「そんなものはこのクルマにはいらないんです」。男性視線の価値観をふりかざす役員を前に女子チームが言い放ったとか。よく言った。
そもそもいままで「女性の意見を聞きました」とか言って、聞くだけ聞いてオヤジたちに不採用された意見がどれだけあったことか。このクルマに関しては、女子のきっぱりな態度により、ことインテリアに関してはすばらしく使いやすいものに仕上がっている。
女子は常にバッグ携帯だからバッグ置き場が欲しかったり、やっぱりシートの色はかわいく手触りよくあって欲しかったり、クルマのなかにいるだけでキレイになりたかったり、使わない車検証がグローブボックスの一等地にいる必要はなかったり。観光地にしろレストランにしろ、女性客誘致で必死に対応しているのに、自動車メーカーはどうも決定権を握るオヤジの腰が重いんだよなあと思っていたので嬉しい限りである。
もっとも軽自動車にも対抗できる価格帯という宿命があるので突っ込みどころはある。一番気になるのは、燃費の数字を出すためにギアが高めに設定されているから、低速走行中に耳をすますとカリカリカリと違和感のあるエンジン音が耳に届く。それにともない、なんとなくこもったような音も。オヤジ連中は「燃費かせいでいるね!」と好意的かもしれないけれど、繊細な女子には「びみょー」な音。ついでに、お金をかけられないぶん、サスペンションのカツカツ感も否めません。
え? 評価、厳しいですか? だってここで褒めてもしょうがないし。っていうか、100万円そこそこで、ここまでやれば立派でしょ、上等でしょ。いくらワガママなアラフィーだって、500万円のクルマと同じ乗り心地にしろとは言わないですから、そのへんは正直な意見をっていうことで。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★
フットワーク:★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。