◆万能スポーツモデル的要素が強まった「現代のRS」
BMWの看板エンジンである水平対向2気筒エンジンは、今や路線が複数に分かれる。『R18』系列のビックツインと、今回紹介する『R1250RS』が搭載する1254ccの空・水冷式だ。これとは別に1169ccの空・油冷ツインも現役で『R nineT』がその筆頭である。

R1250RSは1976年に誕生した『R100RS』をルーツにもつ。RSはレーシングスポーツを意味するというが、現BMWラインアップにはピュアスポーツモデルとして『S1000 RR』、その上に『M1000 RR』が君臨することから、R1250RSでは日常走行/ツーリングといった万能スポーツモデル的要素が強められた。
136ps/7750回転、14.6kgf・m/6250回転のボクサーユニット。車両重量は252kg(日本仕様)だ。シート高は820mm。跨がってみると数値以上に軽くて適度な前傾姿勢、ハンドル幅がやや広め、といった印象。マイバイクであるホンダ『CBR1000RR ABS』(SC59)と比較すれば大柄でアップライトだが、適度なルーズ感がものすごくしっくりときた。
◆最新モデルらしいボクサーサウンド

エンジン始動。目覚めはボクサーらしく左右にフワッと揺られるものの、かつて感じていた強めの振動はほぼ消えている。サウンドもボクサーツインというより筆者にしてみればバーチカルツインのようで、ヒュンヒュンといった高音域が目立つ。最新モデルなのだと割り切れば、これはこれで良い感じだ。
メーター周りは最新のBMWファミリーであり、二輪向けにコントラストをハッキリさせたTFT液晶で構成する。ハンドル左側のセンター寄りには親指と人差し指で回すダイヤルがあり、この操作で液晶画面の変更や各種情報をハンドルから手を離さずに呼び出せる。操作に慣れるとじつに便利だ。

試乗車には、電子制御サスペンション「ダイナミックESA」が装着されており、さらに各種走行モードが簡単に変更できたが、スポーツ走行向けパラメーターとなる「ダイナミック」であっても乗り味は全体的にソフトな傾向だ。もっとも、倒立式テレスコピックフォーク(前輪)とパラレバー(後輪)のセットアップはスムースなライディングが意のままだから不満はない。
◆なんだろうこの物足りなさ…と思ったが

でもなんだろう、このモヤモヤ……。エンジンそのものは十二分にパワフルだし、ニーグリップしやすく荷重移動もしやすいライディングポジションながら、ちょっと前のBMWにあったエッジ(キャラ立ち)がない。高回転域まで回してもスムースで、回転なりにパワーがグイッと盛り上がるから文句などないはずなのに。
なんとなく物足りないなと思っていたが、「これこそRSのキャラクターだったな」と、かつて連れ添った愛車『K100RS』のフィーリングを思い出した。エンジンやシャーシが誇張し過ぎず、ロングツーリングでも最後の最後まで快適。そして道中、いつでもスポーツ走行が楽しめる。物足りなければS1000RRやM1000RRがあるじゃないか。
ということでR1250RSは熟練ライダーにもおすすめします。
価格は188万4000円から。

■5つ星評価
パワーソース:★★★
ハンドリング:★★★★★
扱いやすさ:★★★★★
快適性:★★★★
オススメ度:★★★★
西村直人|交通コメンテーター
クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本イラストレーション協会(JILLA)監事。