北海道札幌市を走るタクシーの、実に69.5%が装着しているというブリヂストンのスタッドレスタイヤ『BLIZZAK(ブリザック)』調査結果はこちら
2021年9月1日、そのブリザックシリーズの11代目にあたる『VRX3』の発売が開始された。
新商品のトピックは、従来のVRX2で培ったスノー、ドライ、ウエット路面をしっかりと走る性能はもちろん、転がり抵抗や静粛性レベルも維持しながら、『アイス性能』と『効き持ち』、『ライフ』をさらに向上させた“史上最強のブリザック”として進化させた点にある。ブリヂストン BLIZZAK VRX3 サイドウォールとロゴマーク
今回はそんなVRX3の氷上性能を試すべく、アイススケートリンクで試走する機会を得た。果たして、新技術はどのような進化を実感させてくれるのか気になるところだ。
こんなにも違う発泡ゴムと非発泡ゴムの吸水差
VRX3の設計において注目したいのが、ブリヂストン独自の“発泡ゴム”と接地面に施される“パタン技術”。氷上を走る際にスリップする原因は氷の路面とタイヤの間に生まれる水の膜によって接地性が低下することが挙げられる。VRX3の場合、すべりの原因となる水を制するため、新しいトレッドパタンを採用。ブリヂストン BLIZZAK VRX3 発泡形状の進化でグリップ力が向上したフレキシブル発泡ゴム
接地面に水が流入するのを抑制し、主溝などに優先的に流す水路が設けられた。さらに、進化した発泡ゴムは円形の断面から楕円形の断面に変わったことで、毛細管現象により、水を吸い上げる効果を高めた。
今回の試走会ではユニークな試みとして、新発泡ゴムがそれぞれどんな効果をもたらすのかを体験するコーナーが設けられていた。先ずは後輪駆動のラジコン2台に新発泡ゴムと発泡させていないゴムをタイヤに巻いて、背中合わせで走らせて綱引きをさせてみる実験をすることに。右のラジコンに装着している新発泡ゴムに水をかけグリップ力を検証。
どちらのゴムもパタンにあたる溝は刻まれていないが、明らかに発泡ゴムを巻き付けたラジコンの方が前に出て行く力が強い。水を撒くとさらにそれは顕著に現れて、発泡ゴムが吸水効果を発揮することで、非発泡ゴムを撒いたラジコンを難なく引っ張っていく。ラジコンでも新発泡ゴムのグリップ力を実感できるとして驚く藤島知子
別のコーナーでは、発泡ゴムと非発泡ゴムのタイヤを履いて三輪車を自力で漕いでみることに。非発泡ゴムの三輪車は足に力を入れて漕ぐと、後輪がスリップし始めて前に進まない現象が起こるのに対し、発泡ゴムのほうは同じくらいの力で漕いでいったときにグリップが得やすく、しっかりと前に進んでいくイメージだ。ブレーキの効き具合も発泡ゴムの三輪車の方が制動距離が短いことが足裏の感触で伝わってきた。ブリヂストン BLIZZAK VRX3に採用された新発泡ゴムを巻き付けたタイヤを三輪車で試走する藤島知子
さすが!グリップが回復する感触は安心感に繋がる!
そして、いよいよブリザックを装着したトヨタ『プリウス』で試走する。先ずは1988年当初の初代ブリザックを再現するため、手彫りでパタンを削り出したタイヤをプリウスに装着して試走。初代ブリザックは技術者が手彫りでトレッドパターンを再現
走り出しは丁寧にアクセルを開けていけばイメージしたグリップが得られるものの、旋回する場所では11km/h程度の車速を出した時点で滑り出し、イメージよりもタイヤが辿るラインが外側に膨らんでいってしまう。氷の上だけに、滑って思うように走れなくなることを想像すると、車速を高める気持ちになりにくい。ブリヂストン 初代BLIZZAKで制動ブレーキを試す
次に、VRX3を装着したプリウスに乗り換えて同じように走行する。すると、さっきよりもグリップ感が得やすく、駆け出しで車速が高まるタイミングが早いことに気づく。直線路では時速15km/hまで高めて急ブレーキを掛けてみると、路面を捉える力が得やすい印象。ブリヂストン BLIZZAK VRX3 で制動ブレーキを試す
旋回時は、初代のブリザックの時よりも3km/h程度高い車速で走らせても安心感があり、パイロンに沿って小回りができる安心感が得られた。特筆すべきは滑った直後にグリップが回復する感触が掴みやすかったこと。グリップの限界付近の動きが穏やかなので、ドライバーがハンドルやペダル操作を唐突に操作する気持ちに駆られないぶん、結果的に車体が挙動を乱しにくいのではないかと感じた。ブリヂストン BLIZZAK VRX3 で旋回性能を試す
ゴムの硬化を抑制するロングライフ効果も期待大!
リアルワールドで走ることを想像してみると、予期せず出くわすアイスバーンや日中の陽射しで解けた水が朝晩の気温低下で凍る交差点、除雪した雪の塊が邪魔をして突然道幅が狭くなっている道など、ドライバーにプレッシャーを与えるシーンはさまざまだ。VRX3の進化はそうした場面に出くわした際に安心感が高まっているのではないかと思う。ブリヂストン BLIZZAK VRX3を装着したトヨタ プリウス
担当者に話を伺ってみたところ、ブリヂストンの独自技術である発泡ゴムの低温下での柔らかな特性は轍(わだち)状に凍った路面でも、接地しやすい効果をもたらしてくれるそうだ。多様なリスクが潜む環境で有り難みを実感できる場面も拡がっているのではないかと思う。ブリヂストン BLIZZAK VRX3 で旋回性能を試す
さらに、VRX3の柔らかさを維持する新素材の採用は、経年劣化の原因となるゴムの硬化を抑制する効果も期待できる。スタッドレスタイヤの交換サイクルが長くなっている現実を受け止め、ユーザーの要望に応えようと進化しているのだ。ブリザックに信頼を寄せているファンの皆さんだけでなく、多くの人にも“新次元のプレミアムブリザック”の効果をぜひ試して欲しい。ブリヂストン BLIZZAK VRX3を装着したトヨタ プリウスと藤島知子
驚異的支持率を誇る最強スタッドレス BLIZZAK VRX3の詳細はこちら
藤島知子|モータージャーナリスト
幼い頃からのクルマ好きが高じて、2002年からワンメイクレースに参戦。市販車からフォーミュラカーに至るまで、ジャンルを問わず、さまざまなレースに参戦。2007年にはマツダロードスターレースで女性初のクラス優勝を獲得。現在はクルマの楽しさを少しでも多くの人に伝えようと、自動車専門誌、一般誌、TV、ウェブ媒体を通じて活動中。走り好きの目線と女性の目線という両方向からカーライフ全般をサポートしている。