公道向けモデルでは絶版となってしまった2ストロークエンジン搭載車だが、コンペティションモデルならまだまだ新車で買える。もちろん、オーソドックスなキャブレター仕様でだ。
KTMのモトクロッサー『125SX』は、2016年モデルでエンジンを一新。シリンダーとピストンに改良を加え、さらなる信頼性とより効果的な冷却性能を獲得し、エンジン単体での重量減も実現している。
ギヤレバーを改善した6速トランスミッションは横幅を6mm縮小。200gの重量減を達成し、クラッチにはブレンボ製の油圧システムが用いられた。
走ると気持ちが良い。アクセルを開けると同時に甲高いエキゾーストノートがコースに響き渡り、ストレートでは2ストならではの高回転での伸びが楽しめる。
パワーバンドは昔の2ストモトクロッサーにくらべるとかなり広く、ピーキーで乗りづらいということはない。シフトチェンジは4ストにくらべ忙しないが、レンジを捉えたときのヒット感は相変わらず痛快だ。
ただし、ジャンプの踏切で無闇にアクセルを大きく開けると、空中でフロントがまくり上がり、雑なスロットルワークは禁物だと改めて思い知らされる。
ただでさえ軽い2ストモトクロッサーの車体だが、2016年モデルでは90.4kgから87.8kgへとさらなる軽量化を達成。パワーバンドに入ったときの加速は強烈で、このダッシュを味わうと根強い2ストファンがいるのも頷ける。
ますます走りの鋭さを増した2ストの最新モトクロッサー。排気音、匂い、軽さ、そして他にはない格別のパワーフィーリングで、乗り手を飽きさせない。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
デザイン:★★★★
総合戦闘力:★★★
オススメ度:★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のモーターサイクルカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説している。現在多くのバイク専門誌、一般誌、WEB媒体で活動中。