【池原照雄の単眼複眼】コネクティッドカーで先陣のトヨタ…ユーザーの評価・反応は?

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クラウンとカローラスポーツにDCMを 標準搭載

トヨタ自動車は、「初代コネクティッドカー」として6月に新型『クラウン』と『カローラスポーツ』を発売し、業界では先駆的な「つながる」技術の本格導入を始めた。2020年までに日米では、ほぼすべての乗用車をコネクティッドカーとする計画だが、ユーザーがどの程度これを評価し、対価を支払うかはトヨタ自身、瀬踏み状態のところもある。技術説明会からユーザー評価の行方などを探った。

トヨタのコネクティッド技術は、専用の車載通信機「DCM」(データ・コミュニケーション・モジュール)を対象車両に標準搭載したうえで、ビッグデータの活用やコールセンターおよび販売店との連携などにより、「安全・安心」と「快適・便利」の2つの切り口から幅広いコネクティッドサービスが受けられるようにしている。これまで、「レクサス」ブランドやトヨタ車の一部で実施してきたDCMや専用ナビゲーションによるサービスの内容を充実させるとともに、これからほぼ全ての車種に展開していくのだ。

常時、オペレーターとつながる強み

まず、「安全・安心」では、走行距離、エンジンオイルの量、ドアの閉め忘れなどの車両情報をDCMから発進し、ユーザーは整備の必要性やメンテナンス・走行アドバイスなどをコールセンターや販売店から受け取ることができる。事故や急病の時は、専任のオペレーターに車内からの通話で依頼すれば警察や消防に取り次いでくれるし、エアバッグが作動すると、自動でオペレーターにつながる仕組みとなっている。

一方の「快適・便利」では「つながり方」も多様だ。オペレーターとの対話をはじめ、AI(人工知能)を利用した「AI音声エージェント」との対話、さらにLINEアプリによるスマホを介した車両との対話も可能(カローラスポーツの場合、これらのサービスには専用ナビの搭載が必要)であり、ドライブ中に立ち寄りたい店舗などの問い合わせや、ナビへの目的地セットなどができる。

社内分社組織「コネクティッドカンパニー」を担当する友山茂樹副社長が、「われわれのコネクティッド技術は『ヒューマン・コネクティッド・サービス』であり、お客様に寄り添ったサービスとしていく」と強調するように、IT技術に依存するだけでなく人そのものともつながる仕組みが、セールスポイントとなりそうだ。ユーザーとーオペレーターが24時間365日、常に交信できるシステムは「一朝一夕にはできず、トヨタのコネクティッドの強みになる」(友山副社長)と見ている。

3年後のDCM有償継続が試金石に

こうしたコネクティッド技術の高度化に伴い、センサーなどクルマ側の装備の必要性も気になる。だが、センサーに関していえば「自己診断用などクルマに従来から装備されているものを使っており、追加はしていない」(クラウンの開発を担当する三野良太MS製品企画ZS主幹)そうだ。クルマ側が異常箇所やメンテナンスの必要性、走行状況など約300項目を拾い上げ、自らDCMを通じてトヨタのセンターに通信するという。

一方、クルマの状態を把握してもらい、故障などを未然に防ぐことができるのは有難いが、販売店から部品やオイル類などの交換を頻繁に求めるメッセージが届くのは煩わしい気もする。こうした懸念に関して、コネクティッドカンパニーの天野裕二総括グループ長は「たとえば走行距離が少ないお客様は、部品の交換頻度が減少するなど、より、一人ひとりのお客様に寄り添ったサービスになる。当然のことながら、部品交換もあくまでお客様の判断となる」と話す。

DCMは初回車検までの3年間は無料だが、4年目からはクラウンで年1万6000円、カローラスポーツで同1万2000円(いずれも税別)が必要になる。継続しないと通信は遮断され、DCMはただの箱になってしまう。トヨタは4年目の継続使用率について車種ごとに推測しているようだが、公表はしていない。つながる技術が、ユーザーにとってどれだけ魅力の存在となるか、これからも機能の改善が求められるし、3年後のDCM継続率でその成果が示される。

《池原照雄》

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