AUTECHブランド車が、ハイブランドからのダウンサイザーに認められる理由とは?キックス AUTECHで検証

2021年3月3日より発売開始となったオーテックジャパンの新型車「キックス AUTECH」がいま、話題となっている。なんと、キックス全体の販売台数の10%を優に超えてきているそうだ。これは、AUTECH ブランド車において、これまでに類を見ない傾向だという。

オーテックジャパンの担当者によると、AUTECH ブランド車はベース車に比べ、国産の高級車やハイブランドの輸入車からの乗り換えが多いとのこと。ハイブランドからのダウンサイザーに認められる理由とは、どういったところにあるのか、キックス AUTECHを題材に徹底検証した。オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗

統一感あるデザインコーディネートは少数精鋭のオーテックジャパンならでは

神奈川県の茅ヶ崎市にある閑静な場所に本社をかまえるオーテックジャパン。オーテックといえば、湘南地域の空と海の青さを表現した、通称「湘南ブルー」のボディカラーが有名だ。この「湘南ブルー」とは、特定のカラーがあるわけではないそうで、個々のベース車に合わせて、選定しているそう。キックス AUTECHに採用されているのは、「ダークブルー(PM)×ピュアブラック(PM)」という2トーンカラー(PMはパールメタリックの略。カラーナンバーは#XJWでAUTECH専用色)。深く濃いブルーで、落ち着きと高級感のある色味だ。

ボディサイズは4330×1760×1610(全長×全幅×全高mm)、全長はベースのキックスよりも40mm伸びている。前後のオーバーハングにあるアンダースポイラーをデザインの特徴として目立たせたそうだ(主にリアが伸びている)。キックスが従来持っていた若々しいデザインに、専用メタリック調フィニッシュの、フロントリップスポイラー、ボディサイドプロテクター、リアバンパーまでつながったシルバーのラインによって高品質感もプラスされている。
オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗

ちなみにこのシルバーのラインは、海の波打ち際の「さざ波」をイメージしているそうで、AUTECH車が共通して持つアイデンティティだ。このキックス AUTECHでは、通常のキックスのドア部にあるサイドモールを無くし、それよりも低いボディサイドプロテクターが位置している。これによって、ローダウンしたような雰囲気となった。輸入車でよく見られるメッキ調にしなかったのには、メタル調塗装の方が光の反射具合がよく、シルバーラインをより強調できる、という理由だそうだ。

フロントバンパーに埋め込まれたブルーの専用シグネチャーLEDと、ドットパターンが入ったフィニッシャーも特徴的。このドットパターンは、海面に反射する太陽光を表した模様とのこと。「湘南」にこだわり、随所にそのエッセンスを取り入れた演出は、ブレがなくファンを虜にするだろう。
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足元には、ダークメタリックペイントの専用17インチアルミホイールを装着。他のAUTECH車のようにシルバーホイールにしなかったのは、サイドからみたときに足元をぐっと引き締める、という効果を重要視した、エクステリアデザイナーのこだわりらしい。

日産本体にも影響を与える?AUTECHデザイン

聞くところによると、キックス AUTECHの担当デザイナーは、エクステリア担当とインテリア担当の2名だけだそう(しかも30代と若い)。担当セクションが広い分、プレッシャーは大きいだろうが、全体のコーディネートを一人が一手に引き受けることで、統一感を出すことができる。少数精鋭のオーテックジャパンならではの長所だろう。オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗

よくよく見ていると、最近は日産車のデザインがAUTECHを意識したようなデザインに近づいている印象がある。確かに、昨年マイチェンしたエルグランドや、ベースのキックスも、どことなくAUTECHの香りがするフロントフェイス。仮にAUTECHをテストケースとして、日産がそのデザインを取り入れるとすれば、それはAUTECHとしても鼻が高いだろう。

輸入車コンパクトSUVにも負けない洒落た雰囲気のインテリア

インテリアでは、本革が使用された専用ステアリングホイールをはじめ、ダッシュボードにもブルーステッチが施されるなど、専用ブルーとブラックの組み合わせが多用されている。ベース車と比べて、なかなかジェントルで高級感ある仕上がりだ。輸入車のコンパクトSUVあたりにも負けない洒落た雰囲気をきちんと醸し出している。オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗

また、専用ブルーとブラックで彩られたレザレット(人口皮革)シートが秀逸だ。高級素材のアルカンターラに近い肌触りをしている。波目模様のシートクッションは、本革シートに比べて柔らかく、表面は「もちもち」とした触感がある。サポート性も高く、身体が「スポッ」とハマるような印象があり、使い込んでいくほど馴染んでゆく本革シートとは違って、最初から身体にフィットする。やさしさすら感じる良いシートだ。オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗

AUTECHロゴの入った、ブルーのフロアマットやラゲッジマットなどもオプションで用意されている。これらを取り入れることで、車内の雰囲気をAUTECHの世界観で統一することができる。

もはや手の加えようがない コンパクトSUVの見本のような走り

低速時の操舵力は適度に軽く、駐車場での取り回しも非常に楽だ。これはタイヤグリップの高さによるものか、クイック寄りのギア比によるものか、とにかく小回り性能が非常に良い。最小回転半径は5.1mと数値上は平均的なのだが、それ以上によく曲がる印象だ。これはダウンサイザーが、もっとも恩恵を感じるポイントだろう。オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗

また、e-POWERの滑らかさが実に印象的だった。セレナe-POWERとは違い、e-POWERと軽量なコンパクトSUVの組み合わせはこれまた絶妙だ。車速ゼロからの発進、緩加速、高速合流の強加速、高速巡行走行など、シーンを問わず、1350kgのキックスを軽々と走らせてくれる。

細かな段差で突き上げる衝撃はあるものの、クルマ全体が軽いことでコーナリングが実に気持ち良い。またe-POWERが発する音(モーター付近から聞こえるヒュイーンという音)も、心地良い音だ。電力供給のためにエンジンが始動した際も、エンジンノイズと振動が見事に遮断されており、走行フィールは上質だ。これならば、ロングドライブでもストレスはあまり感じないだろう。オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗

交差点やコーナーでのロールの量、ブレーキング時のピッチング、といったボディモーションも少なめで、安心感のある足回りだ。サスペンションのストロークがありしっかりと足が動くので、路面のギャップをわざわざ乗り越えてみたくもなる。ちなみに、サスペンションのダンパー特性やコイルスプリングに関しては、キックス本来の乗り心地やハンドリングが高いレベルで仕上がっているため、AUTECH操安担当エンジニアは、手の加えようがなかったそうだ。恐らく、より「走り」に特化した仕様は、NISMOによって実現されていくのだろう。

意外にも「日産車との喰い合い」はそれほどない

オーテックジャパンによると、AUTECHブランド車への乗り換え需要は、セレナやエクストレイルは上級車種(ラージクラスセダンやミドルクラスSUV)からのダウンサイジングが多く、ノートやリーフは輸入車(ミドルクラスセダンやCセグハッチバック)からの乗り換えが多いという。AUTECHブランドには、外部からの乗り換えを呼び込むだけの「強い魅力」があるようだ。オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗オーテックジャパン キックス AUTECH 試乗

キックス AUTECHは、1グレード(2WD)のみ、車両本体価格は税込311万4100円。ベースとなるキックスの「X」グレード(275万9900円)に対し、35万4200円高い値付けとなるが、専用のエクステリアとインテリアパーツに加え、専用17インチアルミホイール、さらにはベース車ではオプションのインテリジェント アラウンドビューモニターやインテリジェント ルームミラー、前席ヒーター付シート、ステアリングヒーターなども含まれると考えてみれば、後からカスタムしていくよりもはるかにリーズナブルであるし、満足度も高いだろう。キックス AUTECHは、キックスのフットワークの良さと上質な走り、そして、高品質なカスタマイズカーを求める方には最適な一台だ。キックス AUTECHと吉川賢一氏キックスAUTECHと吉川賢一氏

キックス AUTECHの詳細はこちら

撮影協力:FUTTSU BRISTOL HILL GOLF & RESIDENCE

吉川賢一|自動車ジャーナリスト
元自動車メーカーの開発エンジニアの経歴を持つ。カーライフの楽しさを広げる発信を心掛けている。 

《吉川賢一》

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