ホンダが12月4日に発表した新型『アコード』は、1976年に発売された初代モデルから数えて8代目にあたる。新型アコードをどのようなクルマに仕立てたのか、その狙いを開発責任者に聞いた。
開発責任者を務めたLPL(ラージ・プロジェクトリーダー)の池上博之氏は、歴代アコードのうち6代目の欧州モデルから3代続けて開発に関わり続けたエンジニアだ。
---今年3月に北米、6月に欧州でデビューした新型アコード(北米ではアキュラ『TSX』)が12月4日に日本でデビューを果たしました。旧型モデルと同様、欧州車テイストの強いキャラクターとなっていますね。
池上:「新型アコードのクルマ作りの方向性は、基本的に旧型を継承しています。走る、曲がる、止まるというクルマの基本性能を極限まで高め、世界のライバル、とくに欧州市場で最も激戦区となっているDセグメント(全長おおむね4.4 - 4.7m。最近拡大傾向にある)のライバル、とくにBMW『3シリーズ』、アウディ『A4』などのプレミアムモデルと戦えるクルマ作りです」
---新商品の狙いがそれだけ明確であれば、実際の開発もスムーズだったのでは。
池上:「とんでもない。EU(欧州連合)市場は、走る、曲がる、止まるというクルマの基本性能が試されるという点で、世界でも一番厳しいフィールド。たとえばアウトバーンを走っていれば、時速200kmからのフルブレーキングなどしょっちゅうですし、イギリスでは狭くて路面もボコボコに荒れた田舎のBロードを60マイル/h(約96km/h)で走ったりする。そういうフィールドで、欧州のプレミアム御三家(メルセデスベンツ、BMW、アウディ)という強い相手と戦えるモデルを作るのは、並大抵のことではありませんし、クルマ作りに関わる人間として、そういうクルマ作りに挑戦したくなるものなんです。」
---なるほど。その高い目標をクリアするために、どのようなクルマ作りを行ったのでしょうか。
池上:「欧州メーカーのクルマ作りのすごいところは、フルモデルチェンジのたびに、クルマのあらゆる部分について、進化させるべきところを着実に進化させてくることです。旧型の7代目アコードは欧州でも高い評価をいただけたと思っていますが、プレミアムクラスという視点で見ると、進化させなければいけないところがたくさんありました」
池上:「欧州市場には多くのセグメントがありますが、Eセグメント(全長約4.8m以上)から上のクラスについては、手がけるメーカーもごく限られています。それに対してDセグメントは、世界の自動車メーカーが、それぞれ持てる力のすべてを出した商品を投入してくる激戦区。そのDセグメントで良いクルマを作るのに、奇手はありません。私は新型モデルを開発するにあたって、すべてにおいて上質であることを徹底的に追求することにしました」