ウィジェットで便利な情報をさりげなく画面上に表示
----:地図の隅にガソリン価格や周辺スポットがアイコンで表示されるウィジェット機能はユニークですね。しばらく走ると変化がありますし、通信しているんだな、という感覚があります。さりげなくオンラインコンテンツを組み入れてきたな、という印象です。
中根:いかに自然なカタチでリアルタイムコンテンツを提供するかは、通信機能を搭載しているナビの課題です。T20では、スマートループがONになっていればウィジェットを自動的に更新します。ガススタ価格情報や周辺おすすめ情報、周辺登録スポットなど7種類から最大3種類のウィジェットを選んで表示でき、ウィジェットをワンタッチすれば、詳細の情報を確認できます。
----:通信によって得られるメリットをユーザーにどのように訴求するお考えでしょうか。
中根。メニューを開き、通信コンテンツを選んで…という流れでは利用していただけるものにはならないでしょう。かといって地図を見ている途中でいきなり画面が切り替わってオンラインコンテンツが飛び込んでくるというのもお客様に不愉快な思いをさせてしまいます。
----:そこで出てきた発想がT20で新たに採用された「ウィジェット」ということでしょうか。
中根:オンラインのコンテンツがせっかくあるのだから、階層の奥にしまわずに、地図の隅に小さく出して、お客様がすぐに使えるようにすべきではないか、というわけです。エアーナビにとってのデスクトップは地図です。コンテンツはウィジェットで見せて、より詳細な情報が欲しければナビポータルから利用していただく、というフローにしています。特にガススタ価格情報は、地域によってガソリン相場がダイナミックに変化するので、移動していて面白いですよ。ゆくゆくはオンラインコンテンツとナビの地図をシームレスに使いこなせるようにしたいですね。
----:今回のウィジェット導入は、“オンラインコンテンツとナビの融合”を目指すうえでの第1歩ということですね。
◆新エアーナビの登場でスマートループのサービスが磨かれていく
----:中根さんは2002年に登場した初代エアーナビ(AVIC-T1)の開発にも参加されていたのですか。
中根:ソフトウェア担当として携わっていました。T1はいわばシンクライアント端末。地図やPOIだけでなく、ルート経路計算も全てサーバでおこない、端末側に送りました。
----:その発想は今でも十分画期的です。初代エアーナビによって、カーナビユーザーの間で“時代を先取りするカロッツェリア”というイメージが構築されたのは間違いありません。そのエアーナビの後継を、あえてPNDと競合するジャンルで出した理由はどこにあるのでしょうか。
中根:通常のFIXタイプのナビだけで商売をやって、それがある程度成功しているといっても、マーケットそのものが成熟期に入っていますから先細りになる危険性を大いにはらんでいます。カロッツェリアとしては、将来に備えて成長分野にもドメインを拡張していかなければ、ということです。PNDは数が出るのでマーケットの裾野が広がり、スマートループやナビポータルといったサービスが磨かれていくという利点もあります。
そこで、新エアーナビでは本体内に地図を持たせてローカル側でナビ機能を備え、コンテンツについてはナビポータルという協業の会社を立ち上げて、インフラを活用したサービスをやっていこう、となりました。
----:T10はポータブルタイプながらVGA液晶やジャイロセンサー、加速度センサーを搭載するだけでなく、通信にも対応するなど、いち早く高機能化ニーズに応えた画期的なモデルでした。しかも本体価格を抑えて通信コンテンツの提供によってユーザーに継続的なサービスをすると同時に、ランニングでの売上を構築するという非常に高度なマーケティングをしている。PNDという安売り合戦に陥りがちなマーケットで、このような手法をとったことは画期的だと思います。