1.4リットル直噴ターボエンジン150ps、電気モーター109ps、組み合わされるトランスミッション6速Sトロニック(DCT)。この仕様は『ゴルフGTE』のそれと全く同じである。Sトロニックに対してゴルフはDSGと、名前こそ違えど所詮は同じツインクラッチの電子制御マニュアルである。モーターが一体化されているから既存のSトロニックとは若干異なるが、少なくともその点でもゴルフGTEと同じ。ゴルフの場合はHVモード、Eモード、それにGTEモードと呼ばれる走行モードがある。対するアウディはEモードの他にハイブリッド・オート、ハイブリッド・ホールド、ハイブリッド・チャージなどのモードはあるが、いわゆるゴルフのようなパフォーマンスモードがないところが最大の違い。でもって走りの違いだが、大きなポイントはモードとは無関係にやはりアウディは静粛性が高い。エンジンがかかっていても実際にはエンジンの音をほとんど気にすることなく走れるのが『A3』。翻ってゴルフの方はというと、GTEモードなどでは意識してエンジン音を獰猛というか、勇ましい咆哮としてわざと室内に流している関係で、スポーツ性が高く、さらにはあちらこちらから余計な音も進入していて、やはり上質感という点では格段にアウディの方が上という印象を受けた。EVのみでの航続距離はアウディが52.8km、対するゴルフは53.1kmとされるが、その程度の差は誤差の範囲でどちらもほぼ同じ。実質的には30km台の走行が可能ということである。特にアウディらしい特徴があるかといわれたら、やはりそのしなやかな走りと静粛性を挙げたい。ガソリンエンジン車に対しておよそ250kgほど重くなっているから、当然ながらどっしりとした重厚感を醸し出すのは当たり前として、その中で路面からの入力を巧みに往なすあたりにサスペンションセッティングの妙を感じる。その点において敢えてスポーツ性を前面に押し出すゴルフとの乗り味の差が鮮明である。GTEを標榜するゴルフとトップエンドの差について話をすると、現実的に性能差は正直言えばあまりないように感じた。ただ、勇猛なサウンドやシャキッとした足回りの印象が、如何にも速い印象を与えているだけのように見受けられる。実際に加速テストでもしてみれば良いのだがそういう機会もないので、あくまでもインプレの範疇である。最後にお値段。アウディは564万円から。対するゴルフは469万円からで、ほぼ100万円の差がブランドの差というわけだろう。ただし、上質感を求めるなら間違いなくアウディが上で、そのあたりの差別化はきっちりつけている。どちらの減税や補助金などがあるので、実際にはこれよりも安く手に入れられる。アウディでは約31万円ほど、VWでは27万円強の補助並びに減税が受けられる。とはいえガソリンエンジン車との差異は大きく、電気走行が可能というだけでこいつに手を出すかは不明。個人的にはもしこの間にディーゼルがあれば、間違いなくディーゼルをチョイスする。■5つ星評価パッケージング ★★★★インテリア居住性 ★★★★パワーソース ★★★★フットワーク ★★★★おすすめ度 ★★★中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
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