【D視点】クルマのガラパゴスイグアナ…ポルシェ カレラS

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高い完成度の秘密

ポルシェ『997型911』の第2世代となる最新の「カレラS」のボディサイズは、全長4435mm×全幅1810mm×全高1300mm、車両重量1500kg、そして車両価額1512万円(6速MTは30kg軽く、75万円安い)となっている。「997」型とは開発コードで、生産の年代が分かるのでマニアが好んで使うようだ。

DFI(ダイレクトフューエルインジェクション)と、独自開発のDTC(デュアルクラッチトランスミッション)の採用が注目される。新型の3.8リットルエンジンは、385馬力を発生しながら、燃料消費率は10・15モードで7.3km/リットルを実現し、「インターナショナルエンジンオブザイヤー2009」の「ベストニューエンジン」賞をも受賞している。

しかしポルシェの久々の新技術投入にもかかわらず、新しさを示すデザインが見あたらない。やっと見つけたのが、LEDデイランニングライトやLEDコンビネーションランプだが、新鮮さよりも、安全性の向上や、消費電力の節約など性能のための変更のようだ。

マーケットの強い不満がない限り、目新しさのみのデザイン変更をしない。これがポルシェのポリシーと言わんばかりの素っ気無さだ。このような姿勢こそが高完成度の秘密のようだ。時代の変化で小太りになったものの、6速MTを残すなど、往年のクルマのよさにこだわる数少ないクルマでもある。


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環境が変化しても原点は変わらない

カーメーカーは、クルマを開発するときに、開発コードと呼ぶ番号をつけることが多い。当初、開発コード「901」をポルシェの車名と考えていたが、プショーの登録商標であることから、1を加えて911を車名としたと言われる。ポルシェ911の変遷をたどるとシーラカンスのように見えるが、実際は、環境に対応したガラパゴスイグアナが相応しい。

開発当初の911は901型、或いは特別の愛称「ナローポルシェ」と呼ばれ、1963 - 74年に生産された。930型は、アメリカの保安基準に従って装着された大型バンパーが外観の特徴で、73 - 89年に生産された。この時代の生産でも、NAエンジン搭載のものは901型と呼ぶ。

964型は89 - 93年に生産され、モノコックボディや、コイルスプリングの採用などにより80%ものパーツを新規にしながら、外観の変更は最小に止めた。「最新のポルシェは最良のポルシェ」のコピーが有名。993型は、従来型の空冷エンジンや室内レイアウト最後のモデルで、93 - 97年に生産された。

996型はトレードマークの空冷エンジンが水冷化され1997 - 2004年に生産された。外観としては、新デザインの『ボクスター』共通の涙滴型のヘッドランプの採用だが、不評でリデザインされた。最新の997型は、丸型のヘッドランプに戻し、内外装の質的向上に限定したデザイン変更に留めたにもかかわらず、販売台数は増加の一途をたどっている。


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唯我独尊の効用

仕事の関係で、シュットガルトのポルシェ本社を訪問したことがある。ちょうど日本車がボンネットに隠れたフロントワイパー、いわゆるコンシールドワイパーの採用を検討していた頃なので、随分昔の出来事でもある。

いくつかの質問の後、コンシールドワイパーに雪が積もった場合の対策について質問した。ポルシェの技術者は一瞬困惑したように黙り込み、暫く後に、「ポルシェのクルマは屋根の無いところに留めないので心配していない」との答えが戻ってきたのだ。

コンシールドワイパーのポルシェ『944』の工夫を聞きたかったのだが、それ以上の議論は止めて、早々と会議を切り上げた苦い経験がある。ディベートが常識の西欧人の自信に満ちた態度の裏には、「非を認めるのは負け」のような意識が潜んでいることを、思い知らされた出来事でもあった。

自然な運転感覚からは危険なリアエンジンのクルマを、ポルシェは『356』から数えると60年も作り続けている。基本的に不利なレイアウトを放棄せずに、環境の変化に耐えられるように纏め上げたのは、ポルシェの技術者の唯我独尊的な自信によるところが大きい気がする。

D視点:
デザインの視点
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』を上梓した。
《松井孝晏》

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