09年の夏商戦、アルパインはブランニューの新型ナビシステム『VIE-X08』を投入した。現行モデルから機能を大幅にアップさせた上位機種としてラインナップ展開をしている。実際、店頭でも出だしの動きは好調とのこと。アルパイン入魂の新型である『VIE-X08』はどのようにして開発されたのか、担当者に聞く。インタビューに答えてくれたのは、アルパイン マーケティング ソリューション推進部 MMS推進グループ リーダー 有福秀之氏だ。
◆ホワイトLEDバックライトとカラーフィルタの改良で明るく・コントラスト豊かな映像表現
----:まず今回の新製品の特徴について、お聞かせください。
有福氏:いろいろありますが、店頭などでわかりやすいという点で、すでにお客様から評価をいただけているのは「画質の良さ」ではないでしょうか。技術陣も、とくにキレイな肌色にこだわって開発を行いました。画質については、輝度を上げたりすると見た目なきれいに見えますが、肌色などの色見を忠実に再現するのは難しかったりします。
----:画質の良さについて技術的な工夫などはありますか。
有福氏:はい。液晶パネルにWVGAを採用している点がひとつあります。やはり画素数の多さでQVGAなどよりは確実に高画質になります。ただ、画素数だけでは色味の再現には不十分で、X08シリーズでは、ホワイトLEDバックライトと新規のカラーフィルタを採用しています。
バックライトは、通常はCCFLと呼ばれる蛍光管のようなライトを使うのですが、X08ではホワイトLEDを使っています。これによって、輝度が従来の400カンデラから500カンデラへと上がり、輝度が向上したことでカラーフィルタに濃い色のものが使えるようになり、より鮮明な発色や自然な色見の再現が可能になりました。
----:画質にこだわった理由というか、その戦略のポイントはなんでしょうか。
有福氏:今後、さらに広がるとみている地デジ放送などの高画質コンテンツへの対応が重要だと考えています。すでに家庭用テレビにはデジタルが浸透しつつありますので、カーナビ、カーエンタテインメントもほどなくして12セグの地デジが主流になっていくのではないでしょうか。その中でミニバンファミリー の後席エンタテインメントという、よりキレイで楽しくカーライフを送れるものを求めるのが自然な流れだと思います。
地デジ対応を意識したという点では、液晶の反応速度も高速なものにしています。カー液晶の通常スペックは15ms程度が多いのですが、X08では、6msという動きの激しい動画再生に強い液晶を使っています。また、操作性においても、家庭用テレビのチャネル表示画面を同じようにして、使いやすさにこだわっています。
◆アルパイン歴代AVN製品の中で最高の音質を実現
----:オーディオ機能の強化点についてはいかがでしょうか。
有福氏:アルパインはもともとカーオーディオのメーカーとして、カセットテープの時代から、その時代に応じたソースやメディアについて最高の音質にこだわってきました。カーナビがAVと融合してAVNがヘッドユニットのメインになってきていますが、今回開発するにあたり、サウンドチューニングチームという開発チームを結成し、歴代AVN製品の中でも最高の音質を実現しようと取り組んできました。
X08は、カーナビ、地デジチューナー、DVDやCDの動画・音楽再生など必要な機能をすべて2DINの本体にまとめてあります。12セグのチューナーや iPodの接続に外付けユニットが必要になることはありません。すべて一体化することで、ユニットを接続するケーブルなどが不要になるので、データの転送ロスなどが低減され音質によい影響を与えることができます。しかし、せまい筐体にすべてを実装すると、モジュールごとのシールドや電源供給、発熱対策などさまざまな対策も必要になってきます。そのために、これまでのカーAV機器開発で培ってきたノウハウを投入しています。
----:アルパインはiPodにもいち早く対応した車載メーカーでした。今回の製品ではどうですか。
有福氏:音質と操作性という点で、USBによるデジタルダイレクト接続を採用しました。先ほど外付けユニットとの接続もアナログケーブルよりも、筐体内のモジュールどうしをデジタルで直接つないだほうが音質がよいと述べましたが、iPodとの接続もデジタルにすることで、音質の劣化がないというメリットのほか、本体の操作性もよくなります。例えば、たくさんの曲リストをスクロールさせるときなど、従来機種などではiPodとのやりとりが追い付かないことがありました。USBによるデジタル接続にしたことで、iPod本体画面の表示のように、曲のリストが操作に追いつかないということなくスムーズにスクロールさせることができます。
◆車種別の音響セッティングで最適の音響空間を
----:音響セッティングについて、かなり詳細な設定が可能だと聞きましたが。
有福氏:ミニバンなどは車内が広く、運転ポジションが高いのですが、相対的にドアスピーカーが下の方に位置しているため、音がこもったりします。いい音質をつきつめると、リスニング環境ごとのセッティングも無視できなくなるのですが、家と違って車の場合は、スピーカーの取付位置が決まってしまうので車種ごとに設定するのが理想となります。X08プレミアムでは、タイムコレクション、クロスオーバー、パラメトリックEQといった音響設定について、フロント・リアスピーカーの構成、サブウーハーの有無、センタースピーカーの有無など細かい設定項目を、車種ごとで簡単に設定できる機能があります。
----:車種名の指定だとかなり大量のデータが必要ですが、具体的にはどのように設定するのですか。
有福氏:車両調査を実施し、サイトへ情報公開している車種は300種類以上あります。アルパインのWebサイトにいっていただいて、ユーザー登録をしていただくと、ユーザーズルーム(マイページ)が作成されます。そこで、サイトに登録された自分の車種を指定して、細かい設定項目のデータを入手します。国内のミニバンはほとんどカバーされていますし、最新の車では新型のプリウスやレガシィのデータも公開されています。