なんという軽さとパワーだ! これがメインフレームとホイールをカーボンファイバー製にした超軽量・最高峰スペックを持つマシンなのだ。決してフルスペックを出し切ることはできないけれど、レーシングライダーでなくともサーキット走行と、その高性能を心底楽しめる!!世界限定750台生産の超プレミアムモデル、BMW『HP4 RACE 』に富士スピードウェイで乗った。そのお値段、なんと1000万円である。この夢のような試乗は、BMW Motorrad JAPAN の計らいによって実現したわけだが、同じタイミングで走行機会が与えられたのは鈴鹿8耐を走るような凄腕ライダーたちばかり。ロードレースはおろか、サーキット走行の経験も乏しい自分がそんななかに混ざっていいものか怖じ気づきつつも、最高峰のマシンに乗れる歓びで胸がいっぱいであった。夢のマシンはピットにあった。スリックタイヤに被せられたタイヤウォーマーが外され、いよいよ自分が乗る順番だ…。トラクションコントロールやエンジンブレーキといった電子制御介入度の切り換えスイッチの操作方法などをBMW Motorrad のスタッフがレクチャーしてくれるのだが、与えられた走行機会は3周ほどで、終始舞い上がったままの自分がそれらのスイッチを押すことは一度もないままであった。不慣れな逆チェンジを正チェンジにしてもらい、さらに前後サスペンションのイニシャルを抜いてもらってからコースイン。直前に乗った『S1000RR』も軽快だったが、こちらは次元が違うといった印象で、コーナーの入口でフロントからスッと向きを変えていくし、切り返しでの身のこなしも俊敏そのもの。これまでに味わったことのないハンドリングの軽さとエンジンのピックアップの良さだ。カーボンファイバー製のモノコックフレームの重量はわずか7.8kgしかなく、S1000RR より4kgも軽い。ホイールも鋳造軽合金ホイールと比べ、30%もの重量削減を実現している。カーボンフレームの車体は硬くて曲がらないのでは…と不安だったが、そんなことはなかった。「この先はどうなっているんだっけ?」という富士スピードウェイが不慣れな自分でもコーナーを不安なくクリアでき、狙った通りのラインをいとも簡単にトレースしていける。低中回転域しかほとんど使わず終いのエンジンも、ピーキーで神経質なところは一切なかった。つまり、このHP4 RACE。本気度満点の一部レーシングライダーだけのものではなく、サーキットビギナーが購入しても充分に面白いマシンになっている。最高のマシンで腕を磨けば、ライディングの上達もさぞかし早いだろう。レースの猛者ではない一般ライダーも躊躇うことはないのだ!!■5つ星評価パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★★戦闘力:★★★★★プレミア度:★★★★★オススメ度:★★★★★青木タカオ|モーターサイクルジャーナリストバイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のバイクカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説。現在、多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。
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