【メルセデスベンツ Gクラス 新型試乗】究極のボディオンフレーム4WDディーゼル…中村孝仁

軟弱なクロスオーバーSUVとはわけが違う

真打投入「G350d」

まさに究極のボディオンフレーム車

メルセデスベンツ G350d
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軟弱なクロスオーバーSUVとはわけが違う

今更『Gクラス』の誕生秘話などどうでもよいだろう。とにかく今、メルセデスベンツ・Gクラスは日本でもトップクラスの人気SUVである。

しかし、このSUVという呼び方には少々抵抗がある。何故ならGクラスは元来筋金入りのオフロードカーであるわけで、軟弱なクロスオーバーSUVとはわけが違うからだ。まあ、そんなことを言っても使っていらっしゃる方々の大半は筋金が入っていようがいまいが、Gクラスを威風堂々とした街の景色にも似合うSUVとして使っていらっしゃるのだろうから、オフロードを走る機会などまずないと思う。

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現行モデルは2018年日本市場でリリースされた。コードネームW463は旧型から引き継がれている。では、スタイルから想像してそう変わっていないのかというと、その考えは見事に打ち砕かれ、相変わらずボディオンフレーム構造であることに変わりはないものの、全体としておおよそ170kgも軽量化され、フロントサスペンションが従来のリジットからダブルウィッシュボーンの独立懸架に変わた。

エンジンなども新世代のものが採用され、インテリアは最新のメルセデスパッセンジャーカーのそれと同じような巨大ディスプレイによるものへと様変わりしている。これらの点については、ガソリンモデルが導入された時に説明したことだ。

真打投入「G350d」

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先代モデルの売れ筋が何だったかと言うと、実は3リットルのV6ディーゼルを搭載した「G350d」であった。Gクラス全体の7割を占めていたそうだから、まさに追加投入された今回のモデルが真打投入というわけである。それにしても搭載されるOM656という新しい直列6気筒ターボディーゼルとなったのに、何故旧型と同じG350dの名が引き継がれたのかは少々解せない。というのもこのOM656を搭載する他のモデル、例えば『Sクラス』にしても『GLE』にしても、400の呼称が使われている。だから、本来ならG400dで良かったのではないか?と思うわけである。

そのOM656の関してはすでに何度かレポートしているが、このエンジンは現在考え得る最も優れたディーゼルエンジンと呼んで差し支えない。

簡単に説明するとまずこのエンジンは現行メルセデスの他の直6、あるいは直4エンジンとモジュラー化されたもので、DOHC4バルブ可変バルブタイミング機構を持つエンジンである。OM654の呼称を持つ直4ターボディーゼルとはボア×ストローク共に完全に一致する。一方でパフォーマンスに関しては、例えば同じSUVのGLEと比較した時にGLEは330ps、700Nmの出力/トルクを持つのに対し、Gクラス用は286ps、600Nmと、性能的にはマイルドに仕上げられている。もし350を名乗る必然性があるとしたら、この性能差かもしれない。

まさに究極のボディオンフレーム車、そしてターボディーゼル搭載車

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それにしても、以前のV6搭載車と比較して、その静粛性の高さと回転フィールの滑らかさには圧倒的な違いがある。V6ディーゼルだって決してうるさい方ではなく、当たり前だが4気筒と比較すればやはりスムーズさは際立っていた。それをさらに上回るのが今度のOM656だというわけだ。

スムーズさの要因の一つはシリンダー壁のナノスライド加工。この技術はメルセデスとGebr. Haller GmbHという会社の共同開発によるもので、シリンダー内壁にスチールカーボンとアルミをアーク溶射する技術で、40以上のパテントを取ったもの。最強のメルセデスF1のエンジンにも使われていて、フリクション低減の効果が高い。これの恩恵か、アイドリング時のエンジン騒音は恐らく一般人はこれがディーゼルだと言われなければわからないほど小さいし、室内に乗ってしまえばそれをディーゼルと言い当てる人はまずいないと思えるほどスムーズである。

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軽快であることは2460kgの車重を考えると想像できなほどだし、何よりも同時に試乗したGLEと比較しても、Gクラスの方が全体の動きのメリハリ感がしっかりとしている。およそボディオンフレームという、モノコックと比べてどうしても重心高が高くなり、運動性能的には不利なはずなのに、その欠点をカバーして余りあるほどの卓越した動きを示す。

ステアリングも新たにラック&ピニオンに変更されたおかげで以前より間違いなく正確。数多くボディオンフレームのモデルに乗ってきたが、ここまで正確なステアリングフィールと快適なサスペンション、それに高いライントレース性能を示すモデルにはお目にかかったことがない。まさに究極のボディオンフレーム車、そしてターボディーゼル搭載車である。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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