三菱自動車が2013年1月24日に発売するプラグインハイブリッド方式のSUV『アウトランダーPHEV』。JC08モード走行時のEV航続距離が60.2kmと長く、急速充電器によるクイックチャージにも対応するなど本格EVに近いスペックを持ちながら、最安で税込み332万4000円というリーズナブルな価格設定がなされているのが特徴だ。
経済産業省のクリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金(上限43万円)を受ければ実質支払額が289万4000円となる最安グレードの「E」は、価格引き下げに焦点を絞って装備を落としたグレードで受注生産。一般ユーザー向けのベースグレードはその上の「G」(356万9000円。補助金交付時の実質支払額313万9000円)になる。
両者の差は24万5000円。装備差が大きければ迷わずG以上だろうが、差が小さいならEでも構わなそうに思える。果たして最安のEは、一般ユーザーにとって価値のあるモデルなのかを検証してみよう。
まずは車両の基本部分。2リットル直4アトキンソンサイクルエンジン+前後モーターの電動AWD(4輪駆動)というパッケージ、総容量12kWhのバッテリーパックなど、基本的な部分に差はない。またサスペンションの仕様も同一だ。
大きく異なるのはタイヤ。Gが225/55R18+アルミホイールを履くのに対してEは215/70R16+スチールホイール。エネルギー制御部分ではGのほうに、運転状況によってスロットルオフ時の減速エネルギー回生の強さを6段階に調節できるパドル式の回生レベルセレクターが装備されるのに対してEは未装備という違いがある。もっともアウトランダーにはフットブレーキが物理ブレーキと回生ブレーキの協調制御タイプになっているので、ブレーキの踏み方が上手ければ性能に差は出ない。
エクステリアでは、Gがフォグランプを装備し、ドアミラーがボディ同色となるのに対してEはフォグなし、ブラックドアミラー。またウインドウについてもGに装備されている濃色プライバシーガラスがEには装備されていない。ヘッドランプはGがディスチャージ、Eはハロゲンだ。
インテリアでは、ステアリングがG=オーディオコントロールスイッチ付き本革巻き、E=ウレタン。またGに装備されるクルーズコントロールがEには付かないといった差が存在するが、シート機能やトリム、インパネ素材などには基本的に違いがない。
こうして両者を比べてみると、“装備剥ぎ取り仕様”であるはずのEのクオリティが意外に高いことがわかる。とくにシートが前後席とも差別化の対象になっておらず、車両安定装置や旋回性を高める三菱自動車得意のヨーコントロールなどにも違いがないのは非常に良心的だ。ミラーがボディ同色でないといった差も、アウトランダーをアウトドアに使う層にはあまり気にならないだろうし、濃色ガラスを嫌うユーザーにとっては逆にEが唯一の選択肢になってしまうほどだ。
プラグインハイブリッドを低価格で保有してみたい、基本性能が充実していれば他は気にしない、どうせ後でドレスアップするといったユーザーにとっては、官公庁や法人ユーザーを想定したと思われるEは、意外に価値あるモデルと言える。もっとも、衝突軽減ブレーキなど先進安全装置はGのセーフティパッケージ(Gより9万5000円高)以上にしか装備されない。先進デバイスを求める場合は、素直に上位グレードを選んだほうが無難であろう。