリも広がる。Android Aoutでは運転中にも使うことを考慮して、アプリや機能が制限されるが、充電中に映画や動画を見たりすることができる。

◆アリアに負けない上質な走りを実現

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パワートレインやボディ、走行性能に関しては、新開発の3in1だけが改善点ではない。アクスルの容積はマイナス10%。モータートルクは340Nmから355Nmと4%アップ(B7)。出力は160kW。6分割のスキューローター(コイルを巻く溝が斜めにずれている)の採用により無駄な振動や騒音を抑え、なめらかな加速を実現する。

ボディ補強により車体ねじり剛性は86%と大幅にアップした。リアはマルチリンク。電動パワーステアリングはラックアシスト式になった。空力、騒音、なめらかな加速にこだわり、車体底部をフロントからリアエンドまでパネルで覆いフラットにしている。通常、ジャッキアップポイントを作るフロア下部とボディ側面・サイドシルをつなぐ「リブ」の部分もカバーで覆うため、ジャッキアップポイントには脱着式のカバーが取り付けられる。さらにマルチリンクサスの部分にもカバーを取り付ける念の入りようだ。

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なめらかさ、静粛性、中間加速は、試乗したテストコースで十分に感じられた。プラットフォームがアリアと共通であり、乗り心地はマイルド方向にチューンされ車格が上がったと感じる。サスペンションは各国ごとにチューンされ、日本仕様は、街中、首都高の継ぎ目などの特性にあわせた専用セッティングだという。サスはやわらかめで段差や小さいギャップはソフトにこなしてくれる。

テストコースいスラロームの設定がなかったが、コーナーやレーンチェンジを少し強めに行うと、若干ロールが大きく感じる。だが、マルチリンクがよく粘ってくれて揺り戻しはほとんどなく、リアがあばれることもない。少しオーバースピード気味でつっこんだS字の2つ目コーナーでもリアの粘りが強く感じられ、しっかりラインをキープしてくれた。

◆新型モーターと回生ブレーキを使いこなして快適ドライビング

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発進加速は初代リーフより若干マイルドになった印象だ。むしろ軽いサクラのSPORTモードのほうが出足は速く感じる。しかし、中間加速は公道で無敵といっていい(笑)。アクセルに少し力を入れるだけで加速Gを感じることができる。意識して踏み込めば一気に80km/h前後まで達する。高速道路の合流ランプでは、回生ブレーキのおかげで、アクセル操作またはパドル操作による速度調整で自在に好きなタイミングで合流できる感覚だ。

回生ブレーキ、回生ブレーキ調整パドル、e-Pedalはアリアと同じだ。回生ブレーキとコースティングを細かく制御したければパドルがついたGグレードがいいだろう。リーフやサクラに乗り慣れた記者は、DモードBモードがあるXグレードのほうが運転しやすかった。Bモード+e-Pedalオンの状態は、アクセルオフがMTのエンジンブレーキのような減速をしてくれて安心感がある。アクセルペダルだけの速度コントロールは、ブレーキの踏みかえ操作を減らせ(なんなら左足ブレーキを使える)、疲れない。

初代リーフは回生協調ブレーキがこなれていなくて、ちょっと強めのブレーキ操作では、ペダルが抜けるような状態があった。2代目で改善はされたものの、やはり強めに踏むときは「抜け」に備える必要があった。試乗コースにブレーキテストのメニューはなかったが、これも直線部分で強めのブレーキやABSの動作を試してみた。80km/hまでのブレーキングにとくに違和感はなかった。踏んだなりの減速をしてくれた。100km/hからABS作動・完全停止を意識したブレーキングでかるくABSが作動したくらいだった。試乗した範囲では回生協調ブレーキの問題はでなかった。

◆しばらくは各社手探りのドライブセレクター問題

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意見が分かれるのは、ドライブセレクターだろう。P・R・N・Dのボタンが横一列にならんでいる。EVの場合、走行中に操作するのは、むしろe-PedalボタンやECOやSPORT、SNOWといった走行モード切替だ。これらのセレクターがボタンであることのデメリットはほぼないが、Rがボタン式だと、車庫入れ、切り返しで慣れが必要だ。ブラインドタッチができるようにDとRには凹凸がある。ポイントはセンターコンソールの蓋に肘を乗せて腕を固定するとよい(らしい)。

試乗ではこの使い勝手を十分に試したとはいえないので、判断は保留となる。

撮影用に展示されていた「AUTEC(オーテック)」バージョンを簡単に紹介する。内装がブラック基調となり車内の雰囲気がかなり変わる。AUTECバージョンの主な装備は、フロントグリル両サイドにドットパターンの部分があり、エンジン車風の装飾、その下に配置されるブルーのシグネチャーランプ、19インチ専用ホイール、金属粉を使った特殊塗装(メッキではない)の加飾がされたエアロパーツなどだ。AUTECバージョンが用意されるなら、当然NISMOバージョンも期待したい。

日産 リーフ AUTECH 新型日産 リーフ AUTECH 新型

◆中国や親会社に頼らず開発したグローバルEV

3代目の進化は、2代目リーフまでの課題やユーザーの要望について、ほとんどの回答をだしてきたといえるだろう。航続距離、充電性能、Google連携、V2Lアダプタ、統合熱交換システム、バッテリーのプレコンディショニング、遮熱ガラスルーフなどEV基本性能の進化がめざましい。

だが、厳しい評価をするなら、これらの装備はテスラは『モデル3』のころから、最近の中国EVではほぼデフォルトの機能・仕様でもある。日産も中国では東風汽車の『N7』をヒットさせている。マツダは『EZ-6』が人気だ。トヨタもスバル、スズキ、BYD、広州汽車らと協業EVを展開している。スズキの『eビターラ』はBYDバッテリーを使いインド製造だ。

自前主義は現在の企業経営においてかならずしも正義にはならないので、このようなアウトソース、協業やノックダウン等による車両開発・製造を否定するものではない。むしろ、今後の主流にさえなるスキームだ。

しかし、、国内の特殊市場において、日本のやり方、純日産のEVであるリーフを進化させた意味は小さくない。ようやくグローバル市場で勝負できるEVを、先行企業や親会社を頼ることなく実現させたことは評価すべきだろう。

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《中尾真二》

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