【池原照雄の単眼複眼】トヨタ、機動力求めバーチャル分社

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◆2つのトヨタなど4ビジネスユニット導入

トヨタ自動車が4月に新しい組織体制を導入し、開発から収益管理に至るまで業務の進め方を大幅に改める。自動車事業は4つのビジネスユニットに分け、小ぶりな括りにしてスピーディーな意思決定を図る。狙いは2年前に示したグローバルビジョンで豊田章男社長が掲げた「持続的成長」が可能な体質づくりだ。

設置するビジネスユニットは(1)「レクサス・インターナショナル」(2)日米欧を担当する「第1トヨタ」(3)新興諸国地域の「第2トヨタ」(4)エンジンや変速機などの「ユニットセンター」。それぞれがバーチャルに分社した企業体のように「より機動的で自律的」(豊田社長)に動く仕組みとしたい意向だ。

但し、経理や人事といったスタッフ部門を各ビジネスユニットに割り振るわけではない。同様にクルマづくりのための調達や技術、生産などの部門も「ユニットセンター」に統合する一部を除いて、4ユニットとは離れた組織のままとする。

◆400万台メーカーとしての新たな成長の視点を

さらに、トヨタが取り組んでいる新設計手法のTNGA(トヨタ・ニューグローバル・アーキテクチャー)を推進するために全社の直轄組織として「TNGA企画部」も発足させる。ここはプラットホーム(車台)の開発などによる「賢い部品共用化」(内山田竹志副会長)へのリーダーシップを執り、4ユニットの事業展開を支援する。

トヨタの足元の世界販売台数(単体ベース)はざっと800万台。地域も投入車種も異なるグローバルで800万台というひと括りの「大トヨタ」では機動力は落ちるし、持続的成長はおぼつかない。何より豊田社長が懸念するのは「グローバル32万人の従業員一人ひとりの『自分がトヨタを支えている』という気持ちが希薄になる」ということだった。

800万台をブランド・地域割で発足する3ユニットにざっと分けると、レクサス50万台、第1トヨタ400万台、第2トヨタ350万台となる。ある幹部は「400万台規模の自動車メーカーなら、まだ成長余力はあると各人が仕事を進める視点も変わるはず」とし、そこに小括りユニットの狙いがあると指摘する。

◆「もっといいクルマをより速く」と、開発責任者

では、実際にクルマを開発する技術者にはどう受け止められているのか―。新型『クラウン』の開発責任者である製品企画本部の山本卓チーフエンジニア(CE)は、「技術者の仕事は基本的に大きく変わらないだろうが、仕事がスムーズに流れ、“いいものをより速く”造れるようになる」と、CEとしての期待を示す。

山本氏の描くスムーズな「仕事の流れ」とは、まず「TNGA企画部」がお膳立てするプラットホームなど骨格部分がCEに降りてくる。CEは、「賢い共用化」を念頭に、第1トヨタなど事業ユニットの要望を反映しながら地域最適の車両開発を進める。

その際、ブランドおよび地域を区分けするビジネスユニットの導入によって「個々のユニットからの、われわれへのクルマづくりへの要望は、よりクリアになろう」(山本氏)と見ている。言い換えれば、現状では世界に供給するモデルでは、開発の際にピントがずれたり、時間がかかったりといった弊害もあるということだろう。

さらに同氏が「一番期待している」のは、エンジンなどを担当する「ユニットセンター」だという。「競争力あるユニットが迅速に調達できれば、よりタイムリーに“もっといいクルマ”が投入できる」というわけだ。

もっとも、巨大組織のことなので、新しい仕事のやり方の導入には、あちこちで戸惑いや衝突も起きるはずと―これは筆者の見方である。それでも、今だからこその変革であり、チャレンジである。でないと、再び販売台数も収益も成長軌道に戻りそうなこの時期を漫然と過ごすような会社は、リーマン・ショック後の4年余りに及んだ苦闘からの教訓は何もないのか、ということになる。
《池原照雄》

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