初の2モーター式でHV専用車に
ホンダの技術陣が総力を挙げて開発するハイブリッド(HV)システムの新シリーズが日本では6月に発売の新型『アコード』から順次、投入される。同社はこれまでの1モーター式1本から、モーターを1~3個と使い分けた3タイプを並行して開発している。販売実績や技術の熟成度で先行するトヨタ自動車のHVシステムをどこまで追いあげるか、ホンダの今後の環境対応技術や成長力が試される重要な局面となる。
日本での新型アコードはHVとPHVの2本立てで、ガソリン車は設定されない。HV、PHVともに2モーター式(社内呼称=i-MMD)で、基本機構は同じ。PHVはバッテリー容量をHVの5倍強に大きくしている。
2つのモーターを走行用と発電用に使い分けるのはトヨタのHVシステムと同じだが、「エンジンやモーターの使い方など基本的な考え方は全く異なる」(本田技術研究所の島田裕央主任研究員)。エンジンで発電する際は、その動力を走行には使わないシリーズ方式とするなど、トヨタの特許に抵触しない独自機構の開発に苦心の跡がうかがえる。
燃費はカムリHVを上回る?
北米市場でベストセラーを競うトヨタの『カムリ』とは、HVモデルでも競合することになる。両モデルのHVを比較すると、エンジン(いずれも直4のアトキンソンサイクル式)はカムリHVが2.5リットル、アコードHVが2.0リットルとカムリが大きいものの、走行用モーターの出力はアコードが若干大きい。
エンジンとモーターを統合したシステム出力は、カムリが151kW、アコードは146kWとほぼ同格。では、カムリHVで23.4km/リットル(JC08モード)となっている燃費はどうか。カムリのニッケル水素電池に対し、リチウムイオン電池を搭載して走行時はモーターの仕事の範囲を広げるアコードの方が、若干上まわりそうだ。
収益源の北米ビジネスを左右
ホンダの島田主任研究員は、具体的なモデルとの比較はしないものの「2モーターでは世界最高効率」と、燃費性能への自信を示す。もっとも、エンジン排気量やシステム出力はカムリがやや大きいので、それより劣ると、「何だ」ということになろう。あとは、ユーザー個々の好みとなるものの、走行性能や静粛性といった熟成度だが、これもトヨタ方式は手ごわい。
いずれにせよ第1弾となるアコードHVで、ホンダの新HVシステムの競争力が示されることになる。日本ではアコード、カムリともに存在感が薄れたクルマとなったが、北米ではともに最量販モデルであり、両社の業績を大きく左右する。アコードHVは北米では今秋に投入され、先行するカムリHVに挑む。主戦場はむしろこちらだ。