【マツダ CX-3 & デミオ パッケージング考察】 ファミリーユースにも適した、秀逸さとメリット

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マツダ CX-3マツダ CX-3 XD Touring L Package
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『CX-3』は『CX-5』のダウンサイズモデルなのか?

答えはノーである。CX-3は『デミオ』のホイールベースを使うことを前提とし、都市型ライフスタイルにフィットさせたコンパクトクロスオーバーというキャラクターだ。

◆快適な乗降性のCX-3、室内高はデミオと同一

本格的な4WD性能を持つCX-5のダウンサイズ版でないのは、最低地上高がCX-5の210mmに対して、デミオの145mmに近い160mmであることからも明白だ。

3サイズは全長4275mm(4060mm)、全幅1765mm(1695mm)、全高1550mm(1500mm)。ホイールベースはデミオ同一の2570mmである(カッコ内はデミオの数値)。

ここで注目したいのは、全高である。CX-3はシャークフィンアンテナ込みで1550mm。これはもちろん、都市型ライフスタイルに対応する立体駐車場の入庫容易性に配慮したものだが、それを除いた実際の全高は1500mm+程度なのである(デミオは普通のルーフアンテナ)。

そう、最低地上高の15mmの差を考えると、CX-3とデミオのボディの高さ(厚み)はほとんど変わらないことを意味する。

ここで両車の室内寸法を見ると、CX-3が室内長1810mm、室内幅1435mm、室内高1210mm。デミオは同1805mm、1445mm、1210mmで、何と室内高はまったく同じ。

実際に乗り込んでみると、SUV風のルックスにして、乗降性は快適そのものだ。サイドシル高はCX-3が前/後で390/390mm。デミオは同370/380mmと大きく変わらない。

身長172cmのドライバーのドライビングポジション基準で前後席の空間はどうかと言えは、前席頭上はCX-3が175mm、デミオは170mm。後席頭上は同105mm、100mmと僅差。後席ひざ回りスペースは両車同一の100mmである。

◆着座位置と視界を「ちょうどいい」高さに、後席にもこだわり

ならば、デミオの室内空間をそのまま持ち上げ、魂動デザインのロングノーズを与えたのがCX-3…と思いがちだが、そんな単純な話では、もちろんない。

CX-3の開発陣がパッケージングとともにこだわった乗降性にかかわるヒップポイント地上高はCX-3が前/後で602/693mm。デミオは同556/566mmだ。着座したときのシートの沈み込みを考慮したヒップポイント地上高=着座位置の高さは、低すぎても、高すぎてもよくないのだが、CX-3の高さはまさにSUV風らしくちょっと高めでも「ちょうどいい」設定である。

運転視界に影響する視線の高さ=アイポイントにしても、CX-3は1250mm、デミオは1200mm。50mm違うと、視界は大きく異なる。CX-3はデミオより乗員をずっと高く爽快感ある位置に座らせていることが分かる。

パッケージングでそれ以上にCX-3とデミオが大きく違うのは、後席の座らせ方。後席ヒップポイントはデミオの場合、前席に対して10mm高いだけ。これを専門用語で言えば「エレベーションが小さい」と表現するのだが、CX-3の後席ヒップポイントはなんと前席より37mm高く、デミオ比では73mmも高い位置にセットされ、なおかつ着座位置を車体中央寄りに配置しているのが特徴となる。

その理由は、前席の大人と、後席の子供の目線の高さを合わせ、運転席の大人と後席左側席の子供、助手席の大人と後席右側の子供がX字のクロスコミュニケーションをしやすくするためとのこと。子育て世代にはなんともうれしいパッケージングである。

さらに、後席座面のフロアからの高さ(ヒール段差)は、沈み込んだ着座感になるデミオが実測330mmなのに対して、高めで爽快な着座感が得られるCX-3は355mmと高めだ。このヒール段差は、高いほど降車性に優れるメリットがある。

低いソファから立ち上がるより、高めのダイニングチェアからのほうが足腰の持ち上げ量が少なく、立ち上がりやすいのと同じ理屈である。CX-3は同時に後席座面外側端のたわみ量を大きくし、高めのヒップポイントながら、お尻を滑らせてスルリと降りられ、足が地面に届きやすい降車性を実現しているのだ。

◆荷物も積み込みやすい地上高

荷室に関しては、実は開口部地上高はCX-3が780mm(フロアとの段差65mm)、デミオが750mm(フロアとの段差250mm)と大きく変わらず、というかデミオはコンパクトハッチバック車として高すぎるというべきで(荷物の持ち上げ量が大きくなる。『アクア』640mm、『フィット』590mm)、意外にも開口部とフロアの段差の小さいCX-3のほうが使い勝手良く感じる人が多いと思う。

CX-3の荷室開口幅がデミオの800mmを圧倒する965mmもあるのは車幅の違いから当然だが、開口部高は逆転。デミオの860mmに対して、CX-3は645mm。クーペライクなルーフラインによって、ボディ後端が薄くなっていることが分かる。ただこれは、特別に大きな荷物を積み込まなければ、問題にはなりにくい。

後席を格納したときの荷室高もデミオが840mm、CX-3が645mmと差がついてしまうのだが(荷室幅は両車1000mmと同じ)、荷室容量はCX-3が350リットル(床下収納込み)と、デミオの280リットルを凌ぐ。これは荷室長でかせいでいるからで、CX-3はフレキシブルなカラクリボードを下段にセットした状態で760mm、デミオはコンパクトカークラスの中でも短めの650mmである(アクア/『ノート』670mm、フィット700mm)。ベビーカーなど長さのあるものを積み込みやすいのはCX-3だろう(斜めにしか入らなかったてしても)。

こうして両車のパッケージングを比較してみると、特にCX-3の後席居住性はクロスオーバーモデルならではの視界爽快な高めの着座位置だけではない、子育て世代にもうれしいホスピタリティが感じられるものだった。そして意外にも荷室はCX-3のほうが使いやすい事実も浮き彫りになってくる。

CX-3はマツダ自慢の魂動デザインやダイナミック性能もさることながら、「都市生活者のためのパッケージングにとことんこだわった」という開発陣の狙い、強い思いが見事に具現化されたライフスタイルクロスオーバーモデルということだ。

《青山尚暉》

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