【池原照雄の単眼複眼】スズキの燃費逆襲で目が離せない“軽”

エコカー 燃費
ガソリン車トップのJC08モード燃費30.2km/リットルを達成したスズキ・アルトエコ
  • ガソリン車トップのJC08モード燃費30.2km/リットルを達成したスズキ・アルトエコ
  • ダイハツ・ミライース
  • ホンダN BOX(東京モーターショー11)

両雄のしのぎ合いが軽の存在意義を高める

さすが!こうでなくちゃ、と思った。スズキが30.2km/リットル(JC08モード)という国内ガソリン車で最高燃費を実現した『アルトエコ』を12月13日に発売した。未踏の30km/リットルを達成したダイハツ工業の『ミライース』を若干だが上回り、2005年度まで33年に渡って軽自動車のトップに君臨した意地を見せた。

0.2km/リットルの差は実走行燃費としては誤差の範囲だろう。だが、両雄がメンツをかけて開発にしのぎを削ることは、日本固有のミニカーであり、生活の足として多くの国民に欠かせない軽の存在意義を一段と高める。

アルトの燃費訴求版として開発されたアルトエコも、ミライースも、ほぼ同じアプローチで極めて高い燃費性能を引き出した。軽量化ではミライースがベース車より約60kg軽い730kgとした。アルトは約20kgの軽量化だが、もともと軽いクルマだったので改良後は740kgと、ミライースとほぼ同じになった。

両社は空力性能の改善や、エンジンおよびCVT(無段変速機)といったパワートレーンのフリクション低減なども同様に取り組んでいる。アルトエコは、今年1月に16年ぶりに刷新し、『MRワゴン』に搭載した新鋭エンジンにさらに改良を加えた。

◆早めにエンジン停止するアイドルストップ

アイドリングストップ装置も、性能を高めるための着眼点は同じで、いずれも車両が止まる前にエンジンを停止させる方式を採用した。ミライースはおよそ時速7kmで停止するが、アルトエコは、早めに同9kmで停止するようにしている。

アルトエコはタイミングが早まる分、燃費への貢献度は高くなるが、実際のドライブではエンジンが停止し、車両がまだ動いている状態で再始動が必要となる場面もある。

このため、車両が惰性で動いている時でもブレーキから足を離せば、迅速に再起動する新機構のスターターモーターを採用している。これにより「車両停止直前に信号が赤から青に変わる場面などでも、違和感なしに運転できるようにした」(スズキ広報)という。

◆チャレンジャーの姿勢を露わに

価格バリエーションは、アルトエコが89万5000円と99万5000円の2タイプのみだが、いずれもミライース(2WD車では4タイプ)の最量販グレードおよびその下のグレードと同一に設定している。今や2位メーカーとなっただけに「挑戦」の意識を露わにした格好だ。

スズキ広報によると、アルトエコの開発期間は2年という。ダイハツが09年秋の東京モーターショーに、ミライースの原型である「イース」を参考出品した当時に、対抗策として着手したという経緯がうかがえる。

イースは2年前には10・15モードの測定で30km/リットルの燃費を目標値として打ち出していた。ところが、ダイハツは、「翌10年春にはJC08で30km/リットルと目標を高めて開発を進めることに変更した」(ミライースを開発した上田亨エグゼクティブチーフエンジニア)のだった。

ライバルの動向を意識しつつ、スズキも同様の軌道修正をしながら追随して行ったことになる。今後も両雄のツバ競り合い、さらに1960年代から70年代にかけての勇者であるホンダの商品テコ入れ策なども加わり、軽から眼が離せない展開となる。

《池原照雄》

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