プジョーの新型『408』はスタイル重視の「中間ジャンル」なのか? セダンでもSUVでもない新しさ

プジョー 408 新型
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新型『408』公式ワールドプレミアの前日、プジョーは新型408のプレビューと開発メンバーへの質問セッションを、オンラインにて開催した。

革新性のショーケースとなる『408』

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登壇者は初代『208』、『2008』の開発プロジェクト、つまりi-コクピットの市販モデル導入をまとめ上げた後、ブランド戦略を経て昨冬よりプロダクト・ディレクターに就任したジェローム・ミシュロン氏、そして長らくアドバンスト・デザインに籍を置き『E-レジェンド』などコンセプトカーを手がけた後、プジョーのデザインチーフに就任して2年が経過したマティアス・オサン氏(文中これより敬称略)らが、質問に答えた。

セッション開始前に、プジョーの現CEO、リンダ・ジャクソンが語ったところによれば、408は、212年の長い歴史をもつプジョーにとって、その革新性のショーケースとなるモデルだという。3ケタで“4”で始まる車名といえば、直近では『407』まで続いていた伝統の4シリーズを思い出さない訳にいかないが、408は伝統的なセダンではない。

大径ホイールを履きこなしつつルーフ高が抑えられたサイドからのシルエットは、ステランティスの同門ブランドであるシトロエン『C4』を彷彿させるところもある。が、308というハッチバックをベースに、これまで例のないウォリアー的シルエットのファストバックである点に、408の新しさがある。

その新しさとは、そのまま現在のプジョー・ブランドの3本柱であるところの、「アリュア(独特の雰囲気を備えている様子)、エモーション、エクセレンス(卓越)」を体現する一台であると、ジャクソンは強調する。彼女いわく、アリュア(仏語のアリュール)とは人々の欲望に火をつけるものであり、プジョーでいうエモーションとはドライビングに結びついており、408は彫刻的なボディワークに代表されるように、プジョーの卓越そのものだという。

ドライビング・ポジションは高く、でもSUVより低く

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最近のプジョーを見慣れている人々にとっても、408は新しく映るだろう。その理由をデザインチーフのマティアス・オサンはこう述べる。

「モダンでオープンマインドなカスタマーに向けた、これまでにない新しいシルエットのプジョーを具現化するには、新しいデザイン・ランゲージが要りました。その特徴とは、今だかつてなかったほど猫科的なプロポーションでありながら、ドライビング・ポジションは高く、それでもSUVより低く、アスリートであるという印象をもたせることでした」

地面を力強く掴むような四股を強調するのは、プロポーションだけではない。ホイールには幾何学的な独特のパターンを採用。静止状態は無論、走行中も目を引く工夫となっている。またフロントグリルのパターンは、エフィシェンシー志向だが同じファミリーといえる308や3008と異なり、バンパーから上方へ放射状に現れるような意匠で、薄いLEDヘッドランプや、おなじみ牙状のデイランニングライトや3本爪のようなリアコンビランプが採用されている。インテリアについても従来的なクローム装飾は無く、アルカンタラのような素材感の良さにこだわりつつ、エルゴノミーやクオリティ、実用面においても新しいステップに踏み出しているという。

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しかも408はフランス車どころか欧州車としては珍しく、すべてが8速AT仕様となるという。パワーユニットはハイブリッドがPHEVの180psと225psの2種類。ガソリンも215psと130psの2種類で、前者までが直4の1.6リットルツインスクロールターボで、後者は直3の1.2リットルターボであることは旧PSAグループのセオリー通り。しかしディーゼルは用意されず、308ハッチバック同様、BEV版が計画されているという。

並外れたモダンさを、Cセグメントとして提案する

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プロダクト・ディレクターのジェローム・ミシュロンは、408の開発要件を次のように語る。

「並外れたモダンさを、Cセグメントとして提案すること、308ハッチバックと3008の間でトップレンジとなること、それが408の目指したところです。伝統的なサルーンを作りたくはなかった。それらと比べて斬新であるのは当然で、SUVはすでに珍しいものでなくなった以上、Cセグメントに対するカスタマーからの新たな期待が興りつつある。そうした要請に応えるには、SUV特有のアイポイントの高さによる守られ感は保ちつつ、コンパクトカーらしいアジリティ、安全性、ファンを届けられるよう、変化を求める層やDセグから降りてくる層にも、これまでにないモダンな経験をもたらすこと。効率に優れていながら質感の高い、しかも責任感あるエモーショナルなモデルであること。それがダイナミックなファストバックであり、車好きであり続けられるための一台ということです」

全長4.7m弱のボディはシルエットも特異だが、前後バンパーからフェンダー、両サイドモールはあえて黒いウレタンモールドという、SUVライクなスポーティさも異色。対してコンパクトなステアリング向こうに3D表示のメーターパネルを覗くi-コクピットをはじめ、インフォテイメントを司るi-トグルやドイツAGR認証を得たエルゴノミー重視のシートといった内装は、308GTにほぼ準じるとみていい。一方で5基の視認カメラと9つのレーダーを備え、ナイトヴィジョン機能を含めADAS機能も充実させているとか。

スタイル重視の「中間ジャンル」なのか?

従来型のプジョー『408』従来型のプジョー『408』

過去にプジョーでは、ハッチバックをベースにした3ボリュームといえば、『205』から派生した『309』や、PF2時代の中国市場向けコンパクトセダン、『301』があった。だが408はEMP2エボ3という最新のプラットフォームに基づき、スタイリッシュなクロスオーバー・ファストバックという新ジャンルとして308と3008の間に割って入ったことで、性質が明らかに異なる。

アウディが『A6』と『A8』の間に『A7スポーツバック』を、あるいはBMWが『5シリーズ』と『3シリーズ』の間に『4シリーズ・グランクーペ』を、あるいはポルシェが『カイエン』と『マカン』の間に『カイエン・クーペ』を設定したように、上のセグメントで起きていたスタイル重視の中間ジャンルなのか?

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無論、そうした一面もあるようだが、408のラゲッジ・コンパートメントが536リットル~1006リットルの大容量に及ぶことを鑑みれば、やはりプジョーは「実用ありきのスタイリッシュさ」に忠実であり続けているといえる。スタイリングやデザイン面で、またはラインナップ内でもジャンルとしても斬新なようでいて、じつは従来から蓄積されたベースや手法を用いながら、まるで異なる一台として巧く提案するのが、プジョーらしさでもある。

ちなみに408の生産はフランス東部のミュールーズ工場、および中国は成都でも行われる予定という。本格的なデリバリーは、来年前半になるようだ。

《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

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