次世代エコカー、効果を高めるのは再生可能エネルギー
2009年のソーラーパネルの国内出荷量が前年比約110%増の48万4000kWと、過去最高となった。太陽光発電協会によれば、その9割近くが一般家屋向けとのこと。
購入時の補助金制度が拡充されたことに加え、欧州でソーラーパネル市場が急拡大する原動力となったFIT(フィードインタリフ:ソーラーパネルで発電した電力の余剰分を電力会社が高い単価で買い取る制度)が日本にも導入されたことで、コストバリアが低まったことが大きく寄与したと思われる。
自然界のエネルギーを電力に変換する再生可能エネルギーは、同じく非炭素系エネルギーである原子力エネルギーとともに、日本が化石エネルギーへの依存度を減らしていくうえで非常に重要な技術だ。それなくしては、次世代エコカーとして注目されているPHV(プラグインハイブリッドカー)やEV(電気自動車)も、その効果が半減してしまうからだ。
◆電力は無から生まれるわけではない
トヨタ自動車は1月、マスコミ向けに『プリウスプラグインHV』の試乗会を行った。試乗前に配布されたプレゼンテーション資料に、一般ガソリン車、『プリウス』、プリウスプラグインHVの3モデルについて、CO2低減効果とランニングコスト低減効果が記載されていた。
30kmをJC08モードで走行した場合のガソリン消費量は、プリウスと同クラスのガソリン車(『オーリス』1.8リットル、FWDと推測される)を1とすると、プリウスが0.45(マイナス55%)、プリウスプラグインHVは実に0.1(マイナス90%)であるという。30kmのうち、23.4kmをバッテリーに蓄えた電力で走り、残りの6.6kmもハイブリッド走行ができるPHVのガソリン消費量の少なさは、ことさら際立っている。
が、電力は無から生まれるわけではない。電力製造時のCO2排出量を加算すると、話はだいぶ違ってくる。EV走行時の航続距離である23.4kmを走るのに使う電力を発電所で発生させる時のCO2排出量を加えた値は、ガソリン車比で0.38。62%ものCO2削減は立派なものだが、それでもノーマルのプリウスと比べると、差は7%にとどまるのだ。
ちなみにこれらの数値は、バッテリーに充電する際の少なからぬ損失や送電ロスなども考慮するなど、相当フェアな前提に基づいて算出されている。厳しい現実をあえて露出していることは、トヨタのPHEVに対する本気度の高さを伺わせるところだが、その現実はPHVばかりでなく、EVにも通じるもの。EVを増やせば魔法のように環境負荷が下がるというものではないのだ。
◆EV/PHVの本領発揮はクリーンエネルギー政策しだい
この電力製造時のCO2排出量は、日本のエネルギーミックスを前提に計算されている。日本は天然ガス、石炭、石油を用いた火力発電所の割合が高いため、EVを導入したからといって、環境負荷はハイブリッドカーと大して変わらない。
原子力発電大国で、近年はピーク電力補完のために太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギーの導入も進めているフランスの場合、電力製造時のCO2はぐっと下がる。日本の半分未満という試算もある。
日本の場合、ベース電源のエネルギーミックスを劇的に変えることは難しい。新たな大規模水力発電所の運用が期待できる水系は少ない。原子力発電所にしても、今から大増設を計画したとしても用地収容から運用開始までにはゆうに20年以上かかる。
その日本にとって、自前のエネルギーを少しでも増やすうえで、新たな再生可能エネルギーの利用を進めるのはとても大事なことだ。大深度地下のマグマのエネルギーを使う高温岩体発電、海流発電、海洋を利用したバイオマスといった未来技術の開発を進めつつ、今あるコンベンショナルなエネルギー変換装置を普及させるのはとても大事だ。ソーラーパネルもその一つなのである。
日本版スマートグリッドによって、一般家屋の屋上に設置された太陽電池が相互接続され、仮想メガソーラー(大規模太陽光発電所)として運用されるようになれば、今はまだコストパフォーマンスの低すぎるソーラーパネルの有効性は次第に高まる。EVやPHEVが話題になっているが、それらが本領を発揮できるためには、クリーンエネルギー政策をさらに強力に推し進めていく必要があるのだ。