【フィアット 500e】500を買ったらEVだった…ブランドマネージャー[インタビュー]

フィアット 500ファミリー
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ステランティスジャパンはフィアット500e』の日本導入を発表した。そのターゲットユーザーは大きく3つあるという。

◆イタリアはトリノ生まれ

フィアット 500eは現在販売されている『500』と同じように見えるが、じつは若干サイズが違っている。全長は6cmほど長くなり、全幅は約3cm広く、全高も1cmから1.5cmほど高くなった。それでも全長は3.6m、全幅も1.7m弱と、「完全に日本の市場にマッチしたディメンジョンを持ったクルマだ」と述べるのは同社マーケティング部プロダクトマネージャーの生野逸臣さんだ。

ステランティスジャパンマーケティング部プロダクトマネージャーの生野逸臣さんステランティスジャパンマーケティング部プロダクトマネージャーの生野逸臣さん

電池総電力量は42kWhで118psを発揮。航続距離はWLTCモードで335kmである。生野さんは、「500eは電気自動車だが、加速が良いからとフル加速するようなクルマではなく、あくまで気持ちよく乗ってもらうことを考えた結果」とバッテリー容量が他よりも若干小さいことの理由を語る。

導入される車両はハッチバックとルーフが開くOpenの2種類で、本国にある観音開きタイプのドアを備える3+1は、左ハンドル仕様しかないため導入されない。

グレードは「Pop」、「Icon」、「Open」の3種。PopとIconは大きくインテリアが違っており、Popはダッシュボードがボディカラーと同色で、シートはファブリック。IconとOpenはエコレザーと呼ばれるベージュのシートを採用。そこにはフィアットロゴがあしらわれている。インパネは、「イタリアの伝統工芸手法であるイントレチャートと呼ばれる、革を細かく切り紐状にして編んだものを模したものを採用」。

フィアット 500eフィアット 500e

ステアリングはこれまでの3本スポークから2本スポークへと変更された。これは1957年のヌォーバ500であったことから、「あえて復活させて、このクルマが“500”であることを、形として認識出来るようデザインされた」とコメントする。

フィアット 500eフィアット 500e

また、前述のイントレチャートのように直接的にイタリアを表現している個所がいくつもある。例えばダッシュボードにあるスマートフォントレイにはトリノの街並みを高台から見た様子が描かれているほか、ドアのアシストグリップの中にはヌォーバ500の絵とともにメイドイントリノと書かれている。「このクルマ自体がフィアットの本拠地であるトリノのミラフィオリ工場で作られていることを直接的に表現しているもの」と述べ「シートにフィアットと書くことも含め、これまでのフィアットブランドではあまりなかった手法だが、これらをしっかり見せることによって、このクルマがイタリア車であるということを“120%”表現しているのがポイントだ」とあくまでもイタリアはトリノ生まれであることを強調する。

フィアット 500eフィアット 500e

◆車両が接近するとイタリア人が作曲した音でわかる

エクステリアで印象的なのは「ヘッドライトだ」と生野さん。デイタイムドライビングライトはボンネットに仕込まれており、「かなり手間のかかった手法だ。当然ライトを光らせるために配線を通さなければいけないので通常の自動車メーカーはなるべくコストを気にして避けるものだが、デザイン国イタリアなので、こういったところには妥協はない」という。

フィアット 500eフィアット 500e

もうひとつ面白い仕掛けがある。電気自動車は走る時に、人にクルマが近づいてくることを知らせるために音を鳴らす必要がある(車両接近通知装置)。500eは、「ニーノ・ロータによって作曲されたオリジナルサウンドが聞こえるようになっている」。また、ガソリン車でいうところのイグニッションキーをオン・オフの際にも、「ちょっと心を落ち着かせるようなサウンドも作り込んでおり、目だけではなく、音も含めて五感で楽しくさせるような設計がなされている」とその特徴を説明。

そして生野さんは、「このクルマを電気動車として売りたいのではない。あくまでもこのクルマは500であり、500の可愛さ、美しさに共感されるお客様にぜひ乗っていただきたい。その結果としてこのクルマは電気自動車なので、皆さんに乗ってもらえれば自然とサスティナブルな社会が実現出来る。これが我々の目指すゴールだ」と語る。

◆ターゲットは若い人

では、そのターゲットユーザーはどういう人たちなのだろうか。ここからは同社マーケティング部ブランドマネージャー フィアットの熊崎陽子さん(以下敬称略)に聞いてみた。

ステランティスジャパンマーケティング部ブランドマネージャー フィアットの熊崎陽子さんステランティスジャパンマーケティング部ブランドマネージャー フィアットの熊崎陽子さん

----:ターゲットユーザーはどういった人たちを想定していますか。

熊崎:EVなのでいま一つ見えていないところはありますが、3つほど想定しています。具体的には、まず20代から30代の若い人たちです。今回は全てリース販売なのですが、その中にサブスクリプション型リースのFIAT ECO PLANを用意しており、このターゲットでもあります。それから40代のカップル。そして30代、40代の女性やシングルです。

----:全体として若めの傾向にあるようですね。

熊崎:そうですね。ただ、EVモデルのユーザープロファイル見ると結構年齢層は高いんです。なのでEVモデルというセグメントでは、多分50代あたりがターゲットになってくるでしょうし、500eの販売台数を伸ばしていくためにはターゲットを広げていかないといけません。500eはシティカーとして、コンパクトカーとして完璧ですし、唯一のコンバーチブルEVモデルもあります。このサイズなどを考えると年齢云々ではなく、シティカーとして使う人が1番のターゲットかなというのはありますね。

その一方で、私たちが社内でディスカッションしている中で、フィアットがEVを出すというよりは、500が生まれ変わって、それが“たまたま”EVだったと考えていますので、500ありきです。従って既存の500オーナーはすごく大事ですし、彼らがEVになったことで離れていくことがないようにしないといけませんし、これはとても大事なことです。

また、電気自動車はストレスなくすぐにトルクが出ますし、スムーズな走りをします。実は電気自動車は、家の中に置いておいてもいいようなファッションアイテムであり電気製品だと思います。排ガスもないですし、臭いもないですから。そういうクリーンなものだということが結構ありますので、そこは強調していきたいですね。

----:音がない、振動がないというのは確かに電気自動車のメリットです。しかし、500のユーザーは、音とか振動がたまらないと逆のことをいう人が多いですね。

熊崎:新しいものが出た時は、これまでのものの方が良いと思ってしまいがちです。デザインも新しいものが出ると、前の方が良いなと思ってしまいますけど、見慣れると新しい方が良いとだんだんなってくでしょう。それがデザインの力です。私は、電気自動車もそうなのかなと思っています。電気自動車を買う方は、EVモデルだから買わなきゃいけないのか、あるいは地球のためにEVを私は買うなのか、そのどれかはわかりませんが、500eのお客様は、500の最新モデルだから買いたいという人だと思っています。ですから別にEVを意識したわけではなく、500のストーリーに共感して、私もこのクルマのオーナーになりました、そうしたらたまたまEVだったという人が増えてくといいなと思ってます。

でも1番大事なのは繰り返しますが、やはり500のオーナーなので、そのオーナーたちがハッピーになれるようなことをしてかないといけません。私たちは500のオーナーを大事にしてきたいととても思っています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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