業績回復への道を、唯一、走り始めたようにみえるホンダ(もっとも、その多くは販管費&研究費の削減なので、メディア&クルマ好きとしてはさらなる復活を望みたいが)。海外では『フィット』などが好調で、日本では『ステップワゴン』が貢献しているようだ。
現行モデルは、やっぱりな原点回帰。先代でみせた“広くて背の低くみえるミニバン”路線をあっさりと諦めて、初代に連なる“背が高くて細くて広い食パン型”に戻った。旧型はそれなりに街ではよく見かけるけれど、商業的には失敗だったということか。いや、ユーザーが“どうせならもっと広く”を望んだか。人間の身長はそう変わらないし、上の容積ばかり増えたっていいことはないと思うのだが。
運転する立場としては旧型の方が気持ちよかったが、父さんにしてみれば家族さえ少しでも気持ちよく過ごせるなら、そんなちょっとした楽しみくらい犠牲にしてもいいや、ということなのだろう。ごくフツウに“運転手”になれる乗り味の仕上がりだ。ただしスポーツ系のスパーダはけっこうハード。
『オデッセイ』、『ストリーム』、そしてステップワゴン……。ホンダはミニバンで常に新しい分野を開拓してきた。その精神にホンダを感じる。もっとスポーツカーを作れとは、もう言わない。いろんな分野で“らしさ”を発揮してくれればいいと思う。ビジネスが上向いて研究開発がまた盛んになったとき、どんな新しいミニバンを見せてくれるのか。それに期待したい。そこまでは、古くさいが受けるミニバンでよしとしておこう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。