【ボルボ EX30 新型試乗】まさに「A型のクルマ」、シンプルさにこだわったゆえの功罪…中村孝仁

ボルボ EX30 Plus Single Motor
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日本人の4割がA型の血液を持っているという。ほぼ半数に近い。次いでO型、B型、AB型と続くそうである。

【画像】ボルボ EX30 Plus Single Motor

ボルボというブランドについて、少しその歴史を紐解いてみたい。ドイツ車は質実剛健を標榜するが、ボルボも実はその質実剛健を地で行っているブランドである。そもそも、生みの親が「人は間違いを犯すから、設計の基本は常に安全でなければならない」といったと言われる。間違いではない。1959年には世界初の3点式シートベルトを開発。しかし、敢えて特許を無償公開したことで、これは瞬く間に世界に広がった。

とはいえ、60年代以降のボルボは俗にボーリングカー(つまらないクルマ)という烙印を押されたり、空力的に横風に強いからと、頑なに四角い箱型のデザインに拘りを見せたり、それ以前には、スポーツカーは安全を担保できないから、スポーツカー生産をしないと公言したり、まあ、頑なで一徹な開発姿勢を貫いてきたメーカーである。その後、ボーリングカーといわれた運転に関しては、レースでその実力を証明して人々を黙らせ、四角い箱型デザインも、いつの間にやら、つるんとしたスタイリッシュなデザインへと方向転換した。でも相変わらずスポーツカーは作らないようである。それでも頑なさを持ちながら、いざという時の方向転換の早さもボルボの得意技でもある。

方向転換の早さという点では、電動化についての方針が顕著である。2030年までに世界販売台数の90~100%を電動化車両にすることを目指し、2040年には温室効果ガス排出量をネットゼロにすることを目指している、という目標は堅持しているようで、まさに電動化まっしぐらなのである。決して悪いことではないが、問題はユーザーが果たしてついてこられるか?という疑問を禁じ得ないのだが、今年の販売台数を見ると大きくは落ち込んでおらず、多少減少はしているものの、他ブランドも傾向は同じだから、輸入車から人々が少しは慣れていることを示す。これは日本人が貧乏になって、価格が上昇した輸入車に手が出なくなっていることを表しているのかもしれない。

◆ボルボ EX30は「A型」的?

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そんなわけだから、入り口の階段を低くして、少しでもユーザーを取り込むことが急務であり、その答えとしてボルボが投入したのが、『EX30 Plus Single Motor』である。読んでわかる通り、従来のEX30には、ツインモーターの電動四駆と、シングルモーターでもバッテリー容量が大きく、航続距離の長いエクステンデット・レンジが存在したが、今回は価格に特化したのか、バッテリーを使い慣れた三元系からリン酸鉄に変更し、さらに容量も小型化して51kwhに落とし、航続距離も発表では390kmとされている。

冒頭で血液型の話をした。何故かというと、我が家にはその日本人で最も多いはずのA型がいない。それどころか、人が集まってがやがややっても、A型は滅多に来ない。A型人間は一般的に(あくまでも一般的にだ)真面目で几帳面だとされる。ボルボの車両開発や設計には、どうもこのA型が多いのか、何をやるにしても実に几帳面だし、真面目だ。新しいEX30についてもそうした一端が現れていて、実に整理整頓されてすっきり、である。これがB型になると見た目はすっきりさせるのが上手だが、机の中や開き戸を開けると、中はグチャグチャというケースが多い。ただ、見えなくしているだけで実際中はカオス。どこに何があるのやらさっぱりである。

以前にこのEX30の操作系について話をした。とにかく何をやるにしても「ひと手間」がかかるわけである。B型ならさしずめ、「面倒くせぇ」となるかもしれない。ただ、それなりに整理されていてロジックがあるから、一度覚え込めば、それなりに何かをしたい時に必要なものを呼び出せるのだろう。それにどうもコンピューター同様、ボタン操作をカスタマイズできるらしく、普段使うモノを登録しておけば、すぐに呼び出すことも出来るらしいが、それでも「面倒くせぇ」である。

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◆シンプルにこだわった功罪

車両本体価格は479万円である。ついに500万円を切った。だからBEVとしては、それなりにお安い価格(輸入車として)なのかもしれないが、省かれている装備も多く、シートはパワーシートではなく、すべて手動でアジャストする。まぁ仕方がない。エクステンドレンジでは、フル充電するとほとんどカタログ値なみに走ることができたのだが、今度はそうはいかなかった。リン酸鉄だからというわけではないが、カタログ上の390kmは、どうあがいても300kmが良いところであった。

面白いと思えたのはBEVらしい一面。EX30の場合、ドアを開けて座席に付くと既に車両は発進可能な状態にある。「エンジンを切る」という作業はない。というわけで洗車するために「洗車モード」というものが用意されている。ただし、ここに辿り着くためにはディスプレイに5回タッチしなくてはならない。そして洗車モードを発動させるためにもう1回。だから洗車モードに入るためには、都合6回ディスプレイにタッチする必要があるというわけだ。何もかもまさにiPadのようなタッチパネルに詰め込んだ結果である。

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乗り味も、以前乗ったシングルモーターとは少し違った。端的に表現するなら、よく弾むゴム毬の上に乗った感じである。取り立てて、突き上げ感があるわけでも、いわゆるハーシュネスが強いわけでもない。ただ、フラット感は希薄で良く揺れる。とげとげしさはないから不快ではないが、落ち着きはない。

結論から言って、やはりEX30の操作系は少しシンプルにし過ぎた印象が否めない。もう少しだけ物理スイッチを残して欲しかったと思うのは、歳のせいだろうか。A型は人間同様扱いづらい。因みに私は一番少ないAB型である。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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