【プリウスPHV 長期レポート納車編】「PHVこそ本命」に1票を投じた…三浦和也

エコカー EV
【プリウスPHV 長期レポート納車編】「PHVこそ本命」に1票を投じた…三浦和也
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  • スマートフォンアプリ「プリウスPHVオーナーズナビゲーター」で購入する仕様を3D表示して納車までの悶々とする時間を過ごす。取り扱い説明書の内容が、画像つきでインタラクティブに読むことができる。

●値段も見ずに

いきなりの報告だが、『プリウスPHV』をマイカーとして購入した。ご存知のベストセラーカー3代目プリウスをベースに電池をニッケル水素からリチウムイオンに変更したうえで拡大し、200Vまたは100Vコンセントから充電可能にしたプラグインハイブリッドカーがプリウスPHVである。

自分は、レスポンスという自動車ニュースメディアの編集長をしている手前、現在販売されている様々な新車に試乗する機会がある。そんな有利な立場にいるプロがマイカーとして選ぶくらいだから、さぞかし素晴らしいクルマなのだろうと思われるかもしれないが、実は試乗もせず注文してしまった。

要するに初物好き。初代『iPhone』もピンときたのでアメリカから取り寄せた。初代『iPad』は初日にニューヨーク5番街のアップルストアで並んで買った。イノベーションだと感じることに対して一票を投じるクルマ選びである。ホント、値段さえも確認しないうちに決めた。

ということで、読者アンケートでも注目度が高いこのプラグインハイブリッドカーの私用を通じて得られる体験を、夏までのおよそ半年間は長期レポートとして報告しようと思っている。

今回は納車編ということで、なぜPHVなのかという部分についてご紹介したい。

●Change The World, Again.

今回の選択にあたり、まず振り返るのは1997年だ。いまや自動車史の教科書(!?)にも掲載されている世界初の量産型ハイブリッドカー、初代プリウスのデビューの年である。

ご存知のように現行の3代目プリウスは、205万という価格設定もあって2009年にデビューしたとたんにブームに火がつき、トヨタの代名詞になるほどのベストセラーカーに成長した。しかし、すべては1997年に始まっていたのだ。当時プリウスの登場を脅威と感じてキャッチアップを試みた自動車メーカーは世界を見渡してもホンダだけ。10年以上経って欧米のメーカーは、ようやく高級車にハイブリッド機構を装着するのが精一杯な状況だ。

一方のトヨタは169万円の『アクア』にまで2モーターHVを搭載するまでにハイブリッドシステムを進化させている。いま振り返ると1997年を境に世界は変わっていたのである。

よって、プラグインハイブリッドカーを購入した一番の理由は、“Change The World, Again.”。エンジンとモーターという動力のハイブリッドに加えて、ガソリンと電気というエネルギー供給源のハイブリッド化がこの先10年のクルマを変えてゆくという確信である。

残念ながら今回は日本メーカーは先頭を突っ走っているとは言えないが、年度内にはトヨタ以外にもホンダや三菱からもぞくぞくとPHVが登場する。次期プリウスはPHVが主流との声もある。待てば待つほど完成度が上がることは承知だが、商品を買うのではなく、体験を買うという意味では世界が変わる瞬間に立ち会いたいのだ。

●東日本大震災で考えさせられた

2011.3.11。忘れもしない東日本大震災の日、妻は仙台市内にいた。幸いにも津波被害からは遠い内陸だったがライフラインの損傷は甚大だった。数日してまずは電気が復旧し、水道やガスに関しては数週間から1か月ほどかかった。その間に製油所の被害や流通の麻痺からガソリン供給が滞り深刻な事態になったことも記憶に新しい。妻が電話で「車が動かないの! 電気自動車で迎えに来て!!」とSOSを発したことが印象的だった。実際に日産は『リーフ』を被災地に寄付し、役所などがEVによって被災地のモビリティを確保した。一方で、東京~仙台間の往復850kmを無給油で走ることができたのは航続距離1000km近くを期待できるハイブリッドカーであるプリウスだけだったのだ。

このような体験から、ふたつのエネルギー源を持ち、EVとHVの良さを兼ね備えるPHVは災害にも強いクルマだと感じている。

●EV走行は面白い

電気自動車(EV)の運転感覚が好きだ。将来のクルマが、製造コスト、信頼性の面からも機構がシンプルなEVに収斂されてゆくのは必然だと思う。しかし、シンプルな機構のはずのEVがより複雑なPHVの価格を上回っているのが現実だ。

リーフの376万に対してプリウスPHVは320万。装備の差があるので直接比較はできないが、枯れた技術のガソリンエンジンを積んで機構を複雑にするコストは、EV用の高価な電池を大量に積むコストよりも小さくなる。電池に関してブレイクスルーが起こるまではPHVが中継ぎ投手的に活躍する必要をひしひしと感じる次第なのである。

ましてや年間30万台も製造するプリウスのエンジン、モーター、動力分割機構、回生ブレーキ機構を流用することによってコストメリットは甚大になる。乱暴に言えばプリウスPHVは「プリウスをベースに電池をニッケル水素からリチウムイオンに変更して容量を大きくし、そこに充電用のソケットを付けました」で出来上がるのである。それにしては価格差が大きすぎやしないか? それにしては登場が遅すぎやしないか? というような声が聞こえてきそうだ。自分もそう思う。このあたりは長期リポートの中の取材で開発者に問い詰めてゆきたい部分である。

●エネルギー利用について考える

最後に、マイカーとして一緒に暮らさなければわからない部分として、先に述べた「ガソリンと電気というエネルギー供給源のハイブリッド化」の実際があげられる。ハイブリッド車においてはエンジンとモーター動力の最適化は遊星ギアと車載コンピュータのソフトウェアによって行われてきた。しかし、プラグインハイブリッドカーにおける充電と給油はユーザーの手に委ねられている。ここをいかに最適化して、電気代とガソリン代の合計を減らすか、CO2の排出量を減らすか、またはピーク電力をシフトして電力系統に対する負荷を抑えるかなどなど考察すべき点は沢山ある。

トヨタはプリウスPHVを発売するにあたり、充電をイベント化するアイテムをクルマ周辺に用意した。充電器とセットで提供される「H2Vマネージャー」は家庭の電力使用をモニターしながらクルマへの充電をコントロールする機器で、いきなり家のエネルギーとクルマに給電されるエネルギーを視える化する。これが決め手になったと言っていいほどPHV生活を大いに楽しめそうな機器である。いまの最適化といえば、ピークカットをしたりトヨタフレンドというSNSを使ってユーザーに充電を呼びかけたりする程度だが、ここの進化がPHVの可能性を引き出すポイントとして注目している。

●さっそくのリクエスト

納車されてからまだ300km足らずの利用で感じている最大の関心はやはり充電である。我が家の契約アンペア容量は40Aなので、85%の34Aの電流が流れるとH2Vマネージャーはピークカットを行いクルマへの充電は行われない。いまも自分以外は寝静まっているはずだが、充電は開始されない。

精神衛生上、たとえ基本契約料が370円アップしても契約アンペアを50Aに上げたい気分だがピークカットの上限を85%から95%や100%に上げることで避けられる出費だと思うと躊躇してしまう。ピークカット割合の個人設定機能を切に願う所以である。

車両側で言えば、暖房問題があげられる。前席に標準で装備されるシートヒーターは最高だ。すぐにぬくぬくぽかぽかだ。電力もあまり消費しないらしい。一方で後席の子供たちのためにエアコンの暖房をONにすると殆どの場合でエンジンがかかってしまう。

たしかに熱を取るためには電熱ヒーターで電力消費するよりもエンジンを回して発電しつつその熱を暖房に使うほうが燃費に効きそうだ。しかし、PHVを買ったのにEVモードで走りだす以前、車庫からエンジンがかかってしまうのでは毎日が「春よ来い、早く来い」の気分である。

解決のひとつとして後席にもシートヒーターがあって欲しかった。ついでに言えば前席含めてシートベルト連動にして欲しい。常時シートヒータースイッチがONに入っていても着席してシートベルトをかけないとシートは暖かくならないというわけだ。

●いっしょに考察する仲間募集

噂によるとプリウスPHVの販売は、アクアや『86』など話題のクルマの影で苦戦しているらしい。たしかに初代の215万、3代目の205万のような価格インパクトがないため、興味はあれども購入は躊躇している人が多いのもよくわかる。大きなイノベーションはいつも大勢の拍手で迎えられるとは限らないのだ。

ということで、自分と同じようにそれでも購入に踏み切った前のめりなオーナーはぜひ一報して欲しい。長期レポートにおいて、PHVと共に暮らすということをいっしょに考察する仲間がほしいからだ。FacebookやTwitterなどで、連絡を取り合おう。

《三浦和也》

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