トヨタ自動車はこのほど、横浜市でSUV『ヤリスクロス』の報道向け公道試乗や担当エンジニアの取材会を開いた。ヤリスシリーズの開発責任者である「トヨタコンパクトカーカンパニー」の末沢泰謙ZPチーフエンジニアに、このクルマに注いだ想いなどを聴いた。

気になるのはどのタイミングで開発を決めたのかだが、末沢氏は「ヤリスの『GA-B』プラットフォーム開発において、ヤリスクロスも見据えた開発の承認を得た」と明かす。当時、SUVといえばガッチリした大振りタイプが主流で、「Bセグメントは少なく、欧州でのルノーの『キャプチャー』や日産自動車の『ジューク』くらいが、とりわけ女性に人気を得ていた」という。
◆ヤリスらしく運転が楽しくて燃費が良く、かつ最新の安全技術も

末沢氏が目指したSUVはこうだ。「SUVというと大きいイメージであり、レジャー用途で荷室が大きく、砂利道や林道などでも乗ることができる。そうした用途を満たしながら一番小さなサイズのクルマにしてお客様のニーズに応えたい。しかもベースがヤリスシリーズなので運転が楽しく、燃費が非常に良く、かつ多くの方が乗られるので、最新の安全技術もきちんと入れていく」。

◆HVはリチウムイオン電池への転換で燃費性能にも貢献

末沢氏は「バッテリーは小さく、軽くなっただけでなく、充放電の効率が良いのでアクセルを少し戻すと直ちに充電が始まる。その分、燃費性能にも貢献している」と解説する。HVの燃費(WLTCモード)はもっとも良いグレードで30.8km/リットルであり、さすがにヤリスの35.8km/リットルには及ばないが、コンパクトSUVでは世界でもトップレベルの性能だ。
ヤリスと同じGA-Bプラットフォームによって、トヨタがTNGAで進める「賢い共用化」も進んだ。パワートレインのほか、車体ではフロアなどのアンダーボディーやドアのインナーパネルを共用しており、お買い得感のある価格設定にもつながった。首都圏の販売店関係者によると予約段階から受注は好調だとされ、登録が本格化する10月にはヤリスシリーズが登録車のベストセラーになるのが確実の勢いだ。
