【池原照雄の単眼複眼】内外の増産対応で空前の規模に膨らむ設備投資

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乗用車8社は2年連続の3兆円突破

乗用車各社の2007年度連結設備投資が空前の規模に膨らんでいる。国内市場の不振とは対照的に海外市場の開拓が順調に進んでいるためだ。ただし、生産技術革新を狙って国内工場へ投資を振り向ける動きも活発化している。

海外生産の拡充に偏っていた1990年代とは異なり、「国内・海外両立て」での能力増や設備更新に振り向けられるのが今年度の大きな特徴だ。

乗用車メーカー8社の07年度設備投資計画は、全社がプラスで、ホンダ、スズキ、ダイハツ工業と、大幅な増額で過去最高を更新する企業が目立つ。トヨタ自動車に重複計上されるダイハツ分も含む合計額は、3兆3000億円余りで、2年連続して3兆円の大台を超える。

各社の意欲的な投資は、大市場の北米や欧州、さらに中国、インドなど新興市場で日本車の躍進が続いているためだ。

最大手のトヨタは、過去最高だった05年度実績にはわずかに及ばないものの、同年度から3年連続して1兆5000億円規模という大型投資を維持する。トヨタは06年初めまでにおおむね国内の能力増を終えており、重点投資は、販売の拡大によって現地生産比率が急速に低下した北米など海外とする。

◆生産革新を狙っての「国内回帰」も相次ぐ

今年度は、すでに4月に資本提携先である富士重工業の米国工場での『カムリ』委託生産が始まったほか、秋には日本メーカーとして初の進出となるロシア工場(サンクトペテルブルグ市郊外)が操業する。北米では08年に操業予定のカナダ第2工場、8番目の北米拠点となるミシシッピ工場(2010年操業予定)の生産準備が本番を迎える。

05年度比では約1.5倍の大幅な増額となるホンダは、08年秋に稼動予定の米インディアナ工場の建設にこのほど着工。30年余ぶりの国内工場新設となる寄居工場(埼玉県寄居町)への投資も本格化する今年度は「全世界的に能力アップの投資が進む」(青木哲副社長)年となる。

寄居は「大胆な生産改革を断行して海外に展開する」(福井威夫社長)新鋭拠点となる。生産設備の「国内回帰」という意味では、08年末に稼動するスズキの相良工場(静岡県牧之原市)、今年末に完成するダイハツの大分第2工場(中津市)もそうだ。

◆スモールカー生産に磨きをかけるスズキ、ダイハツの新鋭工場

両社は軽自動車、小型登録車を混流生産しているが、スズキの相良は小型車、ダイハツの大分第2は軽の専門工場とし、生産効率に磨きをかける構えだ。スズキは09年度までの5カ年中期計画で総額1兆円の大型投資を計画している。

海外の販売好調から情勢によっては能力増計画が上振れする可能性もあり、鈴木修会長は「業界では中小企業なので、そこは適時、柔軟に対応できる」と、今後も設備投資の拡充に機動的に対応する構えだ。

ダイハツは今年度の計画が初めて1000億円台を突破、売上規模が上位のマツダや三菱自動車をも大きく上回る。箕浦輝幸社長は、大分第2を「低コスト生産のモデル工場とし、ノウハウは海外にも横展開する。当社のグローバル化の大きな転機にしたい」と、戦略拠点への育成を強調している。

乗用車各社の07年度連結設備投資計画
メーカー:額(対前年度増減)
●トヨタ:1兆5,000億円(1.2%)
●ホンダ:7100億円(13.2%)
●日産自動車:5150億円(1.2%)
●スズキ:2500億円(20.5%)
●ダイハツ工業:1250億円(61.3%)
●マツダ:940億円(18.1%)
●三菱自動車:818億円(21.0%)
●富士重工業:600億円(0.7%)

《池原照雄》

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