【神尾寿のアンプラグド特別編】「PND+テレマティクス」、トレンドを的確に掴んだ新たなAir Navi

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2002年に発売された「Air Navi (エアーナビ)」を覚えているだろうか。

コンパクトなカーナビ本体にKDDI製の通信モジュールを内蔵し、サーバー上で地図の提供やルート検索を行う。すべての機能をサーバー側が“サービス”として提供するので、常に最新の地図やコンテンツが利用できる。まるでGoogleの世界観を先取りしたかのような、斬新なカーナビだった。

しかし、初代Air Naviの不幸は、すべてにおいて「早すぎた」ことだ。

当時の携帯電話インフラは、サーバー型で地図・ナビゲーションサービスを提供するにはコストとパフォーマンスの両面で不十分であり、端末となるAir Navi本体を構成するメモリーや通信モジュールの価格もこなれていなかった。さらにカーナビ市場全体が、スタンドアローンでの機能の多さや高性能を尊ぶ「AVN全盛期」にあった。高性能なサーバーがサービスとして機能を提供するという、いわゆる「Google時代」の夜明け前であり、Air Naviの先進性は市場に評価されることなく終わってしまった。

あれから6年。パイオニアが、再び「Air Navi (エアーナビ AVIC-T10)」を投入した。しかし、その姿は初代とはいささか異なる。

サーバーが地図とナビゲーションエンジンすべてを提供するという先代のコンセプトからは一歩後退し、端末側でカーナビ機能はすべて用意。まずはスタンドアローンのPNDとして商品を成立させた上で、テレマティクスを用いた“ネット連携”の革新的な部分は、プローブ情報やリアルタイムコンテンツの充実に位置づけた。さらに地図更新は有料とし、PCとのUSBケーブル接続で書き換える方式に変更。携帯電話キャリアの通信インフラを使う容量を減らすことで、月額1050円から最大2079円の「二段階定額」を実現。先代で普及のハードルになったランニングコストが最小限になるように腐心されている。

新生Air Naviは、先代のように“理想を追い求めた”通信型カーナビではない。しかし、市場のトレンドをしっかりと押さえ、その上で先代が挑戦した「ネット連携への取り組み」を上手にブレンドしている。どうすればユーザーに受け入れられるのか。先代の失敗から学び、現実的なアプローチを取る“したたかな2代目”と言える。


◆焦点が定まった「テレマティクス」部分

もう少し具体的に見てみよう。

先述のとおり、今回のAir Naviは製品単体に通信モジュールを内蔵しておらず、テレマティクスの利用は別途申し込みが必要になる。

Air Navi専用のテレマティクスサービスに加入すると(ナビポータルおよびパイオニアモバイルネットワークスと契約)、無料でUSB通信モジュールが送られてくるので、それをAir Navi本体に接続すれば、テレマティクスサービスが利用可能になる。なお、今回のAir Naviはソフトバンクモバイルの3G携帯電話インフラを使い(HSDPAに対応)、同社製のSIMカードが発行されるが、他の機器では一切利用できないように「Air Navi専用」のロックがかけられている。

テレマティクスは「ドライブ支援」と「PC/ケータイ連携」に軸足が置かれており、本田技研工業のインターナビのようにサービスの焦点が定まっていてわかりやすい。それらの中でも、「オンデマンドVICS」と「スマートループ渋滞情報(プローブ情報)」、ガススタ価格情報などの「リアルタイムコンテンツサービス」は、これまで市販カーナビの弱点だった“リアルタイム情報の弱さ”を補うものになるだろう。

一方、PC/ケータイとの連携は、専用ポータルサイトである「ナビポータル」によって行う。ここでは事前のルート設定や地点データの共有などが可能になるほか、Yahoo! Japanと連携して「Yahoo! グルメ」などの口コミ情報も、Air Navi本体やナビポータルサイト上で見られる。また、利用するごとにユーザーの嗜好をサーバーが学習する「傾向分析」の機能が設けられているので、使い込むほどに的確な情報がリコメンドされるようになる。ナビポータルのサービスは、サーバーを軸にしたパーソナライズや複数メディアの連携、さらにはCGMなど、Web 2.0時代のトレンドをしっかりと取り込んでいるようだ。


◆カーナビの基本機能も“PND水準”を超えている

Air Naviの特長であり、大きな競争優位性は「テレマティクス」の部分にあるが、単体のPNDとして見ても同機は秀逸だ。はっきり言って、PNDの水準をはるかに超えている。

まず、日本市場で重視される液晶モニターは、5.8インチのワイドVGAを搭載。海外では“コンパクトさ”の犠牲になりがちな画面サイズや性能で妥協をしなかった。Air Naviでは地図やリアルタイムコンテンツの表示量が多いが、それをしっかりと受け止められる画面サイズと解像度になっている。

さらにパイオニアらしいのが、位置精度へのこだわりだ。海外のPNDはGPS単体利用で測位する方式が多いが、Air Naviではジャイロセンサーや加速度センサーも搭載。GPS衛星からの信号が届かないトンネルでもしっかりと位置検出を行う。また今年9月に発売されるオプションの電源キットを使うと、車速パルスの取得もできるので、自車位置精度の面で一般的なカーナビに負けることはない。

付加価値的な機能としては、「Bluetoothハンズフリー」、「ワンセグ」、「SDメモリーカードによるミュージックプレーヤー」などを備える。高機能化が進んだ現在のカーナビに比べれば付加価値は少ないものの、PNDとして見れば十分以上の機能である。特に標準でBluetoothに対応しているのは高く評価できる。

Air Naviは、このようにPNDとは思えないほど高い性能と十分な機能を持っている。日本市場の特性やニーズがきちんと取り込まれているので、“PNDだから”と割り切らなければならないところがない。それでいて価格は、PNDのプライスゾーンに入る「実売で6〜7万円台程度を予想している」(パイオニア)という。ライバルのPNDはもちろん、一般的なカーナビも脅かしかねない価格競争力である。


◆PND×テレマティクスは、日本メーカーのチャンス

シンプルなPNDと、それによるネット(テレマティクス)との連携と融合。

「PND×テレマティクス」とも呼ぶべきこの組み合わせは、世界的なPND市場の隆盛で後れを取る日本メーカーにとって、実は大きなチャンスである。なぜなら、日本のモバイル通信インフラは世界で最も先進的で、急速に通信費も安くなっているからだ。

3.9Gと呼ばれる次世代通信技術「LTE(スーパー3G)」や「モバイルWiMAX」が最初に市場化・本格展開されるのは日本である。また、'90年代と異なり、ドコモを筆頭とする各キャリアは“国際標準規格への準拠”を非常に重要視している。これから進展する日本のモバイル通信環境の進化は、そのままグローバル市場の未来になっている。

これらモバイル通信インフラの充実を背景に、日本メーカーがテレマティクスを前提にした“ネット端末としてのPND”の分野で先行できれば、それは海外のPNDメーカーに対抗しうるだけの武器になり得る。中長期的にみれば、クルマは必ず様々なネットサービスに接続するようになり、その端末としてシンプルかつ低価格なPND型の情報機器は重要になる。さらにPND向けのテレマティクスサービス市場にも、海外展開も含めて大きな可能性があるだろう。

Air Naviが歩もうとしている道。そこにこそ新時代のカーナビの姿があると筆者は考える。新生Air Naviの今後を、期待をもって見守りたい。
《神尾寿》

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