アウディ A1 e-tron 試乗…ロータリーエンジン搭載で超高密度パッケージングを実現

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アウディのEV『A1 e-tron』。小型ロータリーエンジンで発電し、走行距離を250kmに延長する。
  • アウディのEV『A1 e-tron』。小型ロータリーエンジンで発電し、走行距離を250kmに延長する。
  • アウディ A1 e-tron
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  • この試乗会のためターンパイクは全面通行止めとなった。

紅葉に色づきはじめた11月の神奈川・箱根の有料道路、TOYO TIRESターンパイクでアウディの日本法人、アウディジャパンがEVの試作車の試乗会を行った。

用意されたEVは2機種。バッテリーに蓄えた電力だけで走行する純EVの『A3 e-tron』と、小型のバッテリーと発電用エンジンを組み合わせて航続距離を延ばしたレンジエクステンダーEV(E-REV)の『A1 e-tron』だ。アウディジャパンはEVテクノロジーを日本に紹介するにあたって、ターンパイクを3日間貸切とした。これは、日本の自動車業界では初の試みだという。

A1 e-tronは、出力15kW(約20馬力)の発電機を回すのにレシプロエンジンではなく、1ローター式のロータリーエンジンを採用したことで、クルマに関心の高い層の間で話題になったモデルだ。ロータリーを用いた理由は実車を見ると一目瞭然だった。この発電ユニットは発電機の直径の中にロータリーエンジンがぴったり収まるようレイアウトされており、七輪程度のコンパクトなユニットに仕立てられている。A1 e-tronはBセグメントの小さなボディに容量12kWhの大型電池と発電機を搭載しながら、4人乗車スペースと最低限のラゲッジスペースを備えた“超高密度パッケージング”の実現というアイデア提案型のモデルなのだ。

シフトパターンは「D-R-N-Range」で、EV走行メインの際にはDに入れておけばOK。電力が十分なときにはほぼ全域でモーター走行する。エンジンがかかっていない状態ではEVそのものの静かさとスムーズさだ。適宜エンジンに発電をさせて航続距離を稼ぎたいときにはセレクタレバーをRangeに入れる。すると、シフト脇にあるロータリーの“おむすび型”をモチーフにした赤いランプが点灯。このポジションでもアクセル開度が大きくない時にはEV状態だ。一方で、状況に応じて走行時だけでなく停止時でも発電を行うこともある。

A1 e-tronの最大のメリットは、前述のようにコンパクト・レンジエクステンダーとしてはスペースユーティリティが犠牲になっていないことだ。また、リアに発電ユニットを搭載したことで重量配分が少し後ろ寄りになったこともあってか、ハンドリングは軽快で、運転はとても楽しい。

弱点は、レンジエクステンダー状態ではノイズレベルがお世辞にも小さいとは言えないこと。5000rpmで低速回転するロータリーエンジンの排気音はブォーという音圧感を伴ったもので、若干耳障りだ。ただ、振動レベルはきわめて低く、排気系の工夫で十分改善可能ではないかとも思われた。

コンパクトボディにレンジエクステンダーのシステムをフルに詰め込んだA1 e-tron。熟成を図った市販版が登場するのが楽しみだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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