【メルセデスベンツ Sクラス 新型試乗】羨望の的となることは間違いない…中谷明彦

今回は7代目となるメルセデスベンツの旗艦、新型『Sクラス』の試乗レポートをする。試乗車は「S400d 4MATIC AMGライン」というモデルで、Sクラスの中ではベーシックなグレードのモデルだ。

とはいえ、車両本体価格1293万円からという事で1000万円をオーバーする高級車であることに変わりはない。

「Sクラス」といえば、メルセデスベンツの中でも最上級に位置するプレミアムサルーンとして、日本はもとより世界中で非常に人気が高く、常に注目されている。この車がフルモデルチェンジを受けるたびに様々な革新的技術やデザインが取り入れられ、メルセデスベンツのイメージをいつの時代もリーダーとして牽引していることに間違いはない。

そして、今回もまた多くの技術的な革新が試みられている。

ディーゼル需要の高い日本にマッチしたモデル

エンジン型式OM656 を確認する中谷明彦氏エンジン型式OM656 を確認する中谷明彦氏
まず試乗したS400d 4MATICだが、エンジンは3リットル直6のディーゼルターボエンジンとなる。今後は電動化が重要視される時代になるために「S500 4MATIC」「S500 4MATIC ロング」の上級グレードには、3リットル直6のガソリンターボエンジンに「ISG(Integrated Starter Generator)」を組み合わせた電動化モデルもラインナップされている。

S500シリーズのガソリンISG搭載車には電動のターボチャージャーが搭載され、また電気系統には48Vのシステムが導入されるなど先を見越したシステムとなっている。が、S400dシリーズはクリーンディーゼルターボエンジンが搭載されているのみで、それ以外はISGなどの電動化技術は採用されていない。そういう過渡期にある中でディーゼル需要の高い日本国内向けとしてマッチしたモデルであるといえる。

トランスミッションは全車に9速のオートマチックトランスミッションを搭載しており、全天候型フルタイム4輪駆動システムの4MATICも全車共通に採用されているものだ。またサスペンションにはエアーマティックサスペンションを搭載して、ドライビングモードによりコンフォートやスポーツ、スポーツ+Sなど走行状況に応じたサスペンションの設定がなされている。

メルセデスベンツ Sクラス 新型(S400d 4MATIC AMGライン)メルセデスベンツ Sクラス 新型(S400d 4MATIC AMGライン)
S400d 4MATIC(AMGライン)の車体寸法は、全長が5210mm、全幅1930mm、全高1505mmと全長は5mを超え全幅も2mに近い数値となっている。またホイールベースは3105mmと3m以上あり、標準ボディとはいえ従来のロングホイールベースモデルに匹敵するような車体寸法となっている。その結果、居住空間は広く、特に後席の足元スペースなども余裕を感じられる寸法となっている。

このように大きな車体寸法を採用しているが、今回全モデルに採用されている4輪操舵システム(4WS)の採用により、60km/h以下の低速時には後輪が前輪と逆方向の逆相に最大4.5度切れることによって最小回転半径が5.4mと非常に小さな旋回半径に抑えることが出来ている。また同相方向には最大で3度切れるシステムとなっており、高速時の旋回性の安定性を高め、またレーンチェンジなどに対する車体の追従性も高められているといえる。

3Dを感じにくかったのは私だけ?

メルセデスベンツ Sクラス 新型(S400d 4MATIC AMGライン)メルセデスベンツ Sクラス 新型(S400d 4MATIC AMGライン)
コックピットに乗り込んでみると、液晶の大きなパネルを採用した新しいインフォーテンツが目を引く。テスラ等、電気自動車などに多く採用されているこういった12.8インチの大型メディアディスプレイが車体の様々な情報をタッチパネル方式で呼び出せ、ナビゲーションなども非常に大きな画面として使用することができる。

運転席前には「3Dコックピットディスプレイ」が採用されていて、液晶パネルながら立体的にメーターやナビゲーション情報をドライバーに表示している。ただこの3D効果はあまり高いとは言えず、人によっては例えば私自身がそうであるように3Dによる立体感というのはほとんど感じることができなかった。逆に年齢の若い編集部員などは非常に奥行き感のある3D映像を見て取れたようだ。

またすでにメルセデスベンツ全車種が採用している「MBUX」という車とのコミュニケーションツールも装備されていて、さらには手をかざし動かすだけでモーションをキャプチャーしてサンルーフの開閉ができるなどの新しい操作方法も取り入れている。

メルセデスベンツ Sクラス 新型(S400d 4MATIC AMGライン)メルセデスベンツ Sクラス 新型(S400d 4MATIC AMGライン)

静粛性、燃費性は高く「空飛ぶ絨毯に乗っているようだ」

実際にエンジンをかけて走行してみると、直6ディーゼルは非常に音が静かで振動もなく本当にそれはディーゼルエンジンであるかどうか疑わしくなるほどに滑らかな回転フィールになる。車外で音を聞いているとディーゼルだとわかるが、車内の静粛性は防音効果が高く非常に静かに保たれていた。

S400dは、走り始めから非常にトルクフルでガソリンエンジンに劣らない発進加速性能を引き出すことができ、また高速走行も時速100km/hでは9速ギアで1250回転ほどの低い回転数で巡航でき燃費性も高められている。9速のオートマチックはアクセル開度や車速、横Gなど様々な情報をフィードバックしてきめ細かに変速をして非常に滑らかでスムーズで常に最適なギアを選択してくれるのでドライバーの運転は非常に楽になっている。

メルセデスベンツ Sクラス 新型(S400d 4MATIC AMGライン)メルセデスベンツ Sクラス 新型(S400d 4MATIC AMGライン)
乗り心地は、まさに空を飛ぶ絨毯に乗っているようにしなやかで振動も少なく音も静かだった。ただランフラットタイヤを採用している関係で路面の継ぎ目や小さな凸凹などハーシュに関してはかなり敏感にそれが車内に伝わってくることが確認できた。

以前のメルセデスベンツ車など欧州車ではこうした小さなハーシュも徹底的に押さえ込まれる様、躾けられていたのだが、近年は高性能タイヤまたランフラットタイヤなどの標準化が進みこういうこの手のハーシュネスの押さえ込みには若干苦労している様子が伺える。

「レベル3」日本のモデルにはまだ採用されず

新型Sクラスはヨーロッパでレベル3相当の自動運転システムが搭載される予定というアナウンスがあったが、現状日本に入ってくるモデルにはまだそれは採用されていない。従来のクルーズコントロール、アダプティブクルーズコントロールとほぼ同等の水準のものが採用されているに留まっている。

このクルーズコントロールは、高速道路走行車線走行中に追い越しをかけることができる。ウインカーを出して前後に他車両がいないことが機械的に確認されれば自動的に前車を追い越すことができる。

ただその運用基準が見直され、国内専用の厳しいモードと改変されているために、以前のモデルのように合図を出せば直ちに追い越し操作をするという状況ではなくなった。この辺りは今後の自動運転化を見越して国内の様々な基準に準じ合わせ込まれていくといえる。

メルセデスベンツ Sクラス 新型(S400d 4MATIC AMGライン)メルセデスベンツ Sクラス 新型(S400d 4MATIC AMGライン)
注目の燃費だが、市街地から高速を走り、山道なども走って約300kmの走行距離で12.3km/リットルの燃費だった。これはWLTCモード燃費として公表されている数値に極めて近く、カタログ燃費の再現性が高いものであったということも分かる。

新採用のヘッドライトやボディデザイン、ラジエーターグリルの大型化など新型Sクラスは外見的にもアピールするものが個性的で、道行く多くの人々の注目を集めた。

新型Sクラスはこれからも、また次の電動化の時代へ向けても、メルセデスベンツのフラグシップカーとして多くの人々にとって羨望の的となることは間違いないだろう。

メルセデスベンツ Sクラス 新型と中谷明彦氏メルセデスベンツ Sクラス 新型と中谷明彦氏

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。

《中谷明彦》

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