【マツダ ロードスター 新型試乗】新技術「KPC」の威力抜群!「990S」&新旧比較…中村孝仁

マツダ ロードスター Sレザーパッケージ
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誕生からすでに7年が経過しているマツダ『ロードスター』に試乗した。2021年12月16日に商品改良が施されたモデルだ。今回の商品改良で目玉となっていたのは、特別仕様の「990S」と呼ばれるモデル。数値が示すのは車両重量である。

そんなイメージが先行してこのクルマに対する期待度は非常に高かった。ところが実際に話を聞くと、日本のカタログ表記上は四捨五入で表記されるために、これまでのSグレードでも表記上は990kgであったという。では改めて特別仕様車として990Sを標榜した裏に何があったのか。

それはレイズのホイールを装備して1本あたり800gほどの軽量化を施し、さらに径は拡大しているが重量的に軽くなったブレンボ製のブレーキキャリパーを用いたことで、表記上は同じ990kgながら更なるバネ下重量の低減を図ったとのこと。ここまで行くともうレーシングカーの世界といっても過言ではない。マツダの拘りを感じさせてくれた。

マツダ ロードスター 990Sマツダ ロードスター 990S

新技術:キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)

それ以上に今回のロードスターで特筆すべきことは新たな技術、キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)というものを採用している点だ。この技術の導入はハイスピードコーナリング時に、より安定した旋回姿勢を実現して、言ってみればドライバーの不安感を解消するところにある。

KPCは簡単に言うとコーナリング中に発生するリア内輪のリフトを制御してロールを軽減し旋回姿勢を安定させるというもの。具体的には左右後輪の回転差で旋回を検知して軽く内輪にブレーキをかけてリフトを抑える仕組みで、KPCによる重量増加は1gもないという。

このほか990Sは専用のチューニングが施されていて、ダンパー、コイルは専用チューンだし、電動パワーステアリングのチューニングも変えているそう。そしてエンジンのECUにも手が加えられているというように、かなりこのクルマ独特の特性を発揮されるようにしている。

このKPCは全モデルに装備されているそうで、今回は990SのほかにSレザーパッケージと「ロードスターRF」のRS、3台を試乗した。しかもそれらの旧型との比較試乗である。

KPCの威力抜群!新旧比較試乗

マツダ ロードスター Sレザーパッケージマツダ ロードスター Sレザーパッケージ

私が最初にチョイスしたのはSレザーパッケージ。このクルマは旧型比でKPCの有無以外に差はない。快適なワインディングを堪能できる試乗コースはロードスターにはうってつけ。このSレザーパッケージと軽量な990Sとの差は、リアスタビライザーの有無と、剛性アップのためのセンタートンネル下のブレイスが990Sの場合省かれていること。というわけで勝手に私は990Sのシャシーを「蒟蒻(こんにゃく)シャシー」と呼ばせていただく。その蒟蒻シャシーはNDロードスター独特のひらり感を演出し、ある程度のロールを許容してきたのだが、KPCによってそのロールの発生を少し抑えようというもの。

このスタビライザーおよびブレイスの有り無しは、乗り手による好みの問題といっても過言ではなく、ズバリ言うなら私個人はやはりリアにスタビが付いていた方が好みである。これが無いとまさに60年代のスポーツカーのようで、一番近いのはやはりロータス『エラン』だろうか。

で、まずはスタビとブレイスの付いたモデルの試乗となったのだが、敢えてコーナー途中から強めにアクセルを踏み込んでリアにストレスをかけたり、コーナー進入時に少し深めに進入して転舵を早めに行ったり色々と試してみたが、その挙動の安定感は抜群であった。そしてすぐさまこのKPCの付かない旧型に乗り換え。そこで驚くべき発見があった。コーナ―深めに侵入した時のKPC無しのクルマでは狙い定めて転舵したはずのステアリングが少し切り過ぎの印象で修正を強いられたのである。これは何度同じことを繰り返しても結果は同じであった。内輪の浮揚感も顕著に異なった。

試乗後に操安性能開発部のエンジニアとお話させていただいたが、ステアリングフィールの違いはまさにKPCから来るもので、それ以外の部分は全く変わっていないということなので、改めてKPCの威力を実感した次第であった。

990SよりSレザーパッケージにレイズとブレンボ装備がいい?

マツダ ロードスター 990Sマツダ ロードスター 990S

そしてお目当ての990Sである。実は先に乗ったSレザーパッケージとの重量差は30kg。もし990Sと同じレイズのホイールとブレンボキャリパーを装備した場合、その差は20kgとなる。また、i-stopとi-ELOOPが装着された場合はその差が50kgとなる。そして990Sにはi-stopとi-ELOOPの設定がない。この辺りを考慮すると、極限まで軽くした990SよりSレザーパッケージにレイズとブレンボを装備した方が良いように思えてしまう自分がいた。

蒟蒻シャシーのひらり感はやはりすごい。元々比較的コーナーの立ち上がりで沈み込みが大きな方なので、KPCによってそれが抑えられているとはいえ、個人的な感想としてはKPC有る無しでそれほど大きな違いには感じられなかったし、EPSの変化も大きな差ではなかった印象であった。もっとも、これを先に乗っていれば顕著な違いと感じられたのかもしれないが、如何せん人間は直前に乗ったクルマの印象が強いので、990Sと旧型の差が大きく感じなかったのかもしれない。

400万円以下で買えることを手放しで褒めたい

マツダ ロードスター 改良新型マツダ ロードスター 改良新型

最後のRFは2リットルエンジンということもあってアベレージスピードが10%は高く、車両も5台目6台目の試乗というお疲れムードも手伝ってひたすらドライビングを楽しんでしまった。だから正直言うと新旧の違いは分からなかった。とにかくロードスターのどれに乗っても何を買っても、ドライビングを楽しみたいというユーザーに外れはない。

因みにロードスターは7割のユーザーがMTをチョイスし、ATは3割という普通のクルマとは完全に逆転した現象を起こしている。これほど楽しいクルマがどんなに高いモデルでも400万円以下で買えるというのは手放しで褒めたいと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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