【ダイハツ タント 改良新型】積載テトリスをやりやすく…商品企画[インタビュー]

ダイハツ・タントファンクロス
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マイナーチェンジしたダイハツタント』。標準車と「カスタム」仕様に加え、アウトドアの様々なシーンで活躍する「ファンクロス」仕様が追加された。このクルマがなぜラインナップされたのか、そのポイントなどを商品企画担当者に話を聞いた。

◆タフトとアトレーとファンクロス

---:今回の商品改良に伴いタントファンクロスが追加されました。今回なぜ設定されたのでしょう。

ダイハツ営業CS本部国内商品企画部主任の岩舘朋子さん(以下敬称略):2014年に『ウェイク』という遊べるスーパーハイトワゴンを市場に投入して、その後各メーカーが追従してきました。その結果としてウェイクが属する市場はどんどん拡大していっています。

さらにキャンプブームも盛り上がっていますよね。また、軽自動車だけでなく上級車を見ても、やはりSUVのブームがあることから、(RV系の市場は)かなり堅調に伸びていますし、この先もより拡大が見込めるでしょう。そこで、この市場のニーズにマッチしたクルマを投入することで、お客様に喜んでいただこうと考えたのです。

---:それはタントでやるべきなのでしょうか。

岩舘:法規対応の関係でウェイクが生産終了したタイミングもありましたので、何かしら別の形でお出ししないといけないという状態でした。一方で昨年末に『アトレー』が、荷室をフルに使える遊べるクルマとしてラインナップできました。そういうラインナップの状況を踏まえると、残るはアトレーでカバーできない、普段使いもできて、遊びにも使えるクルマ。それをどういう形でご提供するのがダイハツとしては1番良いかを考えたのです。

そうすると、最新のプラットフォーム、最新の安全性能を確保できていて、広々とした室内空間を使えるタント。これをベースにやるのが1番いいだろうと判断しました。そうすることで、アトレーとの合わせ技で、全てのニーズに対応してけるのです。

ダイハツ・アトレーダイハツ・アトレー

---:タントは標準車とカスタムの2機種があります。そこにさらにファンクロスを追加するというのは企画する上で大変だったのではないですか。

岩舘:大変でした(笑)。ただ、もともと2019年のモデルチェンジを考えているときからやりたいと個人的には思ってましたし、当時担当していた開発責任者ともやりたいよねという話はしていました。

今回は、カスタムもファンクロスのどちらも大規模な開発になりましたので、社内でも本当に両方やるのか、どっちかではダメなのかという話も結構あったんですね。ダイハツのフラッグシップ、大切なタントということでやらねばならないという気持ちに会社全体としてなっていきましたので、デビューさせることができました。

---:そして、タフトとアトレーとファンクロスの3本柱でSUV系は面で押さえられるという戦略ですね。

岩舘:はい。そうですね。

ダイハツ・タントファンクロスダイハツ・タントファンクロス

◆とにかく床はフラットに

---:今回、ファンクロスを出すにあたって実現したかったことは何でしょう。

岩舘:荷室がレジャーシーンできちんと使えるようになっているということですね。それと、エクステリアデザインも含めて、アウトドアに行くときのムード、気分を盛り上げてくれるという、楽しさを演出できるようになっていること。この2つです。

そこでまず、キャンプシーンできちんと使えるというのはどういうことだろうと、キャンプ場に行って、クルマを使ってキャンプをされる方の観察をしました。そうすると、結構細々したキャンプ道具、ランタンですとか、バーベキューに使う道具を大きいコンテナボックスにたくさん積んで、それをどんどん上に積み上げて満杯にして行くんですね。それを積載テトリスと呼んだりしているんですけど、そうするためには、土台の床、荷室面がフラットじゃないとしっかり積めないわけです。

軽の限られた荷室の中で、高さ方向までしっかり使ってもらうためには、やはり床はフラットというのが大事なのです。さらに床下収納など2段になっていると、下のスペースもしっかり使い切れるところにもこだわっていました。そこで、レジャーシーンでもしっかり使える、レシャーの荷物もしっかり積んでいけることを考え、タントの荷室にそのような構造を取り入れたのです。

---:そのためにフロア周りの設計を変更したのですね。

岩舘:はい、キャンプシーンでの使い方を見ると、とにかくフロアは平らになって、かつ2段になるなど、この軽の狭い密室を縦方向にしっかり使い切るにはどうしたらいいかを考え抜いて、それをやりたかったというのがありました。

もともとのシートですとチルトダウン方式ですので、座面が一緒に沈み込んで低い荷室面はできるのですが、後部座席のシートクッションの厚みなどで、どうしても斜めの面になってしまうんです。ですのでフロアの構造から変更するしか平らにする方法はないということだったのです。

では、カスタムと標準車といったレジャーシーンを意識していないクルマはどうなんだということなんですけれど、これもスーパーハイトワゴン系をいまお使いになってるお客様に幅広く調査をしました。マイナーチェンジ前の元々の荷室と、新しい2段になる荷室とで確認したところ、こちらの方が良いという評価が非常に高かったのです。その理由は、普段、頻繁に荷室を使われる方がどういうシーンで使うかというと、スーパーとかでお買い物などのときで、その際に平らな方が積み下ろしがしやすいですし、ちょうどフラットにした時の高さが、スーパーの買い物カートと同じぐらいの高さにしていますので、そこからの積み替えもすごくしやすいように配慮しているのです。

また、荷室に置きっぱなしの荷物、たとえば傘や取り扱い説明書を置いている方もいます。新しい荷物があるときはその上にぼんぼん重ねたりすることがあるんですね。そういうときに、2段階になっていれば下側に常に置きっぱなしのものを入れて、上側は新しく積む荷物を置くことで、荷物を積み込みやすくなり、普段の使い勝手が非常に良くなるようになりました。

ダイハツ営業CS本部国内商品企画部主任の岩舘朋子さんダイハツ営業CS本部国内商品企画部主任の岩舘朋子さん

---:ファンクロスはエクステリアにもかなり手を入れていますよね。

岩舘:まずはアトレーとの対比にもなるのですが、アトレーは割と質実剛健で真剣にキャンプをする方というイメージです。一方ファンクロスは割とアウトドアのムードも含めて楽しむ、あるいはファッションだけでも楽しめる方を想定し、気持ちが盛り上がる、テンションが上がるみたいなところを対比して作っています。

というのも、アトレーに比べると、やはりこちらの方が普段使い、日常での買い物や、通勤、送迎などの使い勝手を優先される方が多いからです。後部座席に人がしっかり乗って快適に過ごせることを優先される方にお選びいただきたいクルマなので、1泊2泊みたいにがっつりしたキャンプというよりは、デイキャンプ、プチキャンプみたいなシーンを想定しています。あるいは、まだキャンプを始めてない方にも、このクルマを買ったことをきっかけに、キャンプなど行動範囲を広げるきっかけになれば嬉しいですし、多くの方がこのクルマを使って楽しい気分で、遊びに使っていただきたいという思いを込めています。

ダイハツ・タントファンクロスダイハツ・タントファンクロス

◆ミラクルオープンドアはキャンプでも強みに

---:ウェイクが出て以降、競合系でちょっとアウトドアに似合うタイプが出てきています。それらと比べてファンクロスが勝っているのはどういうところでしょう。

岩舘:やはりミラクルオープンドアですね。大きく開きますのでどんなものでもボンボン置けますし、キャンプシーンであれば、そこにアウトドアタープをつけてそのままテントにもなります。やはり室内をそのままキャンプ場とひと繋がりできる空間として使えるところが大きな我々のポイントです。

---:しかもルーフレール部分は補強されたそうですね。そうして、ミラクルオープンドアを全開にして、フロアに座るとちょうどいい高さになりそうです。

岩舘:もうそのまま屋根付きのベンチになります。

---:カラーリングも特化していますし、ホイールも変更されているようです。

岩舘:はい、ホイールはタフトのものです。ボディカラーも、タフトの人気のアースカラー3色を全て採用しました。

---:シートの柄もタフトのデザインをベースにして縮尺変えたそうですね。

岩舘:目指す方向が割とタフトに近かったのです。いままでのタントのお客様は標準もカスタムも女性が中心で、より好評価をいただいていたんですが、今回はいままであまりお選びいただいていない男性の方を意識してデザインしました。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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