1 | カラス天狗に金剛杖 |
アルファロメオ『MiTo』の最強モデル「MiToクアドリフォリオヴェルデ」が日本に導入された。「エンジンオブザイヤー」受賞の1.4リットル4気筒インタークーラー付きエンジンは170馬力を発し、6速MTと組み合わされる。走行モードを変更して運転を楽しめるサスペンションや、アイドリングストップシステムが付く。
2006年に限定500台で生産されたレトログラマーなアルファロメオ『8Cコンペティツィオーネ』は、2259万円という高額にもかかわらず、日本への割り当て台数はお披露目前に完売した。08年に発表されたMiToは、好評な「8C」のデザインを引き継いだものなので、売りはデザイン。
MiTo標準車に対するクアドリフォリオヴェルデのデザインの違いは、大口径18インチ専用アルミホイールと、ディアルエクゾーストと控えめだが、自在に飛翔するカラス天狗のような風貌があれば十分なのかもしれない。フロントフェンダーについている「幸運を呼ぶシンボル」クアドリフォリオヴェルデ(緑色の四葉のクローバ)で確かめることも出来る。
デザインと走りが揃ったMiToクアドリフォリオヴェルデは、まさに鬼に金棒、いや、カラス天狗に金剛杖だ。
2 | デザインが身上のアルファロメオ |
現在はフィアットの傘下にあるアルファロメオだが、ランチアと並んでイタリアを代表するラグジュアリーカーメーカーとして知られる。1949年のヴィラデステ・コンクールデレガンスでグランプリを獲得した『6C2500ヴィラデステ』をはじめ、著名なデザインのクルマが多い。
60年代は、まさにスーパーデザイナーの時代で、ジウジアーロの『ジュリア・スプリントGT』、ピニンファリーナの『1600スパイダー・デュエット』、そしてザガートの『ジュニアZ』など、名車が多い。これら天才デザイナーの個性的なクルマは玄人好みで、今でも愛好家が多い。
2000年前後では、アルファロメオが初めてヨーロッパ・カーオブザイヤーも獲得した社内デザインの『145』は、アグリーな表情をしていた。最も成功したと言われる社内デザインの『156』も凹凸の激しい個性的な顔をしていたが、ジウジアーロのフェイスリフトにより美しい顔に整形された。その後、ジウジアーロの『159』によって、ハンサムで一般受けするアルファロメオのイメージが出来上がった。
ファニーな魅力を振りまいている社内デザインのMiToや『ジュリエッタ』は、新しさへの挑戦なのか、イタルデザインがフォルクスワーゲンの傘下になった影響か気になる。デザインで注目を集めるのはアルファロメオらしいが、完成度を忘れないで欲しい。
3 | クワドリフォリオへのオマージュ |
クルマにワッペンを張るのが流行っていたころ、四葉のクローバは貴重品であった。これはアルファロメオの「クワドリフォリオヴェルデ」で、1923年の「タルガフローリオ」のレースで初めてマシンに描かれ優勝した。それ以来、ワークスチームのシンボルとなったのだ。
1918年にスポーツカーメーカーのロンバルダ自動車製造を買収したニコラ・ロメオは、ニコラロメオ技師会社を創設した。レース好きな創業者は製作した高性能スポーツカー「RL」でレースに参加し、アルファロメオの名声を一気に高めた。その後、製作したGPマシン「P2」でグランプリーレースにも参加する傍ら、レーシングスポーツカー「8C」や高級乗用車「6C」を生んだ。
第二次世界大戦後は、戦前の高級スポーツカーC6シリーズに改良を加えて生産を再開するが、大衆量産車メーカーへと転進する。しかし、レースカーで培った技術を惜しみなく投入したので、スポーティなアルファロメオのイメージが形成される。モータースポーツやF1レースへの参加もあったが、経営危機によりワークスチームは撤退した。
アルファロメオについては、デザインを楽しんだら、エンジンルームに鎮座するオールアルミブロックの高性能4気筒DOCエンジンの、大きな乾パンのような赤いロッカーカバーを見ながら、レースの栄光を懐かしむのがエンスーの慣わしだ。
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