【池原照雄の単眼複眼】「セダン愛。」に豹変したホンダの事情

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ホンダ アコード ハイブリッド
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  • ホンダの伊東孝紳社長
  • ホンダの峯川尚専務執行役員

08年以降、シビックなど相次いで撤退

ホンダが国内向けセダンの強化に乗り出した。第1弾はHV(ハイブリッド車)専用モデルに切り替え、このクラスでは世界トップの燃費性能を実現した新型『アコード』。来年には『レジェンド』の後継モデルと次期『フィット』をベースにした小型セダンの2機種がいずれもHVとして加わる。日本で人気の高いハイブリッド技術を導入することで「セダン回帰」(伊東孝紳社長)を進め、シェア拡大と国内生産の維持につなげていく。

新開発の2モーター式HV技術を導入したアコードの広告フレーズのひとつに「セダン愛。」というのがある。ここ5年ほどで国内向けセダン市場から次々に引き揚げたホンダが、臆面もなく豹変しているという感じだ。

最近のセダン(登録車)の販売中止は、2008年の『フィット アリア』(タイ工場からの輸入車)に始まり、10年に『シビック』(ガソリン車とHV)、さらに12年には『レジェンド』、アコードの北米バージョンだった『インスパイア』と続いた。

国内全体でも上位30位にセダンは4モデルのみ

その結果、意外と思われるかもしれないが、セダンは今回刷新されたアコードのみという状態になっている。一方でホンダのグローバル販売に眼を向けると、なおセダンはほぼ半数を占めている。最大の販売先である北米ではアコードとシビックが2枚看板であり、また中国やインドといった新興国市場でも比較的セダンの比率が高いからだ。

ホンダに限らず日本ではバブル崩壊後の90年代初頭から、ほぼ一貫してセダン比率の縮小が続いてきた。12年の登録車の車名別ランキングで上位30モデルに入ったセダンは、トヨタ自動車の『カローラ』(8位)と『クラウン』(26位)、富士重工業の『インプレッサ』(13位)と『レガシィ』(30位)と、わずか4モデルだった。しかもクラウン以外はワゴンやハッチバックも含んでこのランキングであり、12年は登録乗用車のうちセダンの比率は、ざっと1割にとどまった。

日本市場では90年代にミニバンの拡大と定着、00年以降はハッチバックのコンパクトカー(登録車)と軽自動車の台頭という、大きな需要構造の変動が起こり、セダンを衰退させた。そうしたなかでミニバン(ステップワゴンやフリード)とコンパクト(フィット)に強いホンダは、販売効率の点からも日本ではセダンの休止を選択していった。

新HV技術シリーズで復活を狙う

ここに来ての方針転換は、1モーター式から3モーター式まで3タイプを新開発したHVとしてのセダン展開が可能になったことが大きい。新型アコード以降のセダンは、ホンダの次世代4輪技術の総称である「EARTH DREAMS (アース・ドリームス)」のセダンシリーズとして展開していく。

また、「セダンのお客様の保有母体は決して小さくない」(日本営業担当の峯川尚専務執行役員)のも、セダン回帰の背景にある。年々販売が細っていたアコード(インスパイア含む)でも、現在の保有台数は約7万台あるという。

一方で、新シリーズの軽自動車によって国内販売での“失地回復”が進んでいるとはいえ、軽とコンパクト中心では、販売店の収益力アップには限界がある。セダンのテコ入れは、即ち登録車の強化であり、「セダン愛。」への豹変は必然のステップなのだ。

《池原照雄》

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