スズキは20日、2025~2030年度に向けた新中期経営計画「By Your Side」を発表した。「持続的な成長によって企業価値を向上させる」を基本方針とし、2030年度に売上8兆円、営業利益8000億円、ROE13%をめざすという。鈴木俊宏社長が登壇した発表会では、より市場や売上規模の大きい四輪事業への説明が中心となったが、二輪事業についてはどうか。
◆スズキ二輪は「お客様が求める『価値ある製品』を提供
新中期経営計画「By Your Side」は2023年に策定した2030年度に向けた成長戦略をより具体化したもので、現中期経営計画を1年前倒しして実施していく。「チームスズキ」を強調し、さまざまなステークホルダーとともに「生活に密着したインフラモビリティ」をめざすとした。
基本方針は「持続的な成長によって企業価値を向上させる」を掲げ、資本コストを上回る価値の創出、長期安定的な経営の実現に向けた ステークホルダーとの関係強化、そしてAI活用による人財強化や販売台数増加や環境対応に向けた設備投資とエネルギー極少化のための技術開発投資をおこなうとしている。

具体的な戦略として、技術哲学を「エネルギー極少化 by 小・少・軽・短・美」とし、製造からリサイクルまで「資源リスクと環境リスクを極少化させる技術」を目指し全ての過程でエネルギーを極少化することを掲げた。
2030年度に売上8兆円、営業利益8000億円(営利率10%)、ROE13%達成を目標とし、四輪事業の販売台数は420万台、営利7000億円とした。そして二輪事業は254万台、500億円の営利をめざすという。
この目標に向けて二輪事業では「妥協しない製品づくりを通じてお客様が求める『価値ある製品』を提供」する。
◆「趣味嗜好」と「生活の足」

欧米を中心とした趣味嗜好で使用する商品と、インド等の市場で生活の足や業務で使用する商品、それぞれでの戦略を分けながらも共通するのは「お客様の立場になって、お客様が求める商品を適切な価格でお届け」すること、「初心者からベテランまで、安心して乗れる、扱いやすい、楽しい商品」とすることをスズキは掲げる。
趣味嗜好=ファンライド向けには、最高出力など数値だけに捉われず、全体バランスが最適な商品、持っているだけでもワクワクする商品を開発、提供する。販売面では店頭で実車に触れ、試乗できるイベントの定期的な開催やファンコミュニティの形成を通じて、長期的な顧客関係を構築するとした。
生活の足向けには、都市部での通勤/通学に最適な取り回しの良い商品、燃費性能、使い勝手が良く日常の足として最適な商品を開発、提供し、「求められる接客/サービスを提供することで信頼を得て、お客様を増やす」とする。成長市場のインドでは販売サービス網の 拡大、開発体制/生産能力の強化にも取り組む。
技術開発については、「2050年の『使用中のCO2排出実質0』に向け、マルチパスウェイで取り組む」として、コミュータEVの早期量産開発、内燃機関の効率向上や、E100まで見越したエタノール対応技術開発や、合成燃料や水素などを含めたCN技術を「手の内化」、商品価値につながる技術を開発するとした。
さらに「二輪車が持つ本来の魅力の追求に加え、より付加価値を高めるため安心安全、使いやすさにつながる技術についても注力していきます」と鈴木俊宏社長は語った。
◆「諸元表で勝負する時代じゃない」

今回の計画の中では、具体的な車種に関する発表はなかったが、改めてスズキの二輪哲学が「基本性能(走る/曲がる/止まる)が高次元、高品質でバランスしている価値ある製品」であると強調され、すべての製品に対し、妥協なく、品質/信頼性/高性能を追求すること、多くのユーザーにたくさん使ってもらうことで、生活をより豊かにする、というメッセージが発信された。
また、インド戦略の中などで「スズキファンを取り込む」ことなどが盛り込まれており、ファン獲得に向けての施策を問われた鈴木社長は「諸元表によらない、こんなのが欲しかったと思えるクルマ(バイク)を提供すること」だと答えた。
「諸元表によらないと言ったのは、二輪の方で『GSX-8S』と『GSX-8R』を提供させて頂いているんですけど、それが諸元表では他社さんの同クラスの二輪に対して劣っている。けど、乗ってもらうとすごいいい評価を受けるんです。そういう意味で言うと、もう諸元表で勝負する時代じゃないなと。やっぱり作り込みであるとか、商品を作る段階で技術者がどういう思いで作ってきたのかを大切にした商品づくりをやっていくというようなところが、これからの商品づくりの中でポイントになっていくと思います。お客さまの立場に寄り添って、By Your Sideで考えたもの、それをしっかりと作り込んでいく。将来の『あったらいいな』という商品づくりをできる体制に持っていく、というところがやはりスズキファンを増やしていくことにつながるんじゃないかと思っています」(鈴木社長)
