【スバル アウトバック×ブリザック 雪上試乗】「ゆるさ」が真骨頂のロングツアラー…中村孝仁

試乗記 国産車
ブリザックを履いたスバル アウトバックと中村孝仁氏
  • ブリザックを履いたスバル アウトバックと中村孝仁氏
  • 会田肇氏
  • 川島茂夫氏
  • 鈴木直也氏

年次改良という言葉が、スバルとマツダの間で定着している。曰く、見た目もさることながら、日々進化する改良をまとめて行うもので、パソコンなどでは年次どころか、半期に一度は最低でも行われる。また、アプリなどもアップデートの名のもとに、改良が行われているのはご存知の通りだ。これだけ頻繁に改良が行われると、買いのタイミングを見極めるのは非常に難しい。

クルマが白物家電化していると言われる昨今だが、どうしてもこれでなきゃ、というコアなファンを持つクルマも存在する。その代表格がスバルだと思うわけである。何故か。それはメーカーがハンパない拘りを持つ会社だから、ユーザーにも信奉者がいる。そしてこのメーカーしか作っていない技術があり、それが魅力を増幅していることなどだ。アメリカでもスバリストなる言葉が生まれるほど、このメーカーのクルマは信奉者が多いのである。

とりわけ4WDと言えばスバルというほど、このメーカーの4WD比率は高い。モデルによってはすべてのラインナップが4WDというものだってある。我々のような都会人にとって、年に一度か二度しか降らない雪のために、大枚をはたく気などさらさらない(個人的に)から、クルマは4WDでもないし、そもそもスタッドレスタイヤなど、もう長いこと履いたことがない。しかし、たまに雪国へ行く羽目になると少し憂鬱になる。理由は運転に気を使うからである。

そこで、気を使わないかもしれない4WDのスバル『アウトバック』を借り出して雪国へ向かうことにした。しかも、有難いことに雪国での装着率No1と言われる、ブリジストンのスタッドレスタイヤ、ブリザックを履いている。このある意味黄金コンビがどの程度の実力を発揮してくれるか、少し楽しみだった。向かった先は長野県の女神湖である。

他社の試乗会だったが、やはりFWDモデルだと、たとえスタッドレスを履いていても、加速をしていかないケースがあるのだが、さすがに4WD+スタッドレスはスイスイ。加速も豪快にこなせる。元々アウトバックは最新のスバル・プラットフォームではないので、シャシー剛性には若干の緩さを感じるのだが、ハードに攻めるならいざ知らず、雪道をエンジョイしようとすると、この緩さに案外助けられる。その理由は、元々それほど雪道を得意としないドライバーにとっては、いわゆる安全マージンが少し大きいからと言って差し支えないだろう。反応自体が少し遅いので、自然とゆっくり走ろうとするから、ともいえる。

この緩さ、実はドライ路面の高速に行くと少々気になる。ステアリングの入力に対しての反応は少し鈍い。もっともこれも、家族を乗せてのんびりドライブを愉しむファミリーには都合が良いのかもしれない。ただし、ACCを作動させ、LKA(レーンキープアシスト)が車線を維持してくれるのだが、その作動時の車線内蛇行は正直結構気になる。

同行した3人のジャーナリストもコメントをくれた。月間自家用車などで活躍する川島茂夫氏は「外は荒天と悪路でも、車内は和気藹々とした時間が流れるのがアウトバックの真骨頂。ただ、一つ気になるのはLKA使用時に、車両が車線内で蛇行すること」ということだ。ナビゲーションや音響を語らせたら業界の第一人者である会田肇氏は、「高井戸から諏訪までの高速走行する中、アウトバックの静粛性をブリザックは少しもスポイルすることがない。特に高周波パターンノイズが小さく、車内での会話も順調に盛り上がることができた。一般道に降りてからもステアリングの応答性が良好で、雪上でのグリップ力も十分。スノードライブを気持ちよく運転できた」と話す。

ベストカーで活躍する鈴木直也氏は、かなり細かいコメントを寄せてくれた。

「ぼくの中でアウトバックのキャラクターは、積雪路や悪天候など、条件の悪い中でも安心してゆったり走れるクルマ。この美点は、今回の女神湖ツアーでも遺憾なく発揮されて、ぼくのみならずツアー一同を等しく満足させた。

ここであらためて思ったのは、とりわけ長距離ツアーをこなすクルマには、ある種の「ゆるさ」が必要だということ。クルマ好きはとかくキビキビ走るクルマを賞賛しがちだが、現実はそうじゃない。高速道路の直安でも、雪道のコントロール性でも、挙動がゆっくり遷移してコントローラブルなことが何より大事。アウトバックは数あるスバル車の中でも、ゆったり、まろやかな乗り味がもっとも光るクルマなのだ。

もうひとつ付言しておきたいのは、雪や氷などの低μ路では、なによりタイヤが重要という原則。今回の試乗車はおなじみのブリザック装着車だったが、高速でも雪道でも、このアウトバックの美点を上手に引き出す最高のコンビネーションだった」

『レガシィ』からツーリングワゴンが消え、ゆとりあるサイズのワゴンはこのアウトバックだけになった。しかし、サイズ感は個人的には決して大きさを感じない。ツーリングワゴンを出さずに『レヴォーグ』に移行したスバルの決定は、それはそれで当たりかもしれないが、このサイズを必要とするユーザーは間違いなくいると思うし、トップオブラインのクルマとしてこのサイズは必要なのではないかとも感じる。いずれにせよ、長距離ドライブで真価を発揮するクルマという印象を持った。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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