WRCフィンランド戦で勝田貴元が今季最高3位…トヨタ1-3、豊田章男氏も表彰台へ

WRC第9戦フィンランドの表彰台。左から優勝ドライバーのエバンス、優勝マニュファクチャラーであるトヨタの豊田章男氏、優勝コ・ドライバーのマーティン、3位の勝田、勝田のコ・ドライバーであるジョンストン。
  • WRC第9戦フィンランドの表彰台。左から優勝ドライバーのエバンス、優勝マニュファクチャラーであるトヨタの豊田章男氏、優勝コ・ドライバーのマーティン、3位の勝田、勝田のコ・ドライバーであるジョンストン。
  • 3位に入った#18 勝田貴元(トヨタ)。
  • 勝田は今季初表彰台(写真は競技最終日の前日である土曜)。
  • 優勝は#33 エバンス(トヨタ)。
  • 表彰台で豊田氏を手荒に祝福する優勝のエバンスと3位の勝田。
  • 2位の#11 ヌービル(ヒョンデ)。
  • 4位の#3 スニネン(ヒョンデ)。
  • トヨタのチーム代表であるラトバラが“現役復帰”、5位に入った(#97のGRヤリス Rally 1 HYBRIDで出走)。

8月6日に競技最終日を迎えた2023年世界ラリー選手権(WRC)第9戦「ラリーフィンランド」で勝田貴元が3位に入り、今季初の表彰台登壇を果たした。通算では4回目の表彰台。優勝はエルフィン・エバンスで、トヨタは1-3フィニッシュ、豊田章男氏も表彰台に上がっている。

◆トヨタの勝田vsヒョンデのスニネン、熾烈な3位争い

WRCでも屈指の高速ラリーとして知られるラリーフィンランド、今年は競技が本格化した金曜(8月4日)に波乱が続出した。ラリーの総合優勝を争うトップカテゴリー(「Rally 1」規定)のマシンにアクシデントが連発したのである。

#8 オット・タナク(Mスポーツ・フォード プーマ Rally 1 HYBRID)に#4 エサペッカ・ラッピ(ヒョンデ i20 N Rally 1 HYBRID)、さらには昨季王者で今季もドライバーズポイントリーダーの#69 カッレ・ロバンペラ(トヨタ GRヤリス Rally 1 HYBRID)といった“大駒”たちがリタイアを喫するなどし、最前線は急激にサバイバルな様相を強めた。

そうしたなかで、#18 勝田貴元(トヨタ GRヤリス Rally 1 HYBRID)は#3 テーム・スニネン(ヒョンデ i20 N Rally 1 HYBRID)と3位表彰台をかけたバトルを演じていくことになる。

今季の勝田はセバスチャン・オジェの不在時にはトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team=TGR-WRT)のマニュファクチャラーポイント対象となる“登録ドライバー”を務めており、フィンランドはオジェ不在戦のひとつ。つまり、今回ヒョンデ(HYUNDAI SHELL MOBIS World Rally Team)の登録ドライバーとして参戦している#3 スニネンとの3位争いに打ち勝つことは、勝田にとって重要なミッションなのである。

◆今季初、通算4回目の表彰台に勝田が登壇

金曜終了時点では#18 勝田が#3 スニネンを12.4秒リード。土曜には勝田がスピンしたこともあり、一時スニネンが先行したが、勝田が再逆転に成功、6.4秒リードでこの日を終えた。

そして最終日(日曜)、勝田はリードを守り続け、最終的には4.3秒差でスニネンを下し3位フィニッシュを達成。勝田はコ・ドライバーのアーロン・ジョンストンとともに表彰台へと上がった。勝田の表彰台(WRCのラリー総合順位における表彰台)は今季初で、キャリア通算では2021年のサファリ(2位)、2022年のサファリ(3位)とジャパン(3位)に続き4回目である。

今季の勝田は、ラリー総合結果における10位以内入賞がフィンランド戦の前までの8戦中4戦に留まっていた(4位1回、6位2回、7位1回)。昨季は全13戦中12戦で入賞していたことを考えると、リザルト面がすべてをあらわすわけではないが、少々安定感を欠く印象もあった。

昨季2回あった表彰台もまだ、という状況だったわけだが、WRCを象徴する伝統的なラリーのひとつでシーズン初表彰台を獲得。ここをターニングポイントにして、昨年に続くWRC母国戦(11月のラリージャパン)での活躍、そして悲願のWRC初優勝へ向かって上昇気流に乗っていってもらいたいところだ。

勝田貴元のコメントは以下の通り。

「自分にとって第二のホームイベントであるラリーフィンランドで表彰台に立つことができて、本当に嬉しいです(フィンランドはトヨタのラリー活動における“根拠地”のひとつ)。自分にとっても、チームにとっても、そして(豊田)章男さんにとっても大きな意味をもつことです」

「章男さんは僕に大きなエネルギーとモチベーションを与えてくれて、それがテーム(スニネン)との激しいバトルを続けるなかで助けになりました。テームは本当にいい仕事をしていたので、決して簡単ではありませんでしたが、コンディションがトリッキーだった土曜日の最後にギャップを築くことができたので、最終日のストレスは少し軽減されました」

「前戦ラリーエストニアの後、チームのエンジニアたちと一緒に、どこを改善すればいいかを一生懸命分析し、その結果、金曜日の朝からいいパフォーマンスを発揮することができました。また、テストの時にフィンランドの道をうまく走るためのアドバイスをくれたカッレ(ロバンペラ)にも感謝しなければなりません」

優勝マニュファクチャラーを代表し、豊田章男氏もシャンパンファイト

ラリーフィンランドの優勝は#33 エルフィン・エバンスで、トヨタの1-3フィニッシュ。2位にはヒョンデの#11 ティエリー・ヌービルが入っている。また、今回はトヨタ(TGR-WRT)のチーム代表であるヤリ-マティ・ラトバラ、かつてのWRCトップドライバーが“4台目”のGRヤリス Rally 1 HYBRIDで参戦、5位に入った。

表彰台には3位までのクルー(ドライバーとコ・ドライバー)、そして優勝マニュファクチャラーの代表として豊田章男氏(トヨタ会長)が登壇した。登壇者7名中、2名が日本人という状況のなかで、まず優勝クルー(エバンスとコ・ドライバーのスコット・マーティン=ともに英国)の国歌「God Save The King」が流れ、続いて優勝マニュファクチャラー(トヨタ)の国歌「君が代」が流れる。その後のシャンパンファイトは豊田氏ひときわの喜びが感じられるものでもあった。

豊田氏は今回、ラリーに出走したラトバラの代行としてTGR-WRTのチーム代表を現地で務めていた。「チーム代表代行として4つの仕事をさせてもらいました」と語り、そのうちの3つは「“チームに声をかけてまわる”こと」、「SS(スペシャルステージ=競技区間)でドライバーたちを“見守る”こと」、「チーム代表としてインタビューに答えること」であったという。

そして4つ目の仕事が、「“表彰台に立つ”という仕事」。「体中がベタベタになってしまう一番“やりたくない仕事”でした」とのことだが、「本当に嬉しい経験でした。こんな素敵な経験をさせてくれた(優勝クルーの)エルフィンとスコットに心から感謝します」との喜びを語っている。そこに勝田の3位表彰台も重なり、トヨタのWRC活動における大きなメモリアルのひとつという格好になった。

今季のWRCは残り4戦。最終戦は昨季に続いて「ラリージャパン」(愛知・岐阜/11月16~19日)である。復活初回(当該地域では初開催)だった昨年以上の盛り上がりが期待される。

*上記の結果、内容は日本時間7日12時の段階の情報等に基づく。

《遠藤俊幸》

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