トヨタに限らず移動問題の解決を応援したい…トヨタ・モビリティ基金 事務局長 青山伸氏[インタビュー]

一般財団法人トヨタ・モビリティ基金 事務局長 青山伸氏
  • 一般財団法人トヨタ・モビリティ基金 事務局長 青山伸氏
  • みんなで作る地域に合った移動の仕組み
  • 導入したスクールバス
  • 画期的な補装具開発を支援

トヨタ・モビリティ基金はどんな組織だろうか。一般財団法人トヨタ・モビリティ基金事務局長の青山伸氏に考え方について聞いた。

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世界中のチャレンジングでサステナブルな活動を応援したい

---;トヨタ・モビリティ基金はどのような組織ですか?

青山氏:より良いモビリティ社会の実現、モビリティ格差の解消に向けた活動を通じて社会に貢献することを設立趣旨に2014年8月に設立されました。理事長はトヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男です。

つぎの行動指針に則って動いています。「人々の自由な移動の実現を通じて、豊かでサステナブルな将来社会におけるレガシーとなる活動をグローバルに行う。世の中を変えるイノベーティブな技術、仕組みの実現に向けチャレンジする。同じ志を持つ多様なパートナーと共に、コラボレーションしながら目標の実現を目指す。活動を通じて学び、その結果を広く社会に共有する」

これまでにない新しいチャレンジであるか、助成金を受け取った後も事業として継続できるかどうかについて重要視しています。

組織体制はシンプルです。私たちの考え方に則っていて、おもしろいな、応援したいなという案件があれば、トヨタ・モビリティ基金の事務局内でまとめて、理事会にかけるといったスピード感ある動き方をすることができます。応援の対象はトヨタグループ内の人に限りませんし、国内のみならず、先進国、新興国、発展途上国などさまざまな国や地域で頑張っている人を応援したいと思っています。

対象テーマは、人々の移動の問題をすべて扱っていますので、非常に多岐にわたります。交通流の最適化やファースト・ラストマイルのアクセスの向上、障がい者や高齢者などの交通弱者の移動、自然災害対応、水素サプライチェーンなどのエネルギーなどです。

よい活動を厳選して応援する

---:基金の原資は?

青山氏:当基金の活動原資はトヨタの株の配当です。委託者がトヨタ、受託者は三井住友信託銀行、受益者が当基金という関係になっています。トヨタが発行する普通株式から生じる配当金を信託収益として受益者に交付して、社会貢献活動を実施することになっています。貸借対照表も当基金のHPで公開しています。

予算は立てますが、使い切らないといけないという発想ではありません。理事長から「いいものがあれば応援して欲しい。人様の財布になってはいけない」と言われています。

「よいアイディアがあるのだが、相談先が見つからない」と悩んでいる人がいらっしゃれば、相談に来て欲しいと思っています。理事や評議員は世界の第一線で活躍している代表者ばかりなので、瞬時に意思決定をしてくれます。

実績づくりの5年間

---:興味深い活動をしていると注目されていますが、どのような組織なのか伝わっていないように思います。

青山氏:これまで5年間は実態を作ることに注力してきました。まず自分たちで見つけてきた世界中のチャレンジングな活動に対して応援してきました。

一番はじめの事業はタイの首都バンコクの交通渋滞の緩和(パートナー:チュラロンコン大学)でした。その他にも下肢麻痺者向け補装具のアイディア発掘と開発(パートナー:英国国立科学技術学術基金が母体となって設立されたNPO「Nesta」)、人口知能による都市交通マネジメントについてはアメリカ・ロサンゼルス(パートナー:ロサンゼルス市運輸局)とイギリス・ロンドン(パートナー:アラン・チューリング研究所)の2か所に対して応援してきました。

導入したスクールバス

画期的な補装具開発を支援

国内では岡山県美作市上山地区や愛知県豊田市足助地区の中山間地域のモビリティモデルの構築、落合陽一氏よる自動運転車椅子の実証実験などを支援しています。

ようやくノウハウや経験もたまってきています。そこで新しくはじめたのが公募事業です。

2016年から日本国内の過疎化・高齢化による移動課題の解決に向けて、新しい移動の仕組みづくりに対する2年間の助成事業を行っています。2018年11月~2019年2月に地方公共団体、NPOなどの市民団体、民間企業などを対象に公募しました(助成内容は300万円未満もしくは300万円以上3,000万円以下)。105件の応募があり、グローカル交流推進機構理事長の土井勉先生や福島大学准教授の吉田先生など有識者10名の選考委員により29 件を採択しました。

また、これからの地域のモビリティ拠点として期待されている自動車販売店に対して、トヨタ店に限らず、日本自動車販売協会連合会の会員を対象に、最大2000万円(総額5億円)の助成公募を開始しました(募集期間は2019年11月1日~2020年1月31日)。

よき相談相手の役割も

みんなで作る地域に合った移動の仕組み

---:採択された29件との関係は?

青山氏;2年の間に持続可能な仕組みを作ってもらおうとしています。はじめは計画書の通りに進捗しているか追いかける予定にしていました。しかし、それだけでは足りないことが分かりました。採択先を回る部隊は、相談相手に近い状況になっています。

土井先生と吉田先生にお願いして、フィールドワークができる若手研究者を1人ずつつけていただいて、29件を回っていただき、共有する会議を毎月しています。

ビジネス的に民間企業が解決できるところ、その地域の行政が税金を使って解決できるところ、その中間的な解決の方法が必要なところなど大きく分けて3つの解決方法があるのではないかと感じています。

---:過疎地や高齢者の移動問題は非常に難しいです。伴走者や人材育成プログラムが大切だと思います。いま実施されているメンター、勉強会、交流会などとセットにするとよいかもしれませんね。

---:トヨタの車両を使う必要はないのですか?

青山氏:トヨタの車両を使わないといけないという制限はありません。トヨタの車両を使うと、トヨタの売上につながるためよくありません。目的にあった移動手段を探すという考え方です。逆にトヨタが支援してくれるなら、車両の提供があるのではないかという期待をされる方もいますが、そういったこともありません。

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《楠田悦子》

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