『クラウン』のハイブリッドが社会に広く受け入れられていくか否かは、日本のモータリゼーションの熟成度を計るうえでかなり重要な項目になるだろう。
かつて地球温暖化防止京都会議が行われた会場の駐車場で、待機するクルマがみんなアイドリングしていて海外から来た出席者の非難を浴びた。日本では運転手付きのクルマは、エンジンを一度始動したら夜ガレージに帰るまで、ただの一度もエンジンが止まらないのが常なのだ。
そうした土壌の国において、ハイブリッド車が本当に認められて売れるようになれば、それは熟成度が上がった証拠。燃料代を負担するのが自分でない、運転するのも自分でない、ハイブリッドのカンパニーカーが、アピールではなく本当にこれでよしとして買われるようになることが大切だ。
新しいクラウンハイブリッドは、従来の6気筒エンジンとモーターの組み合わせを捨て、新たに4気筒の2.5リットルエンジンを採用した。この新しいハイブリッドユニットは、システム出力で220馬力を発生する。イグニッションキーを回し、システムが起動しても当然エンジンは始動しない。
従来どおり走り出しはEV走行で、スルスルっと出て行く。エンジンが始動しないようにEV走行を続けるには、けっこうゆったりしたアクセル操作が必要。今回の試乗は発売前のモデルということで、試乗場所が富士スピードウェイの構内となった。広々とした場所での試乗のため、ついついアクセルを踏み気味となるが、朝の住宅街を走るようなアクセル操作なら、自然とEV走行となるだろう。
そのままアクセルをグイッと踏み込むと、エンジンが始動する。エンジンが回っている状態でもノイズを感じることはないが、若干微振動が伝わってくる。シートやステアリングではあまり感じないのだが、ドアに右ヒジが触っているとその振動を感じる。試乗車が量産型ではないので、いずれ量産型の試乗でこの点は確かめたいと思う。
パワー感は3.5リットルにはかなわないものの、2.5リットルよりも力強さが感じられた。中間加速についてはハイブリッドの利点を生かされ、グイグイ速度を上げる。
ガソリンエンジンモデルには装備されなかったアイドリングストップが、ハイブリッドには装備される。最近の多くのクルマが、燃費を稼ぐためにコーストモードと呼ばれる空走状態を作ることが多いが、クラウンはそうした空走感があまりなく、常にパワートレインとタイヤがつながった状態であるという印象。これは運転するものにとっては安心感につながる。
限られた条件での試乗であったが好印象を与えてくれたクラウンハイブリッド。エンジンを4気筒に変更したデメリットも感じることはなかった。次回はぜひ、複雑なシチュエーションでじっくりと試乗してみたい。
5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。