「勢い増す電動化時代、UL Japanがパートナーとして寄り添う」…最新EMC試験設備の拡充強化と独自戦略【インタビュー】

UL Japan コンシューマーテクノロジー事業部の橋爪正人事業部長
  • UL Japan コンシューマーテクノロジー事業部の橋爪正人事業部長
  • UL Japan 鹿島EMC試験所 次世代モビリティ棟
  • UL Japan 鹿島EMC試験所
  • オートモーティブ テクノロジー センター内に新設した、信頼性試験ラボ
  • オートモーティブ テクノロジー センター(Automotive Technology Center、ATC)
  • オートモーティブ テクノロジー センター(Automotive Technology Center、ATC)
  • CISPR 25:2016 Edition4 Annex I 対応EV/HV用試験設備「EHV Chamber」
  • ATCの車載製品EMC用電波暗室

世界的な第三者安全科学機関であるUL の日本法人で、製品安全評価試験、認証発行、EMC測定などを展開する UL Japan。2018年、固定型ダイナモ搭載電波暗室 EHV Chamber(Electric & Hybrid Vehicle Chamber)を愛知県みよし市に国内初設置した同社は、歩みを止めることなく新たな動きを見せている。

三重県伊勢市に本社を構えるUL Japanは、100年に一度の大変革のなかにある自動車製造分野で、信頼性試験や認可取得に向けたサービスを矢継ぎ早に展開する。直近では、2017年に自動車業界向け試験所「オートモーティブ テクノロジー センター(ATC: Automotive Technology Center)」を新設し、2018年夏には同試験所にCISPR 25:2016 Edition4 Annex I 対応電波暗室「EHV Chamber」を開設。2019年4月には車載機器に特化した「信頼性試験ラボ」を本社で稼働させるなど、自動車産業の電動化・電子化のニーズに応える各種試験サービスをけん引してきた。

そんなUL Japanにおいて、今最もホットなトピックスが、千葉県香取市にある鹿島EMC試験所に完成した「次世代モビリティ棟」だ。本格稼働は2020年1月6日を予定している。

国内自動車産業のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)という流れに対応する最新設備、鹿島EMC試験所 「次世代モビリティ棟」を、今なぜ開設したのか。自動車分野において新しい設備を矢継ぎ早に展開する背景と、ULが描く電動化に向けたビジョンは…。同社コンシューマーテクノロジー事業部の橋爪正人事業部長に話を聞いた。

めまぐるしく進化する電動化技術と、UL Japanにしかない強み

オートモーティブ テクノロジー センター(Automotive Technology Center、ATC)

「今、自動車製造分野で起きている大きな流れとして、規格の要求事項が厳格化されていることが挙げられます。たとえばハイブリッド車でいうと、電圧です。48ボルトのマイルドハイブリッドから300ボルト以上のストロングハイブリッドまで、電圧が高くなっていくとそれに応じた試験の要求も厳しくなってくる。それに合わせて、メーカーが自身で試験設備・測定器も更新する必要があり、これがメーカーにとって大きな負担になっています。しかもこうした設備投資を社内の経営サイドに伝えるために、分厚いプレゼン資料を作成する労力と時間、コストは無視できません」と橋爪氏は話す。

自動車製造業が抱えるこうした事情から、「認証試験サービスの分野でULがパートナーとして寄り添って、適時、必要な工程を最新の設備でオンタイムに、リーズナブルな価格で利用していただきたい」という。

では、同様の認証試験サービスを展開する事業者が国内に複数あるなか、ULの優位性はどこにあるのか。

「やはり世界規模で創立から125年培ってきた電気・電子分野の知見と技術です。たとえば新しい技術とともに生まれる新しい規格に対して、試験のセットアップ過程をどう組み立てればいいかわからないというメーカーが多い。『どう組み立てればいいの?』という相談から始まるケースも多く、UL Japanはそこから目標設定をし、パートナーとして一緒に取り組める。場合によっては測定方法を変える提案もしながら、時間短縮とコスト削減を図ることができます。そのような点が競合他社と違うところですね」。

MaaS ・CASE時代におけるULの4つの方向性

UL Japan コンシューマーテクノロジー事業部の橋爪正人事業部長

また、自動車業界のMaaS(Mobility as a service)やCASEというトレンドに応じ、ULは「機能安全」「サイバーセキュリティ」「自動運転」「MONETコンソーシアムへの参画」といった4つの方向性があるという。

「ひとつは機能安全。技術とマネジメントのコンサルティング会社であるkVA社を買収したので、自動運転車の安全性とアドバイザリー事業をさらに加速させていきたいと考えています。2つ目はサイバーセキュリティ。ネットワーク接続製品のためのソフトウェアサイバーセキュリティ”ISO 21434”に関するアドバイザリー及びテクニカルサービスです。3つ目は自動運転。“ISO 21448”や、来年第一四半期に発行する予定の “UL 4600”などのアドバイザリー事業もいち早く的確に進めていきたいと思います。そして4つ目はモビリティサービス会社『MONET Technologies』のコンソーシアム、MONETコンソーシアムへの参画。ULは安心・快適なモビリティ社会実現に向けて積極的に取り組んでいきます」。

今なぜ鹿島EMC試験所 次世代モビリティ棟で先手を打つか

UL Japan 鹿島EMC試験所 次世代モビリティ棟

愛知県みよし市のオートモーティブ テクノロジー センター(ATC)が、各自動車メーカーの規格試験をはじめ、国際規格・業界規格に基づく試験評価、車載機器EMC(電磁的両立性:EMI[電磁妨害]とEMS[電磁妨害感受性]の両立)試験などをトータルに受け入れる設備として存在感を高めるなか、今なぜ千葉県香取市にある鹿島EMC試験所に次世代モビリティ棟を開設したのだろうか。

「まず電動化の流れで車載機器の電子部品がどんどん増えている状況のなか、2018年夏にオートモーティブ テクノロジー センター内に開設したEHV Chamberの稼働率が高いという背景があります。このEHV Chamber は、CISPR 25:2016 Edition4 Annex Iに国内で初めて対応しているほか、ISO 11452-2 Ed.3 Clause 8、GB/T 36282-2018といった国際規格に対応している点で多くのご利用をいただいています。

なかでも中国独自規格の『GB/T』は、各自動車メーカーが中国市場に向けて出荷する際にクリアすべき規格で、今後この規格が正式に強制化されて『GB』になるタイミングにあわせて『今のうちに測定しておこう』という依頼も増えてきています。

“電子部品の増加”、“高電圧化による要求事項の変化”、“自動車業界に参入する新しいプレーヤーの増加”、この3点が大きな要因となり、EMC試験の需要が高まっていることから、今回次世代モビリティ棟の開設に至りました」。

この鹿島EMC試験所 次世代モビリティ棟の開設で、これまで愛知県みよし市のオートモーティブ テクノロジー センター内にしかなかったEHV Chamberが東日本エリアでも稼働することになり、UL Japanは愛知1基、千葉2基の合計3基体制で国内のEMC試験需要に応えていく。また、高電圧部品が急増するなか、双方向高電圧DC電源(1000V/240A/90kW)も設置。幅広い電圧に対応し、顧客ニーズに応えていくという。

大型輸送機・建設機械に向けた新EMC試験棟も

伊勢本社にて2020年7月稼働予定の、新EMC試験棟(大型電波暗室)

マツダをはじめ、GMやフォードの新規格に対しての試験所認定を取得しているUL Japan。ここまで、モビリティ・自動車製造分野でのULの存在感について聞いてきた。ここからは、大型輸送機・建設機械などのラージモビリティについての話題に移る。自動車分野で自動化・電動化が加速するなか、同じように変革が起きているのが、この大型輸送機や建設機械(重機)といったカテゴリだ。

「労働力人口減少の流れや、安心安全な職場環境が求められるなか、建設機械も電子化・電動化・自動化という波が押し寄せています。また、自動車と建設機械で、EMC試験のプロセスが違います。建機は『最終製品時点でEMC試験をクリアしなければならない』というルールがある。一方、自動車分野は部品レベルでEMC試験を行います。ここに違いがあります。建機は最終製品時点でEMC試験をクリアする(ISO 13776)というこのルールが強制化されるのが、2021年7月から。もう1年を切っているというなかで、大型の建機が入るEMC試験場がない。そこで、伊勢本社に新しく建設機械などの大型機器に対応可能な電波暗室EMC試験棟を建てることを決断しました」。

UL Japanが手がけるこの大型電波暗室は、建屋寸法25.3×37.0×11.7メートル、入口寸法 8.0x8.0 メートル、耐荷重100トン、排ガス・ガス検知なども備える巨大EMC試験棟で、2020年7月の稼動をめざして建設が進められている。EMC測定に影響を与えずこの大きさの入口寸法を確保するのは難しいが、同社はこれまでの知見と高い技術力によってそれを実現したという。また、通常の電波暗室は耐荷重1トン程度であることを考えると、100トンという数字がいかに特殊かということもわかる。

「今後もCASEの電動化・電子化に対応するサービス展開を加速させ、そのサービスの幅の広さで、バラエティ豊かにかつ柔軟に対応できるワンストップ体制をさらに強化していきたい」と橋爪氏。とくに信頼性試験サービスは予想をはるかに上回るニーズがあったことから、「振動試験や塩水噴霧試験といったニーズの高いサービスを拡張していく計画もあります。また、クライアントの声を反映させて、信頼性試験メニューの追加も2020年以降に実施していきたい」と語った。

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《大野雅人》

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