【MaaS】MaaSの素地がある極めて珍しい都市…高松市 都市整備局 交通政策課 課長補佐 伊賀大介氏[インタビュー]

【MaaS】MaaSの素地がある極めて珍しい都市…高松市 都市整備局 交通政策課 課長補佐 伊賀大介氏[インタビュー]
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日本列島がMaaSで熱くなっている。しかし一方で MaaSはそう簡単ではないことも事実だ。何が成功要因か。欧米と環境の異なる国内によい事例はないのか。どこも試行錯誤中だ。

MaaSの素地が昔からあった極めて珍しい都市がある。四国の香川県高松だ。欧州のようにゾーン制の導入の可能性がありMaaSの素地があると、都市交通を深く理解する関係者から以前から注目されている。

高松でのこれまで取組みと成功要因について、都市計画と交通計画に約10年携わっている高松市都市整備局交通政策課課長補佐の伊賀大介氏に聞いた。

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サイバーの前にフィジカルを。逆の順序ではMaaSは失敗する

---: これまで高松市が行ってきたことは?
伊賀氏:MaaSを意識して取組んできたわけではありません。

高松市では平成20年に都市計画マスタープランを策定し、都市経営そして市民生活に欠かせない移動を、いかに将来にわたり持続させるかという仕組みづくりに取組んできました。「住みたい!」と思ってもらえる魅力ある都市にしながらも、できるだけ高効率・低コストで、まちづくりを進める必要があります。どこの都市においても同じことが課題となっています。高松市は目指すべき都市構造として“コンパクトシティ”をかかげて取組んできました。

---:コンパクトは手段ですが、目的化しているところもありますね。MaaSも同様でしょう。
伊賀氏:都市計画と交通計画において、高松市がとった手法は“移動を束ねる”ことです。コンパクトシティ実現のために、居住地に制限をかけたり強制することは日本において難易度が高いわりに効果が薄くなりがちなため、人の移動をコントロールすることで、住居や商店など目的施設を自然と集積し、街の機能が変わるように誘導していく方が、無理なくコンパクトシティ化できるのではないかと考えています。

データのエビデンスをもとに交通事業者とフィジカルを再構築

伊賀氏:さらに高松市ではリアルタイムで情報を分析してフィジカルを再構築することを行っています。平成24年度に香川県全域でパーソントリップ調査を行っており、そのビックデータをもとに経済モデルを構築し、その後、交通事業者から提供される交通系ICカードのデータを活用し、経済モデルをブラッシュアップしながら、需要予測を行っています。このエビデンスをもとに、公共交通のサービスレベルについて交通事業者と話をしながら、将来のまちのビジョンを共有し、フィジカル面の再構築を重ねてきたという土台と、その過程において交通事業者と構築してきた関係性が高松市にはあります。

---:最新の需給データのエビデンスにもとづき交通事業者との関係を構築し、最適化を行う。MaaSに必要な取組みを以前から行われているわけですね。これがMaaSを取組む上でもっとも大切な基礎だと思います。高松市のように自治体がビックデータを毎年更新しながらエビデンスに基づき交通事業者と関係性を構築している地域をあまり聞いたことがありません。

伊賀氏:都市計画と交通計画の両面に詳しい人材が、交通政策に長年携わってこられたことにより、取組めていると考えています。都市経営をどうしていくかということを考えて、交通計画を組んでいるのです。

これまでの経験に基づいて分かってきたことは、自治体と交通事業者のパワーバランスが非常に大切だということです。日本の公共交通に取組んでいる自治体を大きく分けると、経営難の民間鉄道を持っている地域か、経営が非常に好調な地域になるかと思います。実は高松はどちらでもなく、バランスの取れた地域だと考えます。高松市の公共交通は、民間鉄道である「ことでん」が大半を担っています。ことでんは一時期、経営難に陥ったのですが、様々な取組みにより今は鉄道、バスともに利用者は増えています。交通事業者は、この経験があるため、まちづくりの視点で高松市と一緒に考え、取組むことができたのではないかと感じています。

高松市と交通事業者が、お互いに課題を共有しながら、市民が利用しやすい公共交通の環境づくりを行ってきました。既存ストックである鉄道を基軸、バスをフィーダーとし、様々な施策により将来のサービスレベルを落とさないという「高松モデル」のビジョンを共有し、今年度からは、本格的なバス路線の再編に取組んでいく予定です。

---:自治体と交通事業者の関係がよくないところも多いように思います。またそもそも自治体に公共交通の部署があるところもそんなに多くはありません。あったとしても市民からバスを通して欲しいという要望を受けて会議を開いている程度です。

伊賀氏:ことでんは交通系ICカード「IruCa(イルカ)」を導入しています。もとは、交通事業者が経営難に陥った際、効率化のために導入された仕組みですが、本市ではコミュニティバスやレンタサイクル等、様々なモードに導入しています。さらに、市、公共交通事業者、市民および事業者の責務を明らかにした高松市公共交通利用促進条例を策定し、その理念に基づいて、IruCaを活用した乗継割引施策等を行っています。

日本のMaaSの今の動向を見ていると、データの利活用や決済などのサイバー空間から入っているところが多く、フィジカルでもサイバーでもつなぎ目ばかりになるのではないかと心配しています。

オープンデータ化が大切

---:これからは?
伊賀氏:これまでのように持続可能な都市経営の観点から、市民の公共交通の利便性を向上させていきます。しかし独占禁止法の見直しなど国も環境整備を進めていますが、まだまだ制度が追い付いてきていないように感じます。国の動向等を注視しつつ、交通事業者と連携を図り、本市にふさわしいMaaSについてビジョンを共有しながら取組んでいきたいと思います。

またMaaSを進める際、交通インフラ情報のオープンデータ化が見落とされています。大手はもとからオープンデータ化ができています。しかし小さいまちの事業者は、そもそもデジタル化できていないしオープン化されていません。高松市でも一部デジタル化できていないところがあります。そこを底上げしていきたいと思っています。

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《楠田悦子》

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