キレキレの6MTに対し、かなりマイルドな印象になるCVTである。「β」というのも理由のひとつ。「α」はステアリングが本革なのに対し、βはウレタンタイプなので、握り心地がわずかに太めでソフト。握ったとたんに、気合がほんのちょっとゆるむ感じがする。
CVTのスムーズさ、さらにはパドルシフトでのシフトチェンジへの反応のよさは快適。シフトダウンしたときの、エンジン音のうなり具合も心地よく、さらには、アクセルをわずかにオフしたときの、「ヒューン」というターボの息づかいもうっとりする。なによりこのコンパクトさ。着座位置の低さ。これだけで、クルマという概念から抜け出した、『S660』という乗り物なのである。
CVTになると、気分的に張り詰めていたものが少しゆるんでふつうに扱えるため、荷物スペースが欲しくなるところだが、それを求めるのは、美味しいそばやに行って牛丼がないと訴えるようなもの。
私も一応、リアを開け、フロントを開け、少しは入るところがないのかと探しましたけどね。きっちり内臓が組み込まれているのを見て、ああ、やっぱりという落胆が1%、さすがだと関心したのが99%。ちょっとでも牛丼を期待した自分を恥じるばかりである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。