ケータイナビと車載ナビ、それぞれの特徴
三浦:ゼンリンの地図を採用されているカーナビ/PNDメーカーはいくつもありますが、これらのナビとは導き出されるルートには差はあるのでしょうか。
上野:どの道に優先度を置くか等のネットワークデータについての重み付けは各メーカーで微妙に異なっています。ですから同じ地図を使っているからといって、同じルートを引くとは限りません。
三浦:ケータイナビ、車載のフルナビの違いは大きいのでしょうか。
上野:車載のフルナビに対してケータイが弱いのは、現状では通信圏内でないと使えないこと、それと自車位置の取得をGPSのみに頼っていますので精度の面で見劣りがするということです。GPSのみですと測位が後追いになるので道を間違ったことを認識するのが遅れ、リルートするのに若干のタイムラグが生じます。今後、ケータイにも加速度センサーや電子コンパスが搭載されていくと思いますが、自車位置の精度の向上はケータイナビの大きな課題ですね。
三浦:ケータイナビのアドバンテージは通信機能を備えている点ですが。
上野:通信対応のカーナビやPNDも登場しつつありますが、コストや契約の面で標準装着するにはまだハードルは高いというのが現状です。その点、通信一体型のケータイでできることは大きい。ケータイに何GBものストレージを置くのは現状では考えられませんから、逆にこの制限を活かして通信で検索データやルートも配信させる仕組みをもつことで、データの更新が容易です。
◆利用率50%を目指したい
三浦:では今後、ケータイナビはどう進化していくとお考えですか。
上野:ケータイのナビサービスは非常に注目されている分野ではありますが、まだまだ利用率は低いと考えています。各キャリアのナビゲーション系サービスの有料会員はiモードなどのWeb利用者数の10%もありません。ケータイカーナビについては、既存のカーナビと同じようなUIや検索ロジックを取り入れたりして、“カーナビに追いつけ追い越せ”でやってきましたが、今後はケータイならではの発想や機能を持ち込まないと、大幅な伸びは望めないのではないでしょうか。われわれとしてはケータイを使っている人の半分はナビゲーションのサービスを利用して欲しいと考えています。
三浦:では、そのケータイユーザーの半数が使うようなケータイナビの理想型とはどのようなものでしょうか。
上野:(進行方向を矢印だけで表示する)ターン・バイ・ターンが究極のナビですね。 今のケータイナビも含めて、ナビゲーションというと必ず地図が表示されますが、ビジュアル的に見栄えがするというのと、一種の“逃げ”の発想があると思います。
三浦:“逃げ”とはどういう意味でしょう。
上野:“自車位置やルートが間違えているかもしれないので、地図で確認して下さい”という意味の“逃げ”です。また地図がベースにあるがゆえに、初心者にはとっつきにくさも感じさせてしまっているのではないでしょうか。本当は地図に頼らないナビゲーションのカタチにもっていかないないと、全ユーザーの半分はとれない。
三浦:地図メーカーの開発者なのにずいぶん過激な(笑)。
上野:もちろん、地図やそれに基づいたネットワークデータは必要ですよ(笑)。ただ、地図が前面に出るのではなく、あくまでも黒子としての存在で、ナビゲーションのUIを研ぎ澄ませるべきでは、という意見です。
三浦:まだまだケータイナビ市場は伸びていくという認識ですか。
上野:伸ばして行かなければ、ということですね。当社も含めて各社で競り合って市場を活性化していければと思っています。