【岩貞るみこの人道車医】自動運転時の責任は…“take over”と“hand over”の違い、ご存知ですか?

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「レベル3」以上の自動運転時、責任はドライバーか車両側か。その「受け渡し」が課題となっている(写真はアウディのレベル3自動運転車)
  • 「レベル3」以上の自動運転時、責任はドライバーか車両側か。その「受け渡し」が課題となっている(写真はアウディのレベル3自動運転車)
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【車】「レベル3」自動運転時の責任は

2017年9月12日、アメリカのNHTSA(National Highway Traffic Safety。アメリカ運輸省道路交通安全局)が、自動運転のガイドラインを改定した。前年の9月に策定したものを、現在の開発状況などを鑑みて修正を加えたものである。

中を見ると、ほとんどが「レベル3」以上になっていて、もはや「レベル2」は、技術的にも制度的にも議論は一段落したように感じる。改めて自動運転のレベル分けについて書くと、レベル1と2は運転支援で、レベル3以上が、人間ではなくシステムが運転責任を持つようになる自動運転になってくる。第一回目の本コラムでも触れたとおり、レベル3以上は道路交通法上、世界のどの国も認めてはいない。

ただ、自動車メーカーは、着々とレベル3への道を模索している。どうすればレベル3、つまり、ドライバーが周囲の監視義務から解放されて、緊張感や疲労を軽減できるのか。さらには、メールチェックや本を読んだりといった「別のこと」ができるようになり、時間を有効に活用できるようになるのか。アメリカでは、大陸横断のような長距離トラックのドライバーが、運転中(移動中)に在庫管理など別の仕事ができるようになれば、一人で二人分の役割を果たすようになる。自動運転機能を詰め込んだトラックは高額だが、浮いた一人分の賃金で相殺すれば手の届かない範囲ではないどころか、むしろ安価だという見方もある。

周辺監視と制御を含めた運転の責任を、人間とシステムでやりとりをするレベル3。システムが走行中に機能限界に達した時(雪で前が見えない、西日の逆光で標識や信号が見えないなど)、いかに人に戻すのか。技術的な課題と同時に、受け渡し方法も議論が熱くなっている。

◆“take over”と“hand over”の違い

こうした議論のなかで出てくる2つの英語がある。「take over(テイクオーバー)」と「hand over(ハンドオーバー)」だ。昨今は新しい英単語が飛び交ってよくわからないことが多い。日本人なんだから日本語で表現しようよと思うのだが(海外の人によると、日本語は新しい言葉が出てきても漢字を見ると意味が思い浮かぶと好評)、欧米と技術競争の真っただ中にある自動運転は、逆に意味を的確につかむためにも、英語をそのまま用いる傾向にあるようだ。2つの言葉はそれぞれ、自動運転のレベル3を語るうえで重要なのだが、関係者のあいだでも混同して使われることが散見される。

(1)take over
「(義務や責任などを、誰か別の人から)引き継ぐ」
その時点で、運転責任のない方が主語になり、「請け負う」「引き受ける」というニュアンスになる。

例文1)システムが限界に達したので、運転者がテイクオーバーした。
例文2)システムが限界に達したので、運転者にテイクオーバー・リクエストを出してきた(引き受けてと頼まれた、と捉えるとわかりやすい)

自動運転系の現場や会議では、この例文2のように使われることが多い。

(2)hand over
「(義務や責任などを、誰か別の人に)引き継いでもらう」
その時点で、運転責任のある方が主語になり、「わたす」「お願いする」というニュアンスに近い。

例文)システムは限界に達したらしく、運転者にハンドオーバーした。(ここから運転かわってとお願いした、と捉えるとわかりやすい)

それぞれ、主語が逆なので、技術開発や議論のなかで受け渡し方法や対策を検討するうえで、間違って使うとかなり違うことになるため、ここはしっかりと分けて使っていきたいし、読者のみなさんにも、理解していただきたいところである。

これらの言葉のほかに、レベル2までを語るときによく出てくるのは、「override(オーバーライド)」だ。「~を無効にする」「~を覆す」という意味で、

例文1)車線維持支援システムが、車線にそってハンドル操作をしていたが、あらぬ方向に行きそうになったので、運転者がオーバーライドした。
例文2)レベル2では、車線維持支援システム使用中、運転者が危険だと判断したらすぐにオーバーライドすることが求められている。

などとなる。

以上は、HMIの専門家である筑波大学副学長の稲垣敏之氏に意味と定義を解説していただいたが、例文作成は私なので、ニュアンスがわかりにくいということばあれば、私の責任です、すみません。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。
《岩貞るみこ》

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