メルセデスベンツ Aクラス 新型、「MBUX」開発者にインフォテイメントとしての“最先端”を聞いた

日本人にとって音声コントロールは本当に使いやすいのか

AIは音声認識でどう関わっているのか

走行中でも操作できるのは音声コントロール最大のメリット

新型Aクラス発表会でプレゼンするメルセデスベンツ日本の上野金太郎社長
  • 新型Aクラス発表会でプレゼンするメルセデスベンツ日本の上野金太郎社長
  • MBUXを搭載した新型Aクラスのコックピット
  • MBUXについては、イムラー社研究開発部門でMBUXの開発に携わったトビアス・キーファー氏がプレゼンした
  • 発表会終了後に開催されたラウンドテーブル
  • イムラー社研究開発部門でMBUXの開発に携わったトビアス・キーファー氏
  • メルセデス・ベンツ日本からは、カスタマーエクスペリエンス部MBUX課の民實仁貴(たみざねひろき)氏(右)と、同社広報室の木下潤一氏が出席した
  • 発表会ではMBUXを実際に使ったデモも行われた
  • 導入記念限定車(特別仕様車)の「A180 Edition1」が設定された。デリバリーは今年2018年12月

世界で最も進んだ対話型インフォテイメントシステムとして注目の「MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)」が、日本仕様の新型『Aクラス』に搭載された。人工知能を利用した良く機能も備えたとされるこのシステムについてドイツと日本の開発担当者に話を聞いた。

取材の場が設けられたのは、発表会終了後のラウンドテーブルの場。約20人ほどの報道関係者が集まる中で開催された。質問に答えてくれたのは、ダイムラー社研究開発部門でMBUXの開発に携わったトビアス・キーファー氏と、日本語対応を担当したメルセデスベンツ日本 カスタマーエクスペリエンス部MBUX課の民實仁貴(たみざねひろき)氏と、同社広報室の木下潤一氏の3名だ。

日本人にとって音声コントロールは本当に使いやすいのか

MBUXを開発したのはドイツ。当然ながらベースは英語あるいはドイツ語であるはず。そんな中、音声認識は13カ国語に対応したとのことだが、日本語化することで困難なことも多数あったはずだ。質問はそこから入った。

Q---MBUXの音声認識を開発するにあたって、苦労した点を伺いたい。

A---英語やドイツ語とは言語タイプがことなる日本語だけに、表現の仕方を理解する方法で工夫する必要があった。たとえば、日本語には音読みや訓読みというのがあって、同じ意味でも読み方がまるで違う。地域によっても読み方が違っていることもあるので、日本国内を津々浦々走り回って対応できるようにした。加えて、コマンドとして入力された音声を自然に理解させるため、かなりのデータを収集したのも事実。しかし、これをクリアしなければ機能として成り立たないわけで、これにいちばんの労力を費やした。しかし、サプライヤーであるニュアンス・コミュニケーションズの協力によって、日本語化を実現できた。

Q---コマンドを処理するのは、クルマの中で完結するものと、インターネット回線を介して対応するものと二通りあると思うが、その辺りはどうやって判別しているのか。

A---まず、MBUXは常にベストな方法で認識するように設計されているので、ユーザーの求めに対してはまずオンラインで探す。一方でオンラインに接続されていない場合はシステム内で答えを出すこととなる。しかし、オンラインでないと回答が出せないものも多数あり、その一例が天気予報を求めた時。システム内にはその情報はないわけで、その場合は必ずオンラインで検索するようになっている。
メルセデスベンツAクラス新型
Q---日本人はシャイな部分があり、クルマに向かって話しかけるのは不得意なのではないか。他の国の事情を含め、音声コントロールへの認識を伺いたい。

A---「Hi、メルセデス!」と言わなくても、ステアリングにあるボタンを押すことでコマンドの入力モードにはなる。他の国での体験を挙げると、「近くのレストランを探して」といって適切な答えが返ってくると、使うことが愉しくなって、一度その便利さを理解すると繰り返し使うようになる。その意味で、機能を理解してもらえれば使う頻度は高くなっていくと考えている。

Q---音声認識を起動させる「Hi、メルセデス」を流ちょうな英語で呼びかけても対応するのか。

A---実は日本仕様ではそれだと認識しない。コマンドは完全に日本語対応になっているので、外来語をいきなり英語での発音で入力しても認識はしないことになっている。普通に日本人が使っている外来語として入力すればいい。呼びかけについては“メルセデス”で反応するロジックを組んでいるので、「はい、メルセデス」でも「へい、メルセデス」でもOKだ。

Q---日本特有の方言についてはどうか。

A---日本語として幅広い対応を心がけたので、たとえば関西弁とかはきちんと認識できるようになっている。地域によって語尾が違っているような場合でも対応はするが、完全に発する言葉が違っている方言については認識ができないこともある。

AIは音声認識でどう関わっているのか

音声認識をクラウドで判断するのはAIの役割だ。ユーザーから届けられたコマンドをMBUXでAIはどのように関わっているんだろうか。

Q---リリースにはシステムがAIで学習して成長していくとの記述があるが、どの程度まで進化するのかを教えて欲しい。

A---まず、ユーザーがシステムをどのように使っていくかをAIが見ていく。その動きはクラウド上にデータとして蓄積され、そして、そのデータを新たに収集することで成長する可能性は広がっていく。たとえば新しい表現方法や言葉を理解できないという事例が発生し、他でも同じような表現で入力されているとなった場合、それは新たな認識すべきワードとしてアルゴリズムの変更を行う対象となる。ただ、それはパーソナルな部分まで個別に識別するという段階にまでは至っていない。また、アップデートはシステムが自動で行うのではなく、それらの実績に基づいて定期的に更新していくことになっている。
発表会終了後に開催されたラウンドテーブル
Q---MBUXの開発にあたって、NVIDIAやニュアンス・コミュニケーションズが関わっていると聞いたが、他にパートナーがいるのなら教えて欲しい。

A---まずMBUXのシステムは、ハーマンインターナショナルが担当している。他にもいろいろなパートナーがいるが、インターフェイスやAIのアルゴリズムついては社内にプログラマーがいて、ドイツのシュトゥットガルトやアメリカのシリコンバレーで開発を進めてきた。

Q---自動車における音声入力に関しては、Googleやamazonなど他のIT企業も手掛けている。メルセデスベンツが自前で開発した特徴やメリットを教えて欲しい。

A---まず、我々はクルマをよく知っていると言うことだ。クルマという環境において音声認識のアルゴリズムを調整することができる大きなメリット。また、ボイスアシスタントによって車内機能、たとえばアンビエントライトのコントロールをはじめ、空調やサンルーフ・シェードの開閉などのコントロールはスマートフォンでは不可能なこと。車内全体のシステムを把握しながら対応できる大きなアドバンテージがあると思っている。
導入記念限定車(特別仕様車)の「A180 Edition1」が設定された。デリバリーは今年2018年12月
Q---車内から家庭の照明や空調などのON/OFFなど、IoTへはどう対応していくのか。

A---それについてもクラウドを介することで可能になる部分で、既に他の市場向けではそれが実現できている。Google Homeのように、個別に住所を教えて欲しいとかの対応は出来るようになっていく。今後は車内外と問わず、包括的にIoTにつながる形で対応していくことになると思っている。

走行中でも操作できるのは音声コントロール最大のメリット

インフォテイメントに音声アシストを組み入れることで、その使い勝手は飛躍的に高まる。MBUXはその認識精度を高め、対応範囲を広げることで、より高い実用性ももたらした。残念ながらドイツ本国でリリースされたものに比べ、機能面で100%発揮できているわけではないが、それでも使うたびにその良さは体感できるという。

Q---目的地付近にクルマで到着した後、ラストマイルでスマートフォンが引き継ぐことはできるのか。

A---新型Aクラスでも「メルセデスmeコネクト」を使うことで可能だ。通常、クルマで移動する場合、家の中から旅行は始まっている。スマートフォンで目的地を設定すると車内のカーナビに反映され、目的地に着いたらラストマイルとしてスマートフォンにルートが引き継がれるといった具合だ。開発で最も重視していたのは使い勝手が直感的であるべきと言うこと。つまり、ユーザーに対して包括的なエクスペリエンスとして提供できることを目指して開発を行ったということだ。
メルセデスベンツAクラス新型
Q---音声認識での操作は走行中でもできるのか。また、できるとすればどの範囲なのか。

A---メニューからの操作は従来通り制限を加えているが、音声での操作は走行中でも可能となっている。ただし、安全に関わるような部分、たとえば自動でのスタビリティアシスタンスやブレーキアシスタントなどをOFFにするなど、車両の中枢を司るようなシステムの変更は音声で操作できないようになっている。

Q---運転者と同乗者を識別して音声入力されるようだが?

A---その認識は行っている。車内には2つのマイクが備えてあり、距離や方向を測って運転者が話しているのか、同乗者が話しているのかを識別するようになっている。それにより、たとえば同乗者が「シートを温かくして」と言えば、運転席ではなく同乗者のシートでそれに対応することができる。それは新たなユーザー・エクスペリエンスを体験させるものと考えている。

《会田肇》

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