【ホンダ S660 プロトタイプ 試乗】若手エンジニアの“本気”が生んだマジメなスポーツカー…森口将之

試乗記 国産車
ホンダ S660 プロトタイプ
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まず好感を抱いたのはモダンなフォルム。2011年の東京モーターショーに展示されたコンセプトカー『EVスター』ほぼそのままだ。日本の大企業としては珍しく、若者をリーダーに据え、ベテランが脇を固める体制で開発を進めた結果、このフレッシュなデザインが実現できたのなら、今後もどんどんこの手法を採用してほしい。

でも若さゆえの未熟さはない。フロントとリアの造形を統一させたり、サイドシルのルーバーをキャラクターラインと合わせたり、ロールバーにルーバーをさりげなく仕込んだり、ディテールは予想以上に凝っている。低いシートが印象的なキャビンも子供っぽさはなく、ベテランドライバーでも満足できる落ち着いた仕立てだった。

フルオープンではなく、キャビン後端に太いロールバーを築き、ルーフ部分のみ脱着可能なソフトトップとした点も新鮮。左右のフレームのロックを外し、中央に向け巻いていって、フロントフード内に収めるアクションは、慣れればひとりで完了できる。

発表前のプロトタイプをサーキットで乗っただけだが、走りもまたおとなっぽかった。まずターボらしさが薄い。この扱いやすさはスポーツドライビングで重宝するはず。サウンドはキャビンにいると3気筒っぽいものの、外で聞くと低く太い快音だった。MTのシフトレバーは確実なタッチで、ヒール&トゥがしやすいペダルともども文句なし。CVTは回転だけが先に上がる悪癖を巧妙に抑え込んであった。

ハンドリングは演出に頼らず、小型軽量という生まれ持った長所をストレートに表現しているので、すっきり爽快。しかも急ハンドルを与えてもリアタイヤのグリップは安定していて、フロントの接地感も高水準なので、ペースを上げても狙ったとおりのラインを駆け抜けていくことができた。

若いエンジニアが真摯にスポーツカー作りに取り組んだことが、デザインからも走りからも伝わってくる。レトロに走らず、コストダウンも考えず、まっすぐ前を向いてカッコ良さや楽しさを追求した、グローバルでも戦える本気の1台だった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得 意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通 事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。

《森口将之》

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