いつのまにか非常に多くの車種をラインアップするようになったBMWに、さらに加わった『グランツーリスモ』には、こうしたクルマを臆せず世に出せるBMWの底力を感じるとともに、『X6』の登場時よりもさらに「変わったクルマが出てきた」という印象を強く抱いた。
少し遅れてデビューする、新型『5シリーズ』のセダンとツーリングの中間のようなクルマをイメージしていたのだが、実車を前にするとかなり大柄で、むしろ『7シリーズ』の5ドアハッチバック版というほうがイメージに近く、またX6に通じるSUV(BMWではSAVという)的な雰囲気もある。
ドライブフィールもセダン系とは異なり、切れ味よりも快適性を重視したという印象だ。高級サルーンとしての常識を打ち破る、大きくスライド可能なリアシートや、斬新な発想による、大小2通りに開閉できるテールゲートの使い勝手など、実用車としての新しさも見て取れる。
ただ、走りや内外装のクオリティなど、クルマとしての出来はBMWらしさを十分に持っているものの、はたして日本のBMWファンが、このクルマを受け入れられるかどうかは微妙という気もしなくはない。
こういうユニークな高級車があっても面白いと思うが、価格もけっこう高いので、「なんとなく…」は選ばれないだろう。どういう人が買うのか、ちょっと見えてこない…。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年富山県滑川市生まれ。学習院大学卒業後、生来のクルマ好きが高じて自動車メディアの世界へ。自動車情報ビデオマガジンの編集部員、自動車専門誌の記者を経てフリーランスライターに転身。「クルマ好きのプロ」として、ユーザー目線に立った視点と、幅広い守備範囲を自負し、近年はウェブ媒体を中心に活動中。