「切り拓く」ものがないと『RX』じゃない…レクサス RX 新型、開発責任者の挑戦とは

レクサス RX500h Fスポーツ パフォーマンス
  • レクサス RX500h Fスポーツ パフォーマンス
  • 初代レクサスRX(日本名ハリアー)と新型RX
  • レクサス RX 新型のフロントマスク
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グローバル、日本市場ともに、今、レクサス車中もっとも販売台数が多いのがミドルサイズ・ラグジュアリーSUVの『RX』だという。そこで新型の開発をとりまとめたチーフエンジニア・大野貴明さんに開発の狙いを伺ってみた。

◆「切り拓く」ものがないと『RX』じゃない

初代レクサスRX(日本名ハリアー)と新型RX初代レクサスRX(日本名ハリアー)と新型RX

----:初代RXが日本市場に投入されたのは2009年で、あの時はまさに“待たれていたレクサスのSUV”だったと思いますが、今もレクサスのSUVは強いのですね。

大野チーフエンジニア(以下、大野CE):今、日本国内で『RX』と『NX』と『UX』でだいたい6割ほど。SUV系で半分以上が占めています。

----:いつごろからの傾向ですか?

大野CE:『NX』が出た時から。初代の『RX』は出てすぐに確固たる地位を築いて量販車種になりました。

----:新型『RX』の開発では、大野さんはどんなことを大事にされたのですか?

大野CE:コンセプトはいろいろ考えるところはあったのですが、やはり初代はラグジュアリーSUVのパイオニアとして、それまでにない時代を先取りしたカーライクな高級SUVとして時代を築いた。そういった原点に返って、挑戦を続けていく、何か切り拓くようなところがないとやはり『RX』じゃない。2代目でもハイブリッドをラグジュアリーSUVとして初めて世の中に出しました。挑戦していく姿をしっかり実現してきたい、というのが1番にありました。レクサスのコアモデルでもあり、冒険しにくいところもあるのですが社長の豊田からも「小手先じゃなくて、失敗してもいいから挑戦してほしい」と。

----:相当な“檄(げき)”でしたね。その中でどういう点をアピールされているのですか?

大野CE:ふたつあり、ひとつは走って楽しいクルマであること。レクサスが大事にしている対話できるクルマであることを基軸に、意のままに走れる操って楽しいクルマをSUVの中でも実現する。今回はその代名詞として新しくパフォーマンスモデルの「RX500h」を出しました。もうひとつ走りに関しては、外見デザインも含めて走りを想起させる、踏ん張り感があり力強いデザインです。今回は今までのスピンドルグリルも壊して、新しくスピンドルボディを採用しました。インテリアも、走りに集中できながら心地いい空間を作り上げることで味わっていただける、そういうクルマになりたいというのが思いです。

◆「スピンドルを壊せ!」を合言葉に

レクサス RX 新型のフロントマスクレクサス RX 新型のフロントマスク

----:新しい顔つきは、カタマリ感が感じられていいですね。

大野CE:ありがとうございます。

----:当方は庶民なのでスピンドルグリルのゴージャス感が照れ臭かったですが、新しい顔付きは「おっ、変わったな」と思いました。

大野CE:もともとエンジンを積んでいるラジエターグリルをモチーフにそこの中でデザインしていましたが、今回は全体の塊のなかにシームレスに、より自然に、塊としてスピンドルを表現しました。

----:自然に……確かに今度は、庶民の当方も見た瞬間に馴染めました(笑)。目を凝らすと、グリルの上半分に、従来のスピンドルグリルの輪郭を思わせるパーティングラインが残っていますが、当初は従来どおりのスピンドルグリルを採用する案もあったのですか?

大野CE:開発の中で初期にそういったことがあったのは事実です。でも、このままで留まってはダメだよねということで、挑戦を掲げてからは、フロントの部分は幾度もやり直しました。後々あがってくる電動車の『RZ』も含めて、どういう風に変わっていくのかということで、スピンドルを壊せ!を合言葉に開発しました。ご指摘の見切り線は部品構成上ああなっていまして、スピンドルグリルを途中でやめたからという訳ではありませんが……。

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----:あくまで個人的な感覚ですが、ガレージに収まっているレクサス車を見かけると、従来車は瞬時にどのモデルか判別する自信がなかったのですが、今後はどうなっていくのしょう?

大野CE:進化はしていくとは思うので、スピンドルボディと変わった新しいアイデンティティに関しては、スピンドルグリルが『GS』の時代からずっと進化してきたように、スピンドルボディも進化していく中で、各車で表現の差が出てくることになっていくと思います。

----:ボディ全体も、プレスラインがキッとしたものからマイルドな感じに変わってきましたよね。『RX』のCピラーまわりのウインドゥグラフィックは従来型のイメージが残されていますね。

大野CE:4代目から採用しているフローティングルーフですが、平面的だったものからより立体的に表情を変えています。

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◆“ギラギラ感”ではなく、やわらかく包み込まれる空間

----:一方でインテリアも、乗って、少しハッキリ申し上げると今までのギラギラ感が薄れ、借り物の試乗車ながら自分のクルマに乗り込んだような“なじみ感”をおぼえました。

大野CE:感じていただいたとおりで、居心地のいい空間、それと加飾というよりファブリック、スウェードなどの素材を上手く活かしつつ、触感でも硬さをとった、やわらかく包み込まれる。ですが運転席は運転に集中できる、そういう空間を目指しました。

----:いいですね。シフトセレクターはオーソドックスなレバー式ですし。

大野CE:運転をしていること自体を忘れないように、あのように少しコンパクトにした状態であの場所に置きました。

----:HUD(ヘッドアップディスプレイ)や表示系では何かありますか?

大野CE:視距離といいまして、昔のHUDでは見ていて何となく目がこそばゆいといったことがありました。が、道路を見ていてその邪魔にならず、極力ブレないようにしつつ、画像の進化とともにピントも合わせやすいようにしてあります。

レクサス RX450+レクサス RX450+

----:ピントは大事ですね。

大野CE:ええ。デジタルインナーミラーも、死角がなく広く見えるのがいい点ですが、運転中にもしも目があわせにくいという場合は、レバーを倒せば通常のミラーとして切り替えて使えるようになっています。

----:後席が電動でリクライニングも格納もできるのはレクサスらしくていいですね。

大野CE:「Version L」に標準で付くようにしています。

----:背もたれの角度はどこかで一旦停止させられるのですか?

大野CE:まず荷物をたくさん積みたい場合の1番立った状態で19度、それと標準の状態はSUVでヒールが低いので27度に、さらに1番リクライニングさせた状態は37度にそれぞれ設定してあります。

◆乗り心地を犠牲にせず、意のままにコントロールできる

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----:それにしても「RX500h F SPORT Performance」の乗り心地のよさには驚きました。個人的には快適なクルマで十分なので、従来はヤル気満々系の“Fスポ”はどうもな……と思っていたのですが、いい意味で裏切られました。

大野CE:あははは、ありがとうございます。やはり今回はGA-Kプラットフォームのリヤまわりを改良したこともあり、アブソーバーを最適に配置して、効率よくシッカリと減衰をとれるようにしました。そのことで素性がよくなり、ポテンシャルも広げられ、乗り心地を犠牲にせずともクルマを意のままにコントロールできるチューニングができました。

----:従来の「RX450h」のF SPORTに較べると遥かに洗練された乗り味ですね。見た目のヤル気満々度もやや抑えられていて……。

大野CE:あはは。

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----:グレードの中でもし大野CEのオススメというとどれになるのでしょう?全部かもしれませんが。

大野CE:お客様がどうお使いになりたいかで準備させていただいていますが、やはりジェントルな質感の高い走りをという方にはPHEVの「RX450h+」、よりスポーティにガンガンとという方は「RX500h」。それと「RX350」もクルマが軽いので爽快な走りができ、今回はフルタイム4WDにしてあり、2.4リットルターボはコントロール性にも優れています。まあ走りに関しては、基本的には全部同じように意のままにコントロールできるようにチューニングはしています。どれも完成度が高く、どれ?と訊かれたら“全部”とお答えしています。

----:当然ですよね。ありがとうございました。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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